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【大相撲】

稀勢 43場所ぶり日本人賜杯グイッ

2013年5月24日 紙面から

◇夏場所<12日目>

稀勢の里(右)が寄り切りで日馬富士を破り全勝を守る(市川和宏撮影)=両国国技館で

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(23日・両国国技館)

 大関稀勢の里(26)=鳴戸=が横綱日馬富士を一方的に寄り切り、12戦全勝とした。25度目の優勝を狙う横綱白鵬(28)=宮城野=も鶴竜を寄り切り全勝。賜杯争いは勝ちっ放しの2人と2敗に後退した鶴竜の3人に絞られた。稀勢の里、白鵬の2人は14日目に直接対決することが決定的。稀勢の里が優勝すれば、日本出身力士としては2006年初場所の栃東(現玉ノ井親方)以来7年ぶり。全勝で優勝すれば、日本人大関としては94年九州場所の貴乃花(現貴乃花親方)以来、19年ぶりの快挙となる。

 相撲界の新しい扉を開ける1勝になるかもしれない。稀勢の里がこれまで何度も苦汁を飲まされてきた日馬富士を、わずか4秒ほどで圧倒。無傷の12連勝を成し遂げた。その瞬間、日本出身力士の優勝を待ちわびるファンの投じた座布団が飛び交った。いつまでも座布団が舞う花道を、悠然と引き揚げた。

 難敵を圧倒した心境を問われると「うーん…、どうですかね」と表情を崩さずにポツリ。少し間を置くと、「(立ち合いから)思い切っていこう、と。結果が、ああいう形(もろ差し)になって良かった」と静かにうなずいた。

 稀勢の里の得意は左四つ。左でおっつけながら右上手を狙うのがいつものパターン。この日は右足から踏み込み、素早く右を差してから『必殺の左』をねじ込んだ。本来スピードなら一枚上の日馬富士が「立ち合い負けしてしまった」と意表を突かれる俊敏さだった。大きな山を越え、目指すは悲願の初優勝。日本出身力士のVは2006年初場所の栃東(現玉ノ井親方)以来43場所ぶり。1996年秋場所の貴乃花(現親方)から17年遠ざかっている、日本人全勝Vの期待も膨らんできた。

 残り3日。心身ともに疲れがピークに達しようとする中、心強い援軍が大関の元にやってきた。信頼を置くトレーナーが名古屋から訪問し、千秋楽までサポートする。この日の取組後も約1時間半、じっくりと体をほぐしてもらった。

 「今まで通りじゃ勝てない」。場所前、こう決意を語った稀勢の里。殻を打ち破るために出稽古を解禁し、立ち合いでの腕の角度を修正。さらに大好きなアメリカンフットボールをイメージした左右の軽いフットワークの準備運動を採り入れた。その一つ一つが実を結び始め、緊張状態になると目をパチパチさせる癖もなくなってきた。

 「まだまだ、ここからじゃないですか。まあ、一日一日、一生懸命やるだけです」

 2年前の暮れに他界した先代(元横綱隆の里)は現役時代、マスコミに対してあまり口を開かないことで知られ、稀勢の里も「寡黙にして闘志を内に秘めろ」の教えを守り、多くは語らない。予想される14日目の横綱白鵬との全勝決戦へ向け、短い言葉に強い闘志を込めた。 (竹尾和久)

 

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