現実主義のザッケローニ監督は「最高の状態で結果を求めていく」と言ったが、その表情からはチームへの過度の信頼は消えていた。
重度の故障を抱えていた本田、長友が復帰した。ただ、長友は長期離脱から戻ったばかりで、「豪州戦には間に合う」と判断した本田に至ってはいまだ戦列から離れている。加えて、本田と岡崎、酒井高は6月1日に国内カップ戦決勝を控えており、再発を含めたケガのリスクとコンディションの不透明さが付きまとう。だからこそ、信用、期待はするけど、頼り切ったりはしない−。
盤石の布陣を描きつつ、通例より3人増の26人のメンバーを呼び寄せたが、そのうち長友のケアを考え、サイドバックは異例の計5人態勢で、本田不調時に備えて東を補充した。さらに、コンフェデ杯(6月15日開幕)までのメンバーを一度に選出する当初の方針を、オーストラリア戦後に3人を振るい落とす「2段階選考」に転換する念の入れようだ。もっとも、大前提として強調するのは緩んだ空気の一掃にほかならない。
歓喜を望むファンの思いが膨れ上がり、充満するのは理解している。だが、チーム内に少しでも楽観した空気が流れれば…。ザック監督は日本協会の公式サイトの「手記」でこうつづっている。
「選手やスタッフの頭の中に緩んだ空気が混入することは最小単位でも許さない。ヨルダン戦をあの内容で勝てなかったこと、チャンスをものにできなかったこと、そして、この時点でW杯出場が決まっていないことに私がどれだけ怒っているかを伝えるつもり」
最終予選の開幕ダッシュを成功させた昨年6月は「最高の準備ができた」と自賛した。ちょうど1年後。W杯出場へのフィナーレも最高の準備で迎える。
(松岡祐司)
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