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セルフプロデュースとは自分をキャラクター化して自分の創作物とプロモーションを結ぶ存在にすること

佐藤：でも、世の中には分離しているものがたくさんあります。

坂上：二分法で物事を考えるのって、実は一番簡単なんですよ。「これはＡというジャンルで、それと異なるところにＢというジャンルがある」っていう語り方は誰にでもできる。けど、本当に大事なことは分離してしまう前に、境界面について思考することなんです。たとえば、創作行為とその宣伝行為というのも、単純に別物とする前にどうにか上手く繋ぐことを考えないといけない。宣伝そのものがコンテンツになるようなやり方って割とありますよ。たとえばノベルゲームのブランドの多くは毎年エイプリルフールに嘘の広告を作ったりしてますが、それはプロモーションとコンテンツを同化させるやり方です。ただ、小説の場合、今大事なのは作品名と作家の名前を結びつけることなんじゃないかなと感じています。ライトノベルを例に出すと分かりやすいと思うんですが、相当ヒットした作品でも、作者の名前と結びつかないまま回っていく状況はかなり多い。そうすると、結局は作家がある程度自分をキャラクター化してセルフプロデュースしていくしかなくなるんじゃないかと思います。

佐藤：自分自身をキャラクター化するうえで、ネットからの発信は欠かせませんが、ブログやSNSの中でもツイッターというのはちょうど良いですね。

坂上：僕はツイッターが大好きで、そこではキャラクター的な発言をすることもあるけど、通常の人格と大きな誤差はないと思ってます。少なくとも、僕自身がズレをあまり感じていないから、頑張ってキャラを作ろうとか思わないで、自然にネットの外側とツイッターとを行き来できる。キャラクターっていうのは必ずしも仮想人格やアバターを作るってことじゃなくて、普段何を読んで何を考えているのかが読者に伝わるように、自分に付けられるタグの方向性を調節する程度の話だと思っています。もちろん、そういったやり方をみっともないと笑う人もたくさんいると思うけど、作品の読まれ方や商品としての流通にも変化が出ている状況がある以上、みっともなさを引き受けながら新しい動き方を見せていく気概は必要なはずです。

佐藤：今日は色々な話が出てきたかなと思います。今後はどういった活動をしていきたいですか？

坂上：小説、批評、ミニコミ誌の編集という３つの軸はこれからも保っていきたいです。言葉に関わるという共通点はあるけれど、この３つは割と相反するところを含んでいるので、同時にこなしていると単独では気付けなかったものが見えてくる。あとは今回のように他ジャンルの人とリンクしながら、刺激的なコンテンツを提供していきたいですね。そのための説得力を維持するためにも、やっぱり『惜日のアリス』にはある程度売れてほしい。一定数の読者に楽しんでもらい、やっていることの意義を分かってもらうまでが作品だと思うので。そういった自由を確保するためにも、気を抜かずに頑張っていきたいと思ってます。

佐藤：ありがとうございました。

プロフィール

坂上秋成

　1984年生。作家、文芸批評家、ミニコミ誌『BLACK PAST』、『ビジュアルノベルの星霜圏』責任編集。2013年4月11日に小説『惜日のアリス』を刊行。『ユリイカ』、『cakes』、『PLANETS』、『4Gamer』、『週刊読書人』などに批評を寄稿。
https://twitter.com/ssakagami

佐藤純一（ fhána / FLEET ）

　音楽家 / NETOKARU副編集長。1980年生まれ。東京造形大学美術学部研究生修了。ブロードバンド到来以前からインターネットにて楽曲を発表し、2006年メジャーデビュー。近年ではアルバム『TRANSIT』(ポニーキャニオン)をリリースした他、ボーカロイド楽曲も公開するなど発表の場にとらわれない独自の活動を続けている。東日本大震災直後からしばらく、ジャーナリストの津田大介氏のアシスタントとして活動。その後、インターネット3世代によるユニット、fhána（ファナ）を結成。初アルバム『New World Line』は、多田葵、名嘉真祈子、towana、ボーカロイドのIAといった多彩な歌手が参加した。また、DECO*27、さよならポニーテール、ChouCho、相沢舞、TVアニメ「ロボティクス・ノーツ」などに楽曲やリミックスを提供している。
http://twitter.com/jsato_FLEET

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