フランス:雇用法案可決、解雇規制を一部緩和 政権、現実路線に
毎日新聞 2013年05月16日 東京朝刊
【パリ宮川裕章】フランス上院(348議席)は14日、企業の解雇や配置転換、減給への規制を一部緩和する雇用改革法案を最終可決した。仏経済低迷の構造的要因とされる労働市場の流動性不足と高い労働コストの改善に着手する内容で、オランド社会党政権は労働者の権利保護一辺倒ではない現実路線を明確にした。一方で非正規雇用の労働時間の下限を保障するなど労働者側にも一定程度配慮したが、左派の一部からは反発が出ている。
法案は下院を先月通過。上院では与党の社会党(128議席)と中道派議員の大半が賛成し、「左派戦線」など左派の一部が反対に回った。最大野党の右派・国民運動連合(131議席)の大半は棄権し、169対33の賛成多数で可決した。
法案では、従業員の3割以上が加入する労働組合の合意がある場合、企業は強制的に従業員を配置転換できるとした。経営状況が厳しいと認定された企業は、従業員の半数以上が加入する労組の合意で減給や労働時間の短縮ができる。いずれも、処分を拒否した従業員は解雇対象となる。
フランスは失業率が10%を超えるなど雇用状況が悪化しており、従業員を解雇しにくい雇用制度が新規雇用を妨げていることや、ドイツより割高な人件費が経済不振の原因に挙げられている。
改革法を巡っては、非正規雇用者の労働時間に週24時間の下限を設けたほか、一定規模以上の企業の従業員は、別の企業に転職しても復職が保障される制度なども導入したが、労働者の一部から強い反発が出ていた。