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海外隠し資産 追徴課税相次ぐ
5月23日 19時38分

海外隠し資産 追徴課税相次ぐ
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銀行の顧客の秘密を守ることで知られるスイスや、カリブ海のケイマン諸島などいわゆるタックスヘイブンに隠された日本人の資産を国税庁が突き止め、追徴課税するケースが相次いでいることが、NHKの取材で分かりました。

NHKが国税庁に情報公開請求して入手した資料を分析したところ、相続税などの調査で国税庁が海外の隠し資産などを把握したケースは、おととし6月までの1年間に631件あり、このうち395件で追徴課税が行われていました。
この中には、スイスや、カリブ海のケイマン諸島、バミューダなど、税負担が少ないタックスヘイブンと呼ばれる国や地域の資産も含まれ、追徴課税された件数は59件と全体の15%近くに上りました。
中には、ケイマン諸島の金融機関に預けていた投資信託を相続したのに申告せず、国内の遺産と合わせて1億円余りの申告漏れを指摘されたケースもあったということです。
タックスヘイブンは銀行の顧客の秘密を守ることで知られ、国税庁が、富裕層専門の銀行、「プライベートバンク」や現地の会社名義で開いた口座の情報などを得るのは難しいとみられてきました。
しかし最近ではタックスヘイブンが脱税やマネーロンダリングの温床になっているという先進各国からの批判が高まり、各国と条約を結んでその国の税務当局などから情報の提供を求められれば、応じるケースが増えているということです。
国税庁は、タックスヘイブンを取り巻く国際環境が変化しているのをチャンスとみて積極的に情報の提供を求めているということで、海外の資産に対する監視を一層強めることにしています。

国際圧力で変わるケイマン諸島

カリブ海にあるイギリス領のケイマン諸島は独自の税制を持ち、法人税や所得税がない、いわゆるタックスヘイブンとして知られています。
税負担を減らしたい世界中の企業や富裕層から資金が集まり、人口5万5000の島内には外資系の会計事務所や銀行が立ち並び、南国に似合わないスーツ姿のビジネスマンが行き交っています。
日本からもおととしの時点で総額679億ドル、7兆円近い資金が移されていて、こうした資金を扱う金融機関に課す手数料などで財政を賄っています。
一方で金融取引などの情報を一切明らかにしてこなかったため、脱税やマネーロンダリングの温床になっていると批判されてきました。
4年前にはOECD=経済協力開発機構が公表したタックスヘイブンのブラックリストに掲載され、情報を開示するよう迫られました。
国際社会の批判をかわしブラックリストから外してもらおうと、ケイマン諸島の政府は「租税情報局」を設置し、外国の当局からの要請があれば、金融取引や口座残高などの情報を開示することになりました。
日本の国税庁にも3年前から情報を提供しているということです。
租税情報局のダンカン・ニコル局長は、「金融が重要な産業であるケイマン諸島にとって、透明性を高めることが大切だ。透明性がないとみなされれば信用を失いかねない」と話しています。
さらに「私たちの役割は日本の税務当局が適切に課税できるよう情報を提供することで、情報を隠すような人はケイマン諸島には来てくれなくてもいい」と強調しました。

専門家「税逃れに厳しく対処を」

日本人がタックスヘイブンに持つ資産を国税庁が把握し、課税が行われていたことについて元国税庁幹部の川田剛税理士は、「従来であればほとんどなかったであろうケイマン諸島や、バミューダ、マン島、ジャージー島まであるのに驚いた」としたうえで、「消費税率の引き上げなど増税が予定されるなかで、海外に資産を隠す税逃れに対して厳しく対処するという国税庁のメッセージだと思う」と指摘します。
来年からは、5000万円を超える海外資産がある場合、税務署への申告を義務づける罰則付きの「国外財産調書制度」が導入され、国税庁はさらに監視を強めるとみられています。
川田税理士は「国際的にも、富裕層が国境を越えて資産を移動させ、十分な税負担をしていないという問題意識が強くなっている。税の公平さを確保するため、富裕層にはそれ相応の負担をしてもらおうという考え方が世界的な潮流だ」と話しています。

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