サテライト5校暫定休校 双葉郡教育復興ビジョン骨子案
双葉郡の生徒を受け入れる中高一貫校構想を盛り込んだ教育復興ビジョンの全体の骨子案が22日、判明した。存続が注目されていた双葉郡の5つの高校のサテライト校は中高一貫校の開設に伴い暫定的に休校扱いとし、各町村の帰還に合わせて地元で再開する方向性を盛り込んだ。県教委は現在の在校生が卒業するまでは存続する方針で、早ければ平成27年度末に休校となる可能性がある。いわき市などに郡内から避難する児童の受け皿となる小学校の新設もビジョンに記した。
サテライト校が27年度末に休校となる場合、その時点の在校生をゼロにするためには26年度入学生を受け入れないことが前提となる。26年度入学生の新たな受け皿として中高一貫校の高校開設を1年前倒しする検討が必要になる。
東京電力福島第一原発事故後、サテライト方式を導入している双葉郡の高校は双葉、富岡、双葉翔陽、浪江、浪江津島の5校。学年別の生徒数は3年生が計242人、2年生が計162人、1年生が計182人となっている。各校の受験者数は募集定員を大きく割り込んでいる。
サテライト校のうち、富岡高は福島北高や猪苗代高、静岡県に散らばるなど「同じ学校としての一体感をどう保てるのか」という課題を抱えていた。さらに、サテライト校に通うために旅館などで生活を続ける生徒も多く、生活面での負担を心配する声もあった。
県教委の関係者は「あくまでも再開を前提とした休校」と強調する。しかし、将来的に5校が地元で復活した場合、中高一貫校と併存することになる。今のところ、地域の教育に果たす各校のすみ分けが不透明で、ビジョンを検討する「双葉郡教育復興に関する協議会」の議論でも「再開した学校と一貫校で生徒を奪い合うのではないか」と不安視する意見が出ている。
新設小学校は郡として一体感のある教育を進めるために必要と判断した。設置場所は児童が多く避難している、いわき市や郡内の空間放射線量の低い地域を想定しているが、各町村の事情に配慮しながら調整を進めるとしている。いわき市には双葉郡から約1000人の児童が避難している。
避難してから2年以上が経過した。子どもたちの古里への帰還意識が低下しつつある現状を考慮し、27年度を目標に開校を急ぐ考えだ。各町村の機能が回復し、それぞれの自治体で小学校が再開した時点で新設校を閉鎖するとした。
■小学校の新設明記
ビジョンの骨子案は「教育と地域復興の相乗効果を目指す」などの教育方針の実現のため、8つの観点から構成する具体的方策を示した。
郡全体の一貫したカリキュラムでは、郡内の課題や復興について学んだことを、今後の地域再生に生かすため実践的な教育課程を編成する。各町村の幼稚園・小中学校の連携では、学校間の交流を通して、小規模化する学校で課題となる集団活動の機会を確保する。
避難している子どもたちとの絆づくりでは、すぐに帰還できない児童・生徒と地元の在校生が連絡を取り合い、再会の集いなどを企画することで、古里への思いを維持させる考えだ。ビジョンは6月中旬までに取りまとめる予定。
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