体罰調査:都教委が130校分の校名公表 都道府県で初
毎日新聞 2013年05月23日 東京夕刊
東京都教育委員会は23日、都内の全公立小中高校と特別支援学校で昨年度に146校182人の教職員らによる体罰が確認されたとの調査結果をまとめ、このうち卒業生などが関与した事案を除く130校の校名を公表した。大阪市立桜宮高校の男子生徒が自殺した問題を受けた文部科学省の緊急調査で、学校名も公表したケースは都道府県レベルで初とみられ、都教委は再発防止や保護者の不安解消などを理由に挙げている。【和田浩幸、福田隆】
都教委にはこれまで年間30〜40件の体罰報告が上がっていたが、全児童生徒と教職員計約100万人を対象にした今回の調査では、4月の中間報告で126校155人の体罰を確認。この日の最終報告でさらに増加した。胸ぐらをつかむなどの「不適切な指導」も延べ335校の542人がしていた。
校名を公表した130校の内訳は小学校31、中学校71、高校28。さらに、子供がけがをした29校(小学校7、中学校17、高校5)と、それ以外で5回以上の体罰や危険な行為があった15校(小学校1、中学校7、高校7)は、事案の概要も併せて発表した。一覧などは23日夕方以降、都教委のホームページ(http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/)に掲載される。
体罰があった学校名は、都教委を含め、教職員が懲戒処分された場合には公表するとしている自治体が多いが、実態把握の調査で個別に公表するのは異例。市町村では佐賀県武雄市が2月に公表。
◇現場は賛否交錯
学校での体罰の調査結果を、校名と実例も挙げて公表した東京都教委の対応に対し、現場は賛否が交錯する。「撲滅のためには効果的」と肯定的な見方がある一方で、公表された学校への保護者の目が厳しくなり「責任追及が激しくなると、家庭との信頼回復ができなくなる」と危ぶむ教師もいる。公表の効果と影響を巡り、今後議論を呼びそうだ。
「校名公表にはメリットがある」と受け止めるのは、ある区立小の校長。教職員が知らなかった体罰事案が児童への調査で発覚するなど事態は深刻で「体罰をなくすには過渡期的な取り組みとして必要」と指摘する。
一方、区立中のベテラン男性教師は保護者側の反応を懸念する。「『子を安心して通わせられない』という声が上がり、学校が対応できないと信頼回復は不可能になる」と指摘。「都教委の教師に対する『見せしめ』のようにも感じる」と漏らした。【福田隆】
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