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震災遺構「仮想保存」 東北大博物館が3D画像化事業

仮想の遺構周辺や内部を歩き回る3次元デジタルモニュメントの装置

ゴーグルを装着すると立体感を伴って姿を見せる第18共徳丸

 東北大総合学術博物館(仙台市)の佐々木理准教授(古生物学)らのチームが、東日本大震災の遺構をレーザー光線による測量で3D(立体)画像化する「3次元デジタルモニュメント」事業に取り組んでいる。特殊なゴーグルを装着すれば、遺構内部を仮想体験できる。一般公開は未定だが、震災の被災建造物が次々と解体されていく中、遺構の保存方法として注目を集めそうだ。

 宮城県気仙沼市で陸に打ち上げられた大型漁船「第18共徳丸」と宮城県南三陸町の「防災対策庁舎」、宮城県石巻市の「門脇小」、仙台市の「中野小」「荒浜小」の五つの震災遺構を3D画像化する作業を進めている。
 ゴーグル型の「ヘッドマウントディスプレー」を装着すると、目の前に3D画像となった共徳丸や防災対策庁舎が姿を現す。装着したまま前後左右に進んだり、コントローラーを手で操作したりすれば、実際に遺構の内部を歩いているように仮想体験できる。
 3D画像化は、遺構にレーザー光線を照射して精密に測量する。装置を遺構内部や周辺に据え付け、測定した距離や方向のデータと、現場で撮影したパノラマ写真を重ね合わせることで遺構を忠実に再現する。
 博物館は、震災遺構が被災地から次々と姿を消していることに危機感を抱き、昨年10月にデジタルデータによる保存の検討を始めた。解体が決まっていたり、保存か解体かで揺れていたりする五つの遺構をリストアップし2、3月に測量した。
 震災遺構は災害の教訓を後世に伝える防災教育面での価値がある半面、被災者からは「もう見たくない」と解体を求める声が出ている。3Dデータで保存すれば、解体されても仮想空間として残すことができ、維持管理も安価で済むというメリットがあるという。
 博物館の佐々木准教授は「デジタルモニュメントを見れば、後世の人や被災地以外の人にも震災の脅威をリアリティーを持って伝えることができる。遺構周辺を含めて地域を丸ごと3Dデータで収集し、震災記録を正確に保存することにつなげていきたい」と話した。


2013年05月20日月曜日


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