暴力的賃借人

暴力的賃借人

私は、建物を賃貸しています。賃借人から暴言をはかれ暴力を受けました。このような暴力的な賃借人との賃貸借は、暴力を理由として解除できますか。

暴言や暴力は解除原因となるか

賃借人に暴言や暴力はあるが、賃料不払い等の債務不履行がない場合でも、賃貸人は賃貸借契約を解除できるのでしょうか。

賃借人がその義務に違反して賃貸人との信頼関係を裏切り、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような行為をした場合には、賃貸人は催告を要せず賃貸借契約を解除することができ、ここにいう賃借人の義務違反には、賃貸借契約の要素だけでなく、客観的にみて賃貸借契約上の権利義務の逐行に密接な関係を有する義務に反する行為も含まれるとされています(東京地裁昭和55年12月18日判時1019号96頁)。そこで、賃貸借契約をめぐる紛争による賃借人の暴言や暴力から、当事者間の信頼関係が破壊されたときには、それだけで賃貸人は賃貸借契約を解除し得ることになります。

信頼関係破壊とは

賃借人が賃貸借契約をめぐる紛争から賃貸人に傷害を負わせたが、謝罪や損害賠償を全くせず、その後も賃貸人の抗議にもかかわらずガレージを無断で築造した場合に、賃借人に義務違反があったのみならず、その後の態度から、将来も賃借人としての義務を誠実に履行することを期待できないということで、賃貸人に解除を認めた判例があります(最高裁昭和43年9月27日判時537号43頁)。

他方、日頃から賃貸借契約をめぐり感情的に対立し、紛争が生じて互いに相手の頭部等を殴る等の暴行を加えたが、双方とも相手方を告訴せず、刑事事件とならなかった場合に、賃貸借をめぐる長年の紛争により感情的になっていた当事者が偶発的な原因でお互いに殴り合う等の暴行をしたのであり、賃借人に一方的に責任があるとはいえず、その行為をもって本件賃貸借契約における信頼関係を破壊するものとはいえないとして解除を認めなかった裁判例もあります(東京地裁昭和55年12月18日判時1019号96頁)。

賃借人の賃貸人に対する暴言や暴力は、賃貸人と賃借人双方の長年の悪感情が背景となっていることがほとんどであり、普通は、賃借人に一方的な責任があり賃貸人には全く落ち度がない、とはいい切れないと思われます。そこで、賃借人の暴言や暴力があってもそれだけで当事者間で信頼関係が破壊されたという結論に達するのは困難でしょう。

訴訟提起と好戦的態度

建物の賃貸借において、賃借人が賃貸人の所有建物を自己所有物であると主張して訴えを提起した場合に、賃借人の好戦的態度による信頼関係の破壊を理由とする契約解除ができるでしょうか。

賃借人が自己に建物所有権が存在しないことを知りつつ、存在したと主張して訴訟提起するのは、それだけで賃借人に好戦的態度が認められ、信頼関係の破壊により賃貸借契約の解除が認められますが(最高裁昭和26年4月24日民集5巻5号301頁)、賃借人が自己に建物所有権が存在すると相当な理由により信じた場合には訴訟提起を直ちに好戦的態度と評価することはできず、信頼関係が破壊されたとはいえないので、賃貸借契約の解除をすることはできません(東京地裁平成4年4月8日判タ805号164頁)。

実際上は、賃借人が相当な理由なく訴訟提起することは稀ですので、賃貸人からみると賃借人が好戦的な態度をとっているようにみえたとしても、多くの場合、好戦的態度とは評価されず、信頼関係破壊による賃貸借契約の解除が認められることは困難であるといえるでしょう。

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