【社説】うそと詭弁を並べ立てる安倍首相

 日本の安倍晋三首相は19日、米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」とのインタビューで、かつての日本帝国による侵略戦争を主導したA級戦犯を祭る靖国神社を日本の首相や閣僚、議員らが参拝することについて「米国国民がアーリントン墓地を参拝することを考えてほしい。国のために命をささげた方々を参拝するのは、他国と何ら違いはない」と主張した。安倍首相は「靖国神社にA級戦犯が合祀(ごうし)=1978年=されてからも、中国と韓国は数年間、靖国参拝に対して特に抗議などはしていなかったのに、突然反対し始めた」とも述べた。

 安倍首相はこのインタビューで二つのうそを言った。一つは靖国神社参拝を米国ワシントン郊外にあるアーリントン墓地への参拝と同じものとした点だ。靖国神社参拝が問題となったのは、1978年に東条英機をはじめとする第2次世界大戦の戦犯14人が合祀されてからだ。東条たちは日本帝国の敗戦後に行われた東京裁判でA級戦犯として処罰されている。

 ドイツで行われたニュルンベルク裁判で有罪判決を受けたナチスの戦犯たちに対し、首都の中心部に祭ってドイツの首相や閣僚、政治家などが日本のように参拝したらどうなるだろうか。欧州は今のように欧州連合(EU)を立ち上げ一つの欧州を目指すことなどできるはずがなく、より根深い対立と紛争に巻き込まれていたことだろう。また、ドイツは欧米をはじめ世界から非難を浴び、さらなる孤立に追い込まれていたはずだ。日本のA級戦犯たちはナチスの戦犯たちと何ら変わらない。A級戦犯を祭る施設を東京の中心部に置き、日本の政治指導者たちが毎年参拝することを、米国のアーリントン墓地の参拝に例えるなど詭弁(きべん)以外の何物でもない。

 安倍首相の二つ目のうそは、韓国がこれまで日本の首相による靖国神社参拝を問題視しなかったという主張だ。1985年に中曽根康弘首相(当時)が参拝したときも韓国は正式に抗議し、その後16年間、日本の首相は靖国神社を参拝しなかった。かつて韓日両国は外交ルートを通じ、靖国神社からA級戦犯を分祀する問題を話し合ったことがある。しかし日本の右傾化の影響で、靖国問題を外交的に解決する話し合いそのものができなくなっているのが現状だ。

 日本は7月の参議院選挙を前に、侵略の歴史を歪曲(わいきょく)、美化する極右ポピュリズムの得票戦争がすでに始まっている。首相をはじめとする政界全体が今のまま暴走しても、誰もブレーキをかけることができないのが実情だ。日本帝国が隣国の多くの人々を殺傷した事実もうそだと主張し、何もなかったような顔をするのが、今の日本での政治の良心レベルだ。そのため日本が憲法を改正し武器を手にすることは絶対に容認できない。

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