政治いま:対立軸どこへ(その1) 「育休」首相のこだわり

毎日新聞 2013年05月22日 東京朝刊

 ◇「3歳児神話」の幻想

 アベノミクスの好調で安倍内閣は高支持率を続ける。だが、かつての自民党長期政権のような安定的な支持を固めたわけではない。「昨年の衆院選で熱狂的な支持を受けた手応えはなかった」(石破茂・自民党幹事長)と不安を抱え、政権も確かな支持層をつかむ軸を模索する。

 「子どもは3歳までが大事だ。親の手元で育てるのがいいね」。昨年12月の衆院選前、安倍晋三首相(58)は側近の加藤勝信官房副長官(57)に語った。成長戦略に「育休3年」を盛り込んだのは首相の強い意向。昨年9月の自民党総裁選前には、地元山口県の党女性部幹部に「育休を延ばす」と伝えていた。「3年間だっこし放題」という殺し文句も首相の発案だ。

 策定に関わった今井尚哉首相秘書官(54)は周囲に「やっぱり子どもって母親なんだ。父親に母親の役割はできない。女性が3年会社を休んでも戻れる居場所を作る」と説明している。原案では育休3年の主体は女性と明記されていた。

 「子どもは3歳までが大事」という考え方は、1960年代に広まった。女性の社会進出を進める立場の論者が「3歳児神話」と批判し、98年版厚生白書は合理的な根拠はないとした。高度成長期には一般的だった正社員の夫、専業主婦、子ども2人という「標準世帯」の存在が背景にある。池田内閣の所得倍増政策に象徴される安定雇用のもとで実現した自民党長期政権を支えた社会的な背景でもある。政権は母親が3年間子育てに専念できるような家族の理想像を、有権者を取り込む核の一つに据えようとしている。

 だが国立社会保障・人口問題研究所によると、80年に全世帯の42・1%だった「夫婦と子からなる世帯」は10年には27・9%まで減った。ひとり親世帯も増え、政権が望む家族像は多様な家族形態の一部でしかない。病児保育などを行うNPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事(33)は「中小、零細企業の人たちは育休自体から遠い。年数を延ばすよりそういう人たちへ幅を広げるべきだ」と指摘する。

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