そこが聞きたい:水俣病最高裁判決の意義 山口紀洋氏

毎日新聞 2013年05月22日 東京朝刊

 −−確かに、今回の判決は52年判断条件を「違法、無効」とまでは言い切っておらず、運用の改善を求めるにとどまっています。

 行政への配慮とみるべきでしょう。仮に「違法、無効」と宣言すれば、過去に認定申請を棄却した人すべてについて再審査が必要です。影響の大きさを恐れたのだと思います。

 しかし、最高裁が認めた通り、四肢の感覚障害こそ水俣病の最も基礎的かつ中核的な症候です。一般に有名な劇症型はあくまで特別な症例です。複数症状の組み合わせを患者認定の要件にしてはなりません。

 この論理を貫くなら、最高裁は「四肢の感覚障害のみで十分。52年判断条件は撤廃すべきだ」と明言すべきでした。私の願いは57年間にも及ぶ違法な水俣病行政の改革ですが、最高裁は水俣病問題の闇の深さを理解していないのでしょう。

 −−患者救済の道は広がりますか。

 今回の判決をテコに患者団体が相互に連絡を取り合って積極的に活動し、救済の道を切り開く必要があります。また、未認定患者でつくる「水俣病被害者互助会」の会員が国、県、原因企業チッソに賠償を求めた訴訟が熊本地裁で係争中ですが、県側に「最高裁の判断を適用すれば原告は直ちに行政認定されるべきだ」と申し入れる行動を起こしました。行政が全住民対象の調査でデータを収集し、感覚障害のみの患者を公健法上の水俣病とする基準を策定して積極認定する以外に解決の道はありません。

 −−弁護士になった当初から水俣病問題に関わってこられました。

 「株主総会に乗り込んで患者の思いを社長にぶつけよう」とチッソ1株運動を提唱した後藤孝典弁護士の事務所に、同期の弁護士が入ったのがきっかけです。後に後藤弁護士はリウマチなどの治療薬のクロロキン製剤がもたらした網膜症の副作用被害を巡る「クロロキン薬害訴訟」に取り組み、私も弁護団に参加することになりました。仲間の弁護士や信頼するボランティアの仲間たち、同世代の支援者もいて、公害や薬害の問題に40年も関わることになりました。「水俣病は終わっていない」と言われますが、「今の問題だ」と表現をした方がふさわしいと感じています。

 −−「今日的問題」という意味で福島第1原発事故と水俣病問題の類似性を指摘する声もあります。

最新写真特集

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM

環境の毎日

環境の毎日