そこが聞きたい:水俣病最高裁判決の意義 山口紀洋氏

毎日新聞 2013年05月22日 東京朝刊

 「公害の原点」と言われる水俣病。患者と認められないまま他界した熊本県水俣市の女性の遺族が、県に水俣病認定を求めた訴訟で最高裁は4月、遺族側勝訴の判決を言い渡した。患者救済の道は広がるのか。代理人の山口紀洋弁護士に聞いた。【聞き手・和田武士、写真・手塚耕一郎】

 ◇57年経ても「今の問題」−−原告側代理人弁護士・山口紀洋氏

 −−公式確認から57年がたった今もなお水俣病問題は解決をみません。今回の判決で最高裁が示した判断=1=は、現状打開の契機になりますか。

 勝訴して患者と認められた女性と同じように、申請しながら必要な検診を受ける機会もなく亡くなった人は熊本県だけで約460人にも上ります。未認定の死亡者を発掘して、行政に認定させないといけません。最高裁判決はこれまでの方法は間違っていたとはっきり言っています。十分闘っていけると思っています。

 −−最高裁判決の意義をどのように考えますか。

 公害健康被害補償法(公健法)などに水俣病を定義する規定はありませんでしたが、判決は水俣病を「魚介類に蓄積されたメチル水銀を経口摂取して起こる神経系疾患」と定義しました。また、行政による認定行為については「罹患(りかん)の有無という確定した客観的事実を確認する行為で、行政の裁量に委ねられるべき性質のものではない」と指摘しました。認定制度の基礎となる考え方を示し、統一的な解釈を示した点に、今回の判決の価値があります。つまり、行政が医学的な裏打ちのない基準で、患者を恣意(しい)的に線引きすることはできないと明確に指摘したわけです。

 −−判決は、行政が患者認定の基準としていた「52年判断条件」の硬直的な運用を改めるよう求めました。

 認定制度の根本に関わる部分で行政の誤りを厳しく批判したと言えます。感覚障害しかない患者を水俣病と認めたことは非常に重要です。水俣病関西訴訟=2=の最高裁判決(2004年)では52年判断条件が事実上否定されたのに、行政は「審査の在り方が間違っていると言われたわけではない」「司法と行政の判断は別」と言い訳を続け、ダブルスタンダード(二重基準)を貫きましたが、もはや言い訳は通用しません。今回も環境省は「判決で判断条件は否定されておらず、変える必要はない」との見解を示しましたが、判決の意義を矮小(わいしょう)化し、曲解するものです。

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