タイのいたるところで見られる仏陀の石像
タイマッサージは、別名タイ古式マッサージ、タイ式マッサージ、英名ではタイヨガマッサージ、タイヨガセラピー、タイ語ではヌア・ボラン、ヌアパンブラン、ヌアタイなどと表記されますがどれも一つの同じもの、すなわち何世紀にも亘り途切れることのない環のように連綿と続く伝統的なタイの癒し療法を指しています。
その起源については諸説ありますが、定説となっているのは、
今から2500年前にさかのぼり仏教の開祖仏陀の主治医であるシワカ・コマラパ師(別名ジバカ・クマー・バッカ)がヨガの霊感によって導き出しただけではなく、ハーブやミネラルに備わっているアーユルベーダの癒しの力も発見したとされております。
シワカ・コマラパ師により創始されたマッサージ法はその後仏教の伝播と共にタイに伝わり爾来連綿と、村から村へ、長老から若者へ口伝されタイ国全土に伝わって行った訳ですが、18世紀のビルマによるアユタヤ侵略でほとんどの貴重な教書を破壊され、残った一部が1832年、時の王ラマ3世によりバンコク最大の寺院ワット・ポーの石碑に刻み込まれました。
この石碑は人体を流れるエネルギーライン「セン」が前面図、背面図合わせて60枚の石碑に描かれているものです。ポー寺院がタイ古式マッサージの本家とされるのはここに由来しているわけです。したがって、タイ古式マッサージは20世紀になって出現した他の多くのマッサージ法と異なり、悠久の歴史と長年の伝統とに培われていることを忘れてはいけないでしょう。
タイマッサージの始祖
シワカ・コマラパ師像
タイマッサージはその由来からして仏陀と深いかかわりがあったわけですが、仏陀の教えの中に「マッサージは4つの心で行え」と教えています。その4つとは:
1)親切心(Loving kindness)
2)哀れみの心(Compassion)
3)他の人と喜びを分かち合う心(Vicarious joy)
4)心の平静(Equanimity)
タイではこうした奉仕の精神が仏陀の教えとして教えられ、タイ古式マッサージは仏教の寺院の行事として社会奉仕の一環として行われてまいりました。当日本タイマッサージ連盟は宗教とは何の関係もありませんが、こういった社会奉仕の精神はNPOの精神にもいみじくも合致しておりNPOとして当連盟がタイマッサージの普及を本邦で行うことの意義を大いに感じております。
タイマッサージを施術する際、施術者すなわちタイマッサージ師は「ワーイ」と呼ばれる合掌を行い健康と幸せに祈りを捧げますが、これは寺院で発展を遂げた名残といえるかもしれません。そこにはただ気持ちがよくなり、健康になるだけではなく、相手を思いやると言う仏陀の教えが込められています。
先に、タイ古式マッサージの本家はポー寺院であることを申し上げましたが、実はタイマッサージの流派はもう一つあり、それはチェンマイのワット・アスンドークを中心とした北のエリアの手法で、南のエリアにあるワット・ポーでは指圧に見られるような「つぼ押し」手技が多く、チェンマイがある北のエリアではストレッチによって「筋を引っ張る」手技が多いのが特徴です。
背筋のラインを押すのも、ワットポーが相手の横で膝を立てたり、相手の足の付け根に自分のひざを置くのに対し、チェンマイは相手の足をまげて足の裏に自分が座ったりしたり、足で相手の背中を手と片足を持ち上げてストレッチするなどと言うテクニックもチェンマイ式独特のものです。
日本でのタイマッサージの現状は、はっきりワットポー式、チェンマイ式とか分かれているのではなく、両者の特徴をミックスした誠に日本的なスタイルとなっております。
(この項は、タイマッサージの由来を述べたもので、当連盟が特定の宗教と特別な関係があるとかいうことを示唆してはおりません。
SENの概略図(出典:タイマッサージ百科事典)
タイ古式マッサージは人体に「セン」と呼ばれるエネルギーラインがあるという考え方の上に成り立っています。しかし、この「セン」と言うものはみえるモノではないので解剖学的に確かめられるというようなモノでは有りません。
ではこのエネルギーラインとは何かと言うと、人間は自分を取り巻く宇宙エネルギーと常にバランスを保ちながら肉体や精神を維持しているわけですが、呼吸によって吸収された空気や食餌によって体内に摂取された栄養は、人体に入ってから生命エネルギーに変わり、エネルギーラインを通って全身に供給されるわけです。
エネルギーラインとは人間と宇宙エネルギーを結ぶ架け橋の役割も果たしており、その数は72,000本もあり、「第二の身体」、「第二の皮膚「」として人体を形成しているのです。例えば、身体の具合が悪いと言う状態は、生命エネルギーの供給が妨害され不足した状態と考えられるのです。
そこでマッサージによってエネルギーラインに刺激を与え、生命エネルギーの流れを正常にして行くと言うことなのです。タイ古式マッサージではこのエネルギーラインの中でも特に重要な10本の主線を基本とした施術を行いますが、そのうちの6本が足に集中しているために通常タイマッサージは足から始めます。
当連盟のプロセラピスト検定をパスしたセラピストたちはこの「セン」を直ちに見つけ出せるのですがまだ修業が足りないセラピストはなかなか的確にこの「セン」を見つけ出せないので無駄な力が入ったりして、翌日もみ返しが来たりするセラピストも業界にはおるようです。
施術は足から始めます。
初めてタイ古式マッサージを体験した日本人の共通の疑問は、足の部分にかけるマッサージ時間が半分以上もあって、肩や腰の部分のマッサージがやけにおざなりな感じを受けることではないかと思います。これには訳があって、先に述べた「セン」の内、最重要な10本の「セン」の6本までが足(足裏〜足の付け根)に集中しているため、通常、タイ古式マッサージでは足の部分からスタートすることになるのです。肩が凝っているから肩を揉む。あるいは腰痛だから腰部分を特にマッサージするという考えはタイ古式マッサージにはありません。下肢に対する治療が7割強を占めるタイマッサージでは、足にある6本のエネルギーラインを中心として施術を行うことになるのです。
日本の指圧との違いは、タイ古式マッサージは体質を根本から改善しようと言う考えに基づいていることです。自律神経やストレスなど全てのツボが足の部分に集中していることは科学的にも証明されており、最近のリフレクソロジーのブームはその効果に着目したものと言えるでしょう。タイマッサージで肩こりの治療には手首や手指の付け根周辺を押し揉みしますが、このことからも分かるようにタイマッサージとは患部を直接治療するのではなく、人体を全体で捉えた東洋医学思想に裏打ちされた治療法なのです。
Wat Poの中庭にある、
タイマッサージ施術のフィギュア
最後にタイマッサージの効果、効能について考察してみましょう。ヒ-リング効果、癒し効果等の俗に言う気持ちイイ効能は勿論他のマッサージ法には見られない大きなタイマッサージの特徴ですが、タイ国の保健省が公式に認める効能は、高血圧、冷え性、便秘、アレルギー、頭痛、糖尿病、生理不順、風邪の予防、低血圧、食欲不振、ぜんそく、貧血、老化防止、ストレス解消、など60種類以上にも及ぶものです。
タイマッサージは体の凝りや疲れを癒すだけではなく、一時しのぎでもない本物のマッサージ法です。
血液とリンパ液の循環を促すことで根本的な体質の改善を目指す療法です。血液の役割は体内中をめぐり、各部に酸素と栄養分を運搬するものです。リンパ液は体内中をめぐり、体内の老廃物を回収し、途中のリンパ節でろ過することです。
タイマッサージとは局所的治療ではなく体全体の血液とリンパ液の流れを良くすることで、体調の改善を図ることが究極の目的なのです。
Special thanks to the courtesy of Royal Thai Embassy, Tokyo.