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'13/5/16

「女性手帳」止まらぬ批判 若いうちに妊娠の知識を


 若い女性に妊娠・出産の知識を広めようと内閣府が導入を検討している「女性手帳」(仮称)について、肝心の女性からの批判が止まらない。妊娠適齢期などを正確に知ってもらい少子化対策につなげる狙いだが、国が個人の人生の選択に口を挟んだと受け取られ、「押し付けは良くない」などの声が出ている。

 「国が『20代で結婚して子どもを産め』と強制しているみたい」。さいたま市の女性会社員(43)はこう憤る。

 病弱な母親と2人暮らしを続けてきた。結婚を考えたこともあったが、30代半ばに「独身・子どもなし」を決断した。「この人生は自分で選んだ。どんな形であれ、国が人の生き方に口出しするなんて許せない」

 都内に住む派遣社員の女性(34)は、交際相手(30)に正社員の仕事が見つからないと話す。「2人合わせても年収は約400万円。結婚や出産が安心してできるような環境を手帳よりも先に整えてほしい」と訴える。

 一方、約10年不妊治療を続けてきた北海道の女性(41)は「もし手帳があったら、20代から不妊治療ができたかもしれない」と知識の普及には理解を示す。ただ「政府に産まない人生を否定されたくはない」と、思いは複雑だ。

 文部科学省によると、2014年度から高校2年生用「保健体育」の教科書の多くで、不妊や高齢出産に関する記述が増える。女性手帳の記述とかなり重なる可能性があるため“二重配布”となる人も出てきそうだ。

 想定外の反応に、森雅子少子化担当相は10日の記者会見で「人生の選択を国が押し付けるということではない。男性に配らないとは決まっていない」と語気を強めた。女性手帳という名称が独り歩きしていて「残念だ」としながらも「日本は高齢での妊娠、出産のリスクに対する知識が先進国でも低い」と啓発の必要性を強調する。

 少子化ジャーナリストの白河桃子しらかわ・とうこさんは「日本では多くの大学生が『不妊治療をすれば40代でも簡単に出産できる』という誤った認識を持っている。男女ともに正確な知識を丁寧に伝えるべきだ」と指摘。

 妊産婦支援をする公益財団法人ジョイセフ(東京)の石井澄江いしい・すみえ代表理事は「妊娠・出産の決定権は個人にある。上から目線で女性手帳を配るより、性教育の充実や産める環境を整備すべきだ」と政府の対応を批判している。

 内閣府は5月末にも具体的な少子化対策として、手帳の導入方針を正式に打ち出したい考えだ。




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