開幕当初はスタメン出場もあった木村だったが……。
「試合中もメンバーを見て『世界選抜みたいだなぁ』と、思わず見とれちゃうんです」
ドイツ代表監督のジョバンニ・クィディッチが率い、ポーランドのエース、グリンカや、ドイツの主将でブロックの名手でもあるフュルスト、セルビアのエース、ブラコチェビッチなど、各国の代表選手が顔を揃える。
10月の開幕当初は木村もスタメンで出場する機会を与えられた。しかし徐々に回数は減り、リーグ中盤からはグリンカが後衛に回った際にピンチサーバーで入り、そのまま3ローテ、守りを固めるのが木村の役割になった。
「試合に出ていないことに、悔しいという気持ちはなかったんです。でも自分自身にはイライラしていました」
先発から外れた理由を、全日本女子の戦術・戦略担当コーチで、現在はワクフバンクでコーチを務める川北元は「コミュニケーションを含めた、攻撃面が課題だった」と説く。
東レや全日本でコンビを組んできた中道瞳は「沙織から『こういうトスがいい』と言われたことは一度もない」と言う。裏を返せばそれは、どんなトスでも打ち切れるポイントがあるということであり、事実、中道は「沙織に上げるのは本当に楽だった」とも言う。
日本より遥かに高いブロックの前に、器用さと気遣いが通じない。
1986年8月19日、埼玉県生まれ。成徳学園高(現・下北沢成徳)で全国優勝。高校2年生で全日本に選出され、アテネ、北京の五輪に出場する。ロンドン五輪ではエースとして、28年ぶりの銅メダル獲得に貢献。'05年東レに入団しリーグ3連覇を達成。昨年9月トルコ1部のワクフバンクに移籍し、3月欧州王者に輝いた。185cm、65kg。
だがそれは、トルコでは通じない。日本より遥かに高さで上回るブロックが、常に目の前にそびえ立つ。その状況で得点を挙げるには、より緻密で、精度の高いスパイクを打たなければならない。
上がって来たトスを必ず打ち切る。日本にいた頃のような木村の器用さと気遣いは、トルコでは長所ではなく短所になった。
「私、どういうトスが打ちやすいかとか、よくわからないんですよね」
ワクフバンクのセッターで、トルコ代表でもあるナズ・アイデミルは、昨季、フェネルバフチェでチャンピオンズリーグを制覇している。22歳と歳は若いが、経験豊富な司令塔は、なかなかコンビの合わない木村に「どんなトスがほしいの?」と繰り返し尋ねた。
「最初のうちは全部OK、今のも大丈夫、みたいな感じで『もっとこうしたい』とは、全く言わなかったんです。だから、ナズも監督もどんなトスを上げたらいいのかわからない。そこはもっと詰めていかなきゃいけないのに、常に受け身でした」
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