出場機会は限られていたが、チームは今季の欧州王者に輝いた。
初めての環境で過ごした半年間。彼女が秘めた想いを打ち明けた。
2013年3月10日、バレーボールのヨーロッパ王者を決める、チャンピオンズリーグでトルコのワクフバンクが2年ぶりの優勝を飾った。
喜びを分かち合う選手たちの輪の中に、今季からトルコへと渡った、木村沙織がいた。
歓喜から3日後、試合会場と隣接したホテルのカフェで、彼女の話を聞いた。
右手を挙げ、すいませーん、と日本語でウェイトレスを呼ぶ。「チャイ、イキ、ホットチョコレート、イキ。プリーズ、オーケー?」
身ぶり手ぶりを交えながら伝えると、わかった、と微笑みウェイトレスが去って行く。
「トルコ語どころか、英語もわからなくて最初はちんぷんかんぷん。今も喋れないけど、チームメイトとか、トルコって、みんながすごく優しい。いい人たちばっかりですよ」
数分後、ドリンクを持ったウェイトレスがテーブルへ。お盆の上には、紅茶と、ホットチョコレートが2つずつ。
「あ、間違えちゃった。イキ(2つ)じゃなくて、ビル(1つ)だった」
不安そうに覗きこむウェイトレスに、「オッケー、オッケー」と笑いかけ、ホットチョコレートと紅茶を交互に飲む。
「初めての環境にポンと入って、自分がどんな感じになるのかな」
昨年9月にワクフバンクへ合流し、3月にヨーロッパ王者となるまで。トルコでの日々を、楽しそうに語り始めた。
「もう半年ぐらい経つんですね」
ロンドンオリンピックまでは、ただひたすらに「メダル」を目指してきた。そして、28年ぶりの銅メダルを獲得。
「ロンドンが終わって、それからは全く別物。ゼロからじゃないけど、初めての環境にポンと入って、自分がどんな感じになるのかな、と、最初はワクワクしていました」
2002年からの急激な経済成長を背景に、潤沢な資金を得たトルコリーグは、世界各国のトップ選手獲得に力を注いだ。
2011年にトルコ勢として初のヨーロッパ王者となった、木村の在籍するワクフバンクは、その筆頭とも言える強豪チームだ。
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