慰安婦問題――ポイントを間違えるな
このところ橋下大阪市長と西村眞悟衆議院議員の従軍慰安婦問題をめぐるイレギュラー発言がマスメディアで取り上げられ、騒がれています。お二人の発言の仕方はまずいなと私も思いました。内容ではなく、仕方、ものの言い方、テーマの選び方における「戦略」のなさです。
お二人はなぜアメリカ軍による日本人慰安婦の扱いを具体的に例をあげてきちんと取り上げないのでしょうか。誰でも「基地の女」ということばを知っているでしょう。全国いたる処、基地のあるところに日本女性がいました。朝鮮戦争のころ(1950~53年ごろ)はピークでした。殺人もよくありました。
日本人は戦後、米兵にさんざんな目に遭ったのです。それでも世界の歴史の中では比較的ましな占領軍でした。それで日本人はずっと我慢して来たのですが、いまアメリカからありもしない日本軍による人身売買の人権侵害蛮行として道義的に批判される理由はまったくありません。
橋下さんは沖縄の司令官に日本の風俗営業をもっと活用せよと言ったようですが、そんなことを言わないで、戦後の日本におけるアメリカ兵の蛮行のデータをきちんと調べて、あらためて批判するべきでした。また、慰安婦施設は世界中どこにもあった、などと漠然と言うのではなく、例えばシシリー島ではドイツ軍管理の慰安婦施設をアメリカ軍が働いている女性もろとも引き継いだ、という笑ってしまうような例――よく知られた話です――を取り上げて、大衆にもメディアにも文句の出てこないような話し方をすべきです。ワーワー大声でわめいている印象しか残らない彼の話し方は拙劣です。
西村眞悟さんはなぜ韓国人売春婦の数が多いなどということを唐突に口走ったのでしょう。もしこれを言うなら事実例を挙げて、例えばごく最近も韓国で売春婦の大型デモがあり、白昼堂々と彼女らの権利が主張されている国であること、また米国務省の2011年6月11日付報告書で、韓国の売春婦は世界で一番多く、27万人、全人口の1.07%に及ぶというような驚くべきことを報道事例を掲げて、説明すべきだったでしょう。そうすれば女性議員の会が文句をつけたりできないのです。西村さんはなぜこんなにいつもスキがあるのでしょう。くりかえされる不用意なもの言いはそれ自体が問題です。きわどいことを発言するときには、それなりの準備と戦略が必要ではないですか。
それから、申し上げたいのは今さら韓国を相手にこの件でものを言うな、ということです。またこのご両氏だけではなく、どなたでも弁解や言い訳に類することはもう一切口にして欲しくありません。言葉が通じない相手には――100年前からそうでしたが――何を言ってもダメなのです。
いま外交的に面倒なのはむしろアメリカです。しかもアメリカ人は論理的に説明すれば分る人がまだいます。日本に慰安婦施設をつくらせたのはGHQです。アメリカが日本を非難する資格はありません。
この件で世界に発信しているアメリカのサキ報道官(女性)に、国民みんなで抗議しましょう。彼女は「性を目的に人身売買された女性たちの身に起きたことを嘆かわしく、とてつもなく重大な人権侵害である」と日本を非難していますが、あなたはあなたの父や兄や祖父が日本で何をして来たのか、またアメリカ軍が何をしてきたのか知っているのですか、と訴えかけましょう。あんな風に日本人を見下すような物の言い方は許せません。国民みんなで声をあげましょう。そして韓国人は放って置きましょう。アメリカに抗議しましょう。反発するアメリカ人も出て来ますが、その通りだ、分った、というアメリカ人もいるはずです。これはそのようなレベルのテーマなのです。
(追記) 戦後の沖縄で米兵による狼藉がくりかえされ、今もなかなか止みません。アメリカ軍はアメリカの女を沖縄の基地に連れて来て、慰安所をつくり、日本人に迷惑をかけるべきではありません。旧日本軍がしたことはそのことでした。旧日本軍のほうがずっと正しいことをしていたのです。橋下さんは沖縄の司令官に日本の風俗嬢を使えというのではなく、アメリカから風俗嬢をつれて来いと言うべきなのです。日本政府もそう言うべきなのです。これは当り前なものの言い方で、たゞ内気になった日本人がこういう普通の言い方を忘れているだけです。アメリカにももっと胸を張って生きていきましょう。
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文末、「これはそのようなレベルのテーマなのです。」の一文にある意味同感しきりであります。慰安婦問題で関係国が非難しあう事は、生産的な議論では無いという意味で。
では将来もこの様な問題が起こらない為にはどうするべきかは、意味のある、取り上げるレベルにあるテーマと言えましょうがここでは触れません。
それよりも、今回の維新の会の一連の発言で、私が最も注目すべきレベルのテーマと思うのは、石原氏の「マッカーサーも、自衛の為の戦争だったと議会で証言しているではないか。」という意味の発言です。
私は勉強不足で、マッカーサーの言葉が、何時、どういう状況のもと、どういう文脈のなかで、語られたか知りませんし、知る手段も手近にはありません。
この周辺事情がもっと詳細明確に公宣流布されれば、先時大戦の歴史的性格付けにも変化がもたらされ、日本国内でのいわゆる不幸な歴史観対立も少しは和らぐのではないかと推測します。
なぜなら、マッカーサーは我々戦後世代にとって、(否私個人にとってだけかも知れませんが)、いわば(戦後)「世界創造者」の立場でありますから。
コメント by 山中 彰 — 2013/5/19 日曜日 @ 23:25:14
最後の追記での提案ですが、これはブラックジョークなんでしょうか?
この提案の方がアメリカは怒りますよ。アメリカの女性を敵に回すことになります。
文章の前段で今回の2人の稚拙さと戦略の無さを指摘して、私も「その通りだ」と同意しながら読み進めましたが、最後の「追記」でズッコケてしまいました(笑)。なぜならば、橋下氏の発言と大差ないからです(アメリカにとってはもっと悪い)。
どうやらこの問題では、西尾先生でさえ、冷静ではいられない様です。
アメリカがこの問題に首を突っ込むあまり、既に日本人の「感情の領域」に踏み込んでしまい、様々な軋轢や摩擦を引き起こしている事を、まず、アメリカ自身に自覚してもらいことが重要です。彼らは第3者のつもりで裁判官を気取っているのかもしれませんが、既に当事者そのものです。
現在、アメリカではアメリカ軍内部の性暴行が問題となっています。自軍の女性兵士に性暴行を加える事件が多発しているのです。アメリカとしても最早、エクスキューズできない案件なのです。
「軍隊の性」について、包括的に議論すべき時でしょう。
コメント by ぽん — 2013/5/20 月曜日 @ 2:03:27
お二人とも弁護士なのに、事実、証拠によらず、思い優先で発言されたことは全く残念なことです。
事実、証拠といえば、「ディベート」ですが、20年位前、学校でディベートを教えようとする動きがあって、「学校ディベート」という教師向けの指導書も発行され、実際近くの小学校でもディベートの授業が行われていましたが、今はいつのまにか立ち消えになってしまったようです(教師向け指導書も見かけません)。また一部では「ディベート→詭弁」と見る人もいる有様で、今の日本人は、事実と証拠に基づいて自分の立場を、相手に伝わるように正しく強く主張するという訓練が全くなされていません。
日本を強くする「ディベート」が広まらないのは、特定勢力の陰謀ではないかとすら思えてきます。
コメント by 八木型空中線 — 2013/5/20 月曜日 @ 5:39:40
テキサス親父も分かっているアメリカ人のひとりです。決議など何の法的拘束力もないから気にするなと日本人に言ってくれています。またアメリカにまで何で売春婦像をたてやがるんだと怒っております。
コメント by nagasaku — 2013/5/20 月曜日 @ 7:20:22
旧日本軍みたいに自前の施設を持つべきです。
コメント by 山本道明 — 2013/5/20 月曜日 @ 9:10:18
橋本氏は、PC(ポリティカル・コレクト)に違反し、政治家、特に政党
のトップクラスが言ってはならないこと(その内容の正否にかかわりなく)を言ったのです。ここぞとばかりに、不当な反撃を呼び起こしたのは当然の帰結です。橋本発言の当否をめぐり、橋本氏を批判したり、また擁護したりする論争自体、いわば敵の思う壺です。橋本氏は所詮その政治的未熟さを表したものという他ないでしょう。少なくとも、少し謹慎して欲しいと思います。(政治家を辞めろとまではいいません。)
西村慎吾氏、は残念ながら長い浪人生活の間に、(広く全国の支持者に立派なことを言われてきましたが、)身近な自分の選挙区の有権者にたいする、説得的で慎重な(しかし精力的な)物言いを忘れてしまったのではないかと懸念します。
ご両者と、ご両者を支持すうる皆さんも、一度、じっくり腰を落として、いま何が必要かを再考すべき時であると思います。
橋本氏の発言が、西尾先生の折角の海外向けの発言の効果を減殺しつつあることを遺憾に思っておりましたが、今回の文章は、胸のすく思いが致します。いま、何が必要か、これ以上のものはないと感じ、一言記させていただきました。
コメント by 東埼玉人 — 2013/5/20 月曜日 @ 10:46:03