■倫理論争が障害に
しかし、韓国国内にはES細胞研究を行う基盤がない。かつて黄禹錫博士は健康な卵子数百個を使っても、ES細胞を一つも作り出すことができなかった。宗教界などから生命破壊行為だとする批判が相次いだことを受け、韓国政府は不妊治療の過程で余り、廃棄する卵子しかクローン研究に使えないよう法規制を強化した。車病院の鄭炯敏(チョン・ヒョンミン)教授は「クローンを目指したが、卵子の状態が悪く、結局は失敗した」と語った。
米国では卵子の提供が比較的自由だ。金銭を受け取り卵子を提供することもできる。ミタリポフ教授の研究チームも、若い女性3人から健康な卵子の提供を受けた。そのおかげで、提供された卵子の半分でES細胞を得ることに成功し、卵子の乱用という批判を回避できる可能性が高まった。
蔚山科技大のキム・ジョンボム教授は「iPS細胞の商用化に向けても、ES細胞研究が必要だ」と主張する。二つの幹細胞を比較すれば、iPS細胞の問題点を解決する手掛かりが見つかるからだ。ミタリポフ教授たちも、ES細胞とiPS細胞の比較研究結果を今後の論文で発表すると説明している。車病院統合幹細胞研究所のイ・ドンリュル副所長は「臨床試験で韓国がリードしている受精卵幹細胞の研究を活用すれば、同じ系列に属するES細胞研究も加速できるのではないか」と指摘した。
問題は社会的な合意だ。宗教界は「いくら使用する卵子が少ないといっても、クローンは卵子を破壊するものであり反対だ」との立場だ。科学界は「いくらでも健康な卵子が供給される条件であれば研究を検討できる」との反応が大勢だ。