人の心に届くようなアナウンサーになるために
インタビュー
小郷 知子 アナウンサー
目次
- 青春のなかで見つけた達成感
- 戦力になるために
- ニュースの周りで起こっていることに"気付ける"人でありたい
ニュースの周りで起こっていることに"気付ける"人でありたい
――『ニュース7』のニュースリーダーを経て、土日祝のメインキャスターに抜擢されるわけですが、そのときの心境はいかがでした?
小郷「ただただ驚くのみ・・・です(笑)。「本当にわたしなんですか!?」って、何度も確認しましたよ!」
――気持ちとしては、吹っ切ることができたのでしょうか? それとも戸惑いのほうが?
小郷「自分が担当すると分かって、さてどうしようと思ったのもつかの間、東日本大震災が発生しました。この状況下で果たして自分にできるのだろうか...としか思えませんでした。自分ではないほうがいいのではないか、自分よりも他の方のほうが上手く伝えられるのではないのかって悩みました。余震もまだ続いている、原発問題もクローズアップされている・・・ 当時は『ニュース7』も1時間に拡大して放送していました。通常よりも長い時間を伝えるというプレッシャーもありましたし、それだけ伝えるべきものもある。さらには、統一地方選挙もあって...。本当に息つく暇もなく時間が経過していったような日々でした。忘れることができない時期ですね。」
――今年の春で3年目を迎えます。改めて小郷さんが『ニュース7』で心がけていることは何でしょうか?
小郷「最初は本当に余裕がありませんでした。ですが、3年目ともなると、ようやく周りを見渡せる余裕が生まれてきたのかなぁと。わたしが力を入れすぎると、聞いている人も疲れてしまうと思うんですね。がんばりすぎることは悪いことではないけれど、必ずしも良い方向に行くとも限らない。もう少し力を抜いて視聴者にしっかり届けることを心がけたいです。原点は、"見ている人にしっかりと内容を伝える"ですからね。そこには制作者の思いや、取材している記者たちの現場で感じてきた思いが詰まっています。わたしが伝えるまでには、たくさんの人が関わっています。できるだけその思いをくんで、視聴者に伝えたいと思っています。それでいて、力みすぎずに。」
――今まではなかなか力みを取ることができなかった?
小郷「がんばらないと、と自分を奮い立たせていたところもありましたし、背伸びしている部分もあったと思います。そうするとより緊張してしまう(笑)。わたしはわたしでしかないので、身の丈にあった伝え方、今のわたしにできることを精一杯やりたい。まだまだ未熟ですが、それでもわたしにできることをやれたらいいなぁと思っています。自然体で伝えられたらいいですよね。」
――小郷さんがあこがれた松平さんのような伝え方に近づいてきている手ごたえや成長は感じますか?
小郷「全然! ほど遠いです(笑)。」
――理想とする伝え方にたどり着くためには、何が必要でしょうか?
小郷「もっといろいろな経験を積むことだと思っています。ニュースに限らず、さまざまなジャンルに携わることも含めてですね。仕事だけではなく、人間としても。さまざまなニュースに触れるにつれそう思うんですね。ニュースって、そのほとんどは人間が関わっているものですよね。34歳のわたしは人間としての経験値はまだまだ浅くて、自分が知らないこと、見たことのないもの、聞いたことのないものがたくさんある。日々のニュースのなかで、「人がこう思ってしまうのはなぜなんだろう」と分からないこともあります。社会であったり、人の考え方であったり、わたしにはまだまだ勉強しなければいけないことがあると思っています。表面的な部分だけで考えてしまうと浅はかな判断になりかねない。そのニュースの周りで起こっている状況や社会性なども理解しなければいけない。物事に対して"気づける人"になりたいです。「こういう事実がありました」で終わるのではなく、「こういうニュースがありました、だからこそきちんと考えなければいけない、そしてどんなことが考えられるのか」という感覚を大事にしていきたいですよね。」
――今後、ご自身の考えるアナウンサー像などがあれば教えてください。
小郷「一つは人の心に届くようなアナウンサーになること。今ある仕事を自然体で続けていくなかで、いつか違う分野を担当するときもくると思います。いろいろな分野や仕事に携わるなかで、アナウンサーとしての幅を広めていきたいですね。もっともっと人生経験を積んで、深みのあるアナウンサーを志していきたいです。」
小郷アナウンサー、こだわりの道具
「呼びかけ文」
小郷「各々の自作になるので、先月登場した鈴木奈穂子アナウンサーのものと比べると違うことが分かっていただけると思います(笑)。ニュースを担当しているうえで、この呼びかけ文は欠かせないんですよ。いつ何時でも対応できるようにしなければなりませんからね。」
「ストップウォッチ&電子辞書」
小郷「この電子辞書は福岡局時代から使っているものなので、かれこれ9年くらい使い続けています。名前のところが剥げ落ちてしまっているくらい(笑)。「この原稿は何分何秒で読み終わります」と申請するため、ストップウォッチも必携です。新人のころは、下読みで計った時間と本番で読んだ時間が一緒にならず、ズレが生じたことも。申請した時間より早く読み終わってしまうので、みんなを不安にさせてしまいました(笑)。経験を重ねることで、原稿を読む自分のペースというものが一定してくるんですよ。」
「ひざ掛け(毛布)」
小郷「ペルーに行った際に購入したアルパカの毛布です。ニュースセンターにいるときは、ひざ掛けとして愛用しています。夏場などは、ジャケットなどを着ている男性アナウンサーよりも、女性アナウンサーは薄着になりがちです。なにか羽織ったりしていないと体調を崩しかねない(笑)。上着などを着込んでいると何かあったときにすぐにスタジオに入れないため、こういった羽織れるものや掛けられるものが重宝しますね。」
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- ニュースの周りで起こっていることに"気付ける"人でありたい