二回には涌井から中前打。これがチーム初安打だった【拡大】
左翼席へと弾丸ライナーが飛んでいく。火の出るような打球がレオ党の悲鳴を切り裂いた。息をのむ間もなく、白球はスタンドへと着弾。新井が奏でた快音に西武ドームにつめかけた虎党が酔いしれた。
「よかった。(本塁打は)まあ、追い込まれていたし、何も考えていなかった。しっかりスイングできたからよかった」
帰りのバスへとつながる長い階段。一段一段上がりながら、穏やかな表情で振り返った。
序盤から点の取り合いとなった。六回を迎えたところでリードは2点。大乱戦ムードが充満する中、心許ない点数だ。だが、新井が空気を変えた。
二死一塁。カウント2-2から3番手・岩尾の投じた132キロのシュート系のボールを振り抜き、左翼席へと軽々運んだ。リードを4点に広げる一撃。試合後の和田監督の言葉は実感がこもっていた。
「(四回に)すぐひっくり返せたのと、新井の2ランが大きかった」
これだけではない。0-2と先制された直後の二回。カウント1-1から西武先発・涌井の3球目を中前へと弾き返した。獅子のエースには2008年から5戦5敗。登板される度に勝ち星を献上していた。
3年ぶりとなる対決。チーム初安打となる一振りで嫌なムードを振り払うと、猛虎が反撃開始した。二回に2点を奪うと、四回は猛攻。イニング途中で涌井をマウンドから引きずり降ろし、初めて黒星をつけた。前日に甲子園でソフトバンク・摂津を粉砕したのに続き、連日のパ・リーグのエース級攻略だった。
基礎を見つめ直したことが、いまにつながっている。今季の開幕、右肩痛のリハビリなどで出遅れた。右の代打として出番を待つ毎日。そんな日々だからこそ、大事にしたことがある。試合前の打撃練習。ティー打撃の際、開幕直後は手投げのティーではなく、スタンドティーを黙々と打ち続けた。
「横から投げてもらうボールだけ打っていると体が開く癖があるから、それの矯正だね。体が開かないように」
狙いがあった。高橋光打撃コーチに1球ずつ置いてもらい、狙いを定め、スイング-。基本を繰り返した。開く癖を修正し、土台を作り上げた。その結果が、42試合で打率・299、7本塁打、26打点の数字になってあらわれている。
「(成績を)しっかり積み上げていきたい。いいスイングはできている」
3連敗から始まった交流戦はパ・リーグを代表する2投手を打ち砕いて初の連勝。首位・巨人との差は再び2・5。和田虎が再進撃へと加速する。 (西垣戸 理大)
(紙面から)