遺作(elf) 
〜エルフ代表作の一つ〜


 

あらすじ?概要


省略(本文にて多少説明)






 
感想?批評?
 
                      
最近のエルフと言えば、「あしたの雪之丞」や「らいむ色戦記譚」など、どちらかといえばミーハ―系のものが多いように見える。
だが、この頃のエルフは既に落ち目。まあ落ち目とまでは言わないが、昔ほどの影響力は無いだろう。エルフと言えば、やはり「同級生」シリーズや「臭作」系。昔のエルフ作品をプレイしてこそ、彼等の偉大さも窺い知れるというものだ。

そんな昔のエルフ作品の中に、「遺作」というエロゲーがある。
エルフ第一世代とも言うべき原画と、ちょっと古臭い構成、そして追求された極上のエロ。そんな古き良きエルフのセールスポイントに満ち溢れた作品である。
「遺作」は確かに古い。だけどその面白さと言ったらもう・・・。
正直なところ、「遺作」レベルのエロゲーはそうそう無いと個人的に思えた。

「遺作」。
迷宮型、謎解き形式のアドベンチャーと言ったところだろうか。主人公・小暮健太を始め、そのクラスメートや彼の恋する少女達が、普段苛められている老人・遺作によって人気の無い旧校舎に閉じ込められ、彼のストレス解消の道具にされてしまうという展開である。プレイヤーとしてすべきことは遺作の罠を振り切ることで、その結果いかに全員無事なまま旧校舎を抜け出るか、であるが・・・。

謎解きの部分は中々に良い。別に金田一ばりの高度な謎解きではないけれど、その謎解きに対して健太が一生懸命知恵を絞っているという雰囲気がひしひしと伝わってくるからだ。そもそもアドベンチャーゲームにとって重要なのは、まさしくこの「いかに雰囲気がプレイヤーに伝わるか」だろう。出来るメーカーには出来るし、出来ないメーカーには出来ない。今はどうか知らないが、昔のエルフはそのあたりの演出力に長けていた。

それ以上に秀逸なのが、陵辱シーンとその過程に至るまでの展開の仕方だろう。
健太の至上目的はあくまで「全員無事に」ということだが、その裏にある意味は「遺作に陵辱されないよう選択肢を間違わない」ことである。それは、少しでも変な行動をすると一人は必ず遺作の餌食となるということ。それを避けるための選択肢を選ばねばならないプレイヤーの緊張感もさることながら、何よりその選択を迫られる健太の緊張感こそがゲームの中には充満し、それが物語自体の質を高めているのだ。
これは、先に述べた「雰囲気の伝え方」に通じるものがあり、そういう意味での緊迫感は、凡庸なエロゲーの可能とするところではない。
そして、さらに狡猾なのが、陵辱シーンがなかなかにそそること。全員無事にと願いつつも、全員の陵辱シーンを見てみたいのは人情である。たとえ最初は救うことを考えていたとしても、「遺作」を進めていく内に喰らい欲望がプレイヤーを支配するものである。そんな欲求をプレイヤーに植え付けるのがエロゲーメーカーに課せられたもう一つの使命でもあるのだが、「遺作」はその点でも偉大であった。

つまるところ、「遺作」はかなりの良作。
やって損したなどという事は、まず無いと言い切れる。
例え古臭くとも、面白いものは面白いのだ。
要は、やり方、見せ方の問題なのだ。

プレイヤーは時に緊張し、時に興奮し、だけど全てクリアした後は、きっと主人公である小暮健太を好きになっているだろう。
思い返すに、見た目は凡人である彼は、実際のところかなりの逸物。とても輝いていた。
そして、そんな「遺作」を作っていたあの頃のエルフも同じように・・・。

きっと輝いていたのだろう・・・