EVE burst error (バーストエラー)
シーズウェアから発売されました。
最後のハッキングシーンは鳥肌が立ちましたね。
当時、もっとも続編の発売を望んだゲームの1つ。
それが、『EVE burst error』でした。
あの頃は言葉自体がなかったけれど、今なら泣きゲーに分類されるのかな。
基本は推理・探偵ものの路線なのですが、
あまりミステリー部分には重点が置かれていません。
ストーリーの良さでも高い評価を得ていましたが、
それはラストの感動的な展開であるとかに由来するのでしょう。
泣きゲーというとまた誤解を招きそうなので、
感動系とかそういう風に捉えた方が良いのかもしれませんね。
というわけでラストの展開にはとても感動したものですが
ただ、ストーリーの1点に関して言えば、
剣野ゆきひろさんの他の代表作である『DESIRE』や、
或いは『YU-NO』の方が上なのかもしれません。
しかし自分はこの2作品以上に、
『EVE burst error』の続編がやりたかったわけでして。
それは他の作品以上に、
『EVE burst error』には魅力的なキャラが多かったからなのでしょう。
小次郎、まりな、氷室(個人的には凄くお気に入り)、プリン・・・
あのキャラたちはその後どういう活躍をしていくんだろう。
クリア後の余韻に浸りながらも、常にそう思ったものです。
(結果については聞かないでくださいorz)
ストーリーの良い作品の場合、大抵はそれで完結しているんですよね。
きっちり完結しているが故に、
下手に続きを書かれても、逆にいろいろ綻びが見えてしまいかねません。
だからストーリーの良い作品の続きを必ずしも見たいとは思わない。
逆にキャラに魅力のある作品の場合だと、
そのキャラがどうなっていくのか続きが気になってしまうのです。
だから私はいまだにラノベとかも読んでいるのでしょうし。
『EVE burst error』はとにかくキャラが魅力的だったわけで、
だからこそ続きが他の作品以上に気になってしまうのです。
もちろん感動的なストーリーがあることで、
『EVE burst error』はストーリーの良い作品でもあるでしょう。
ただ、それ以上にキャラが良かったということで、
ストーリー重視であると同時にキャラ重視でもあるのでしょうね。
キャラを立てた作品、或いはラノベ的な作品というのは、
90年代後半以降に非常に増えていきます。
だけどこの当時はまだ珍しかったこともあり、
余計にもその個性が際立って見えたのでしょう。
かようにストーリー・キャラ共に優れた本作ですが、
それ以上にもう1つの大きな価値があります。
具体的には、ゲームデザイン部分ですね。
基本的には普通のコマンド選択式のADVなので、
基礎システムは特別変わっているわけではありません。
まぁ、コマンド選択により様々な返事が返ってきますので、
選択式の中では比較的良く出来ていたのでしょうけれど。
だから基礎システムではなく、
『EVE burst error』はそこに加えられた別のシステムに特徴があったのです。
そもそも『DESIRE』ではマルチサイトシステムが加えられていましたが、
このシステムは物語を複数の視点から見るというものでした。
一応視点を切り替えるということでザッピングシステムでもあったのですが、
切り替える点に重きを置かない作品でしたので、
ザッピングゲーと言うとまたちょっと違うとなるのでしょう。
だから、あくまでもマルチサイトのゲームであると。
そして『EVE burst error』では、そのマルチサイトシステムに、
視点を切り替えつつ進めるザッピングシステムと、
複数のフラグが相互に絡み合うマルチフラグシステムを融合させたのです。
マルチサイトシステム単体は、ストーリー性の幅を広げるもの。
ザッピングシステムは、単体ならゲーム性を増すもの。
マルチフラグメントシステムは、どっちにもなりうるでしょうか。
これらが融合する事の相乗効果により、
ストーリー性もゲーム性も増していった気がします。
プレイした人ならきっと分かってくれるのではないでしょうか。
ハッキングシーンの、緊張感ある展開の素晴らしさが。
ストーリー部分の名場面は幾つもありますが、
ストーリーとシステムの全てが融合したあの場面こそが、
『EVE burst error』における真骨頂なのでしょう。
たぶんこの場面がなかったならば、
『EVE burst error』の語られ方はまた違ったものになったはず。
ADVだって様々なシステムがあっていいはずです。
最近は便利なエンジンを各社が使いまわしていたりします。
それ自体を否定するつもりは全くありません。
しかし、物語の内容にあったシステムを構築する。
そういったストーリーとシステムの融合を意識できる、
ADVにおけるゲームデザインを出来る人が、
めっきりいなくなった事が残念なんですよね。
剣野作品をやるたび、自分はいつもそう思ってしまうのです。
尚、『EVE burst error』に関しては、
ザッピングゲーとの認識が一般的だと思います。
マルチサイトかつザッピングなので、
マルチサイトという表現でも構わないし、そう紹介するところもあるでしょう。
それはそれで全く構わないのですが、
『DESIRE』よりザッピングを活かしている点や、『DESIRE』との比較の観点から、
あっちがマルチサイトならこっちはザッピングゲーといった感じで、
区別した方が分かりやすいです。
だから個人的にはザッピングゲーと言う場合も多いのですが、
それはマルチサイトであることを否定する趣旨ではありません。
他方で、本作にはマルチフラグの要素も含まれていますが、
マルチフラグであることが活かされているのは、
上記のハッキングシーンくらいなものでしょう。
あまり活用された場面がないので、
マルチフラグゲーと言うには、ちょっと遠慮が生じてしまうのです。
まぁ一言で無理に言うことに無理があるのであり、
表記なんて何でも構わないのでしょうけどね。
さて、ストーリーやキャラが良く、システムも新要素があり凝っている。
またそのストーリーとシステムが融合しているとなると、
それだけで傑作に値すると思います。
もっとも、真に優れた作品は優秀な部分が多いものです。
これまで触れてないですがグラフィックもサウンドも、
当時としては一級品でした。
そこらへんも抜かりはなかったです。
やっぱ梅本竜さんのサウンドは外せないですよね。
数ある名作の中でも、総合的には95年では1番の作品でしたよ。
ランク:AAA-(名作)
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