安倍首相の尊敬する祖父、岸信介・元首相が含みのある言葉を残している。「政治というのは、いかに動機がよくとも結果が悪ければ駄目だと思うんだ。場合によっては動機が悪くても結果がよければいいんだと思う。これが政治の本質じゃないか」(『岸信介証言録』)▼日本維新の会の橋下共同代表がどんな動機で一連の発言をしたのかはともかく、どんな結果を招いたかは明らかだ。米軍の司令官に風俗業の活用をすすめたとき、「建前論じゃなくて」と言ったそうだが、剥(む)き出しの本音では政治はできない▼橋下氏だけの問題ではない。西村真悟氏の驚くべき発言もあった。石原共同代表の「暴走」も続く。維新だけの問題でもない。首相の言葉や閣僚の靖国参拝も含め、多くのことが積み重なって、日本の政治家の歴史観、人権観が疑われている▼政治家の資質ということを考えざるをえない。マックス・ウェーバーの『職業としての政治』によれば、政治家にとって決め手となるのは判断力である。対象を冷静に距離を置いて見るべし。「距離を失ってしまうこと」は政治家の大罪だ。一連の発言はまさにその過ちを犯している▼ウェーバーは戦争を道義的な意味で終わらせる筋道にも触れている。「品位のない憎悪や憤激」が繰り返されるうちは、戦争は「埋葬」できない。それは「品位によってのみ」可能になるのだ、と▼判断力も持たなければ品位も欠く。そんな政治家に日本の将来は託せない。危なくて仕方がない。