画期的なセシウム吸着剤を開発
元素戦略材料センター資源循環設計グループのシェリフ・エル・ザフティ主幹研究員は、除染濃度領域でこれまでの吸着剤の二けた上の性能を持つセシウム吸着剤を開発した。
画期的な応用の可能性を持つセシウムの吸着体を開発
早稲田大学の客員教授であり、物質・材料研究機構の元素戦略材料センター資源循環グループのシェリフ・エルザフティ主幹研究員は、画期的な応用の可能性のある新たなセシウム吸着材(Cs-HOM)を開発し、それを、2013年1月11日に化学会館で行われる未踏科学技術協会の特別講演会・第一回環境技術シリーズで公表した。
このセシウム吸着体(Cs-HOM)は、筑波大学との共同実験での放射性セシウムの吸着試験で、従来セシウムの吸着に多用されるゼオライトの二桁上の吸着特性を持つことが確認された。この性質を生かすことができれば、吸着後の放射性処理物の量を大幅に低減することができる。
また、吸着体は往々にしてセシウム以外の混在成分も吸着し、そのために余分の吸着体が必要となる場合があるが、このCs-HOMは吸着に対して優れた選択性を持ち、同程度のNa,Ca,Mg,Clイオンならばそれらの中からCsを選択的に吸着できる。この特性を利用すれば、CsよりはるかにNaやCaの多い海水や飛灰溶解物からも少ない容積でセシウムを取り出せるようになる可能性がある。
さらに、この技術は従来から開発してきたHOM(高秩序メゾボーラス材料)によるヒ素や重金属センサー/吸着体の技術を発展させたものであるため、濃度に応じて(1ppbから)色が変化するセンシング機能を持っており、このセンシング特性を生かした応用も期待できる。
このCs-HOMはシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)という土壌中どこにでもある物質をもとに合成されており、毒性となる可能性の物質を含まないために、飲料水などの除染にも使える可能性がある。
そのさい、Cs-HOMは通常の水環境で使用でき、酸やアルカリなどの調整も不要であり、廃酸、廃アルカリの処理も不要である。
また、合成時に磁性を持つ物質を配合することで吸着体に磁性を持たせることができることも確認されており、磁気分離などと組み合わせた効率的な除染システムが構築される可能性がある。
Cs-HOMは微細粉末ではなく、10nm程度の微細な孔をもったかたまり(パウダーに対してモノリスと呼ぶ)で生成するため、微細孔の状態を保ったままで任意の粒度に調整できる可能性が高く、砂や活性炭を用いた既存の浄化システムがそのまま生かせる可能性がある。
このように多くの可能性をもったCs-HOMであるが、研究室では予想できない現場での問題も多々存在していると思われ、さまざまな技術やアイデアと結び付けて、一日も早く放射性セシウムの除去に貢献する技術としていきたいと開発者のシェリフ・エルザフティ主幹研究員は考えており、技術の内容を公表しその利用方法を広く議論したいと考えている。
お問い合わせ先
- 技術問い合わせ先
Sherif El-Safty物質・材料研究機構主幹研究員
TEL 029-859-2135 (日本語 鬼澤秘書 TEL 029-851-3354内線2135)
E-mail: Sherif.ELSAFTY@nims.go.jp (英語のみ)
E-mail: ONIZAWA.Ryoko@nims.go.jp (日本語対応可能)
原田幸明 物質・材料研究機構 特命研究員
TEL 029-859-2668
E-mail: HALADA.Kohmei@nims.go.jp