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山田と異世界
2話 山田と僧侶
気がつくと、山田はベッドの上で横になっていた。
毛布がかけられている。
山田は先ほどの戦闘で気絶していたのだ。

「あれ・・・ここは・・・」

「あ、気がつきましたか?」

隣に座っていたローブを着た女性が山田に声をかける。

「あ、ええっと・・・あなたは・・・」

きょどりながら山田は尋ねた。
だが仕方ない。
山田は女性と話すことを苦手としていたからだ。

「私はルシファーといいます、あなたの・・・お名前は?」

ルシファーと名乗った女性はかなりの美人で、だがすこし幼さをもったそんな顔だちをしていた。
腰まで伸びた長い金髪の髪と金眼はどこか神秘的なものを思わせる。
身長はさほど高くなく、山田の胸くらいのたかさだった。
ちなみに山田の身長は174cmだ。
年は山田と同い年か、1つ年下のように見える。

「ああ、えっと、僕の名前は・・・・・山・・・あれ・・・?山・・・なんだっけ・・・」

「?」

「えっと・・・たしか・・・山・・・崎・・・デーモン山崎!そう!デーモン山崎です!」

ってちげえええええええ!!!と山田は思ったが、もう手遅れだった。

「デーモン・・・山崎・・さんですか、ずいぶん変わったお名前なんですね?」

「ええっと、いや!違うんです!本当はちがうんですよ!えっと!」

山田は必死に本当の名前を思い出そうとしたが、思い出すことができなかった。
どうやらこの世界では、最初に入力した名前を使わなければならないようだ。
ああ、しまった、あの時、名前を決めるときにもっとまじめに考えておけばよかったと山田は悔やんだ。

「え・・・と・・・つまり、お名前を忘れてしまった、と?」

「いや、忘れたというか、なんというか、こう、のど元まで来てるんですけど、言えないんですよ、最後まで・・・」

「そうなんですか・・・そうなると何かの魔法でしょうか」

「いやいや、何言ってるんですかルシファーさん、魔法なんて・・・」

あるわけないでしょうと言いかけた山田だったが、ここがもう元の世界ではないことを思い出し、寸前で言うのをやめた。

「ふふふ、デーモンさんは面白い人ですね」

「あ、いやぁ・・・」

「でも、やはりそうなるとデーモンさんは何かの呪いをかけられてしまっているのでしょう」

「呪い・・・ですか」

山田は異世界から来た時の名前の入力の問題であって、呪いではないと思ったが、説明するのも面倒だしどうせ信じてもらえないだろうと黙っておくことにした。

「あの、デーモンさんは今日はどちらへ向かう予定で?」

「いや、実は僕、記憶をなくしてまして、なぜここにいるのか、ここはどこなのか、この世界は一体何なのかというのがいまいち理解できてなくて・・・」

異世界から来たなどと言ってしまえば結局説明しなければならないし、それもやはりめんどくさかった山田は自分を記憶喪失してしまった少年ということにした。
山田にしては機転の利いたアイデアだった。

「そうなんですか・・・わかりました、なら、しばらく私の家でお休みになられてください、私の家といっても教会なのですが」

ニコッと微笑みながらルシファーは山田にそういった。

「え、い、いいんですか?」

「はい、迷える子羊がいれば、それを助けるのが私たちの役目です。こう見えても私、僧侶なんですよ?」

「ありがとうございます、でも、本当に僕みたいな誰かわからない怪しい奴を泊めてしまって本当にいいんですか?」

「ですから、いいって言ってるじゃないですか。私は神に仕える身です。困っている人がいれば手を差し伸べるのは当然のことですよ」

またもやルシファーはニコッと微笑んだ。

「ありがとうございます!じゃあ、甘えさせてもらいます」

「いえいえ、あっ、もうこんな時間、すみません、私、牧師様に呼ばれていたんです。またしばらくしたら戻りますね」

ルシファーは立ちあがり、小走りに部屋から出て行った。

「・・・ルシファーさん・・・可愛かったなぁ・・・」

山田はルシファーに軽く恋心を抱いていた。
しかたのないことだった。
山田も普通の男なのだ。

「年齢はどれくらいなんだろう・・・見た感じ俺と同じくらいだよな?うーん、後で聞いてみよう」

山田はえらく上機嫌だった。
しばらくするとルシファーが戻ってきた。

「はぁ、はぁ、や、デーモンさん!逃げてください!」

「え?」

山田は意味がわからなかった。
突然逃げてくれと言われても一体何から逃げればいいのか、何が起こっているのかわからなかった。

「ま、魔物が!魔物が村を襲ってるんです!それも相当な数の・・・」

「え、ちょ、まって。把握できない。えっと・・・ごめんどういう?」

「説明してる暇はありません!とりあえず避難します!私についてきてください!」

そういうとルシファーは山田の手をひっぱり、教会の奥のほうへと走っていく。

あ、靴はいてないよ俺。
と山田は思ったが、ルシファーがいうように本当に魔物が攻めてきていたらそんな悠長なこと言っている暇はないし、もともと裸足の状態でこの世界に召喚されていたのだから、今更気にしても仕方ないことだった。

「さっき、私、神父様のところへもどったんです・・・!」

走りながらルシファーは話し始めた。

「いつものように、神様にお祈りをするため、講堂へ集まった時でした、突然、魔物たちが教会へ侵入してきて・・・神父様が私たちを守ろうと・・・自分を犠牲にっ・・・」

ルシファーは目の前が涙で見えなくなっていた。
無理もない。自分の尊敬していた神父を、目の前で魔物に殺されてしまったのだ。
ルシファーは立ち止まった。

「?どうしたんですか?」

「グスッ・・・いえ、ここが隠し部屋になってるんです。えっと・・・ここをこうやって・・・」

ルシファーは壁に手を当て、まさぐるように手を壁に触らせた。

「あった!」

ガコっという音が鳴り、壁がゆっくりと開いていく。
その先には階段があった。

「これを下りていけば、隠し部屋があります。さらにその部屋の扉を開けて先に進むと、隣の町へつきます。そこにも教会がありますので、そこへ行ってここの教会の状況をそこにいる神父様に伝えてください・・・」

「ちょっとまってください、ルシファーさんはどうするんですか!?」

「私は・・・ここに残ります・・・きっと教会だけでなく、村も魔物に荒らされてしまっているはずです。私だけ逃げるわけにはいきません」

「でもっ!」

「いいんです、私にしかできないことなんです。大丈夫、私は絶対に死にません。神のご加護もあります」

いや神父様は死んだじゃんと山田は思った。

「・・・・そうか・・・」

「わかってくださりましたか・・・」

「ああ、なら、僕も残ります!ルシファーさん!あなたを死なせるわけにはいかない!」

山田はセリフだけは一人前だった。
スライムにすら劣る山田だったが、口だけは達者だった。
さすが高校を中退してニートになってネトゲ廃人になった山田は言うことが違う。

「そんな!だめです!」

「だめですじゃないです!僕はあなたに命を助けられました!こうして僕がここにいられるのも、あなたのおかげなんです!もしあのまま倒れていたら、肉食の魔物に食い殺されていたかもしれないんです!」

「でも・・・」

「大丈夫、僕はゴキブリ並みの生命力をもっています。簡単には死にません」

「・・・・」

そうこうしているうちに魔物がやってきた。
スライム、オーク、吸血コウモリ、オバケキャンドルの4体だ。

「うげっ!またスライムかよ!!勘弁してくれ!」

山田は早くも逃げたい衝動に駆られていたが、ルシファーもいるし、男として逃げるわけにはいかなかった。
それに逃げたくてもスライムにすら素早さで負けることを知っていた山田は、逃げることをあきらめていた。

「デーモンさん!私は回復魔法で援護します!」

「了解!って、ええ!?僕がたたかうんですか!?」

「ええっ!?ち、違うんですか!?」

「あ!いや、はい!僕がやります!」

田中はすっかりルシファーが戦ってくれるものだとばかり思っていた。
自分でルシファーを守ると言っておきながらとんだ野郎だった。
まさにニートにふさわしい男だった。

「よ、よし・・・いきますよ!!!」

「はい!!!」

山田はモンスターめがけて突っ走った。


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