山田とルシファーは村人たちを隠し部屋に集め、とりあえず安全を確保した。
「ふぅ・・・これで全員ですか?」
「はい、これで全員です・・・」
皆、魔物からの襲撃によって疲れ切っていた。
幼い子供たちも怯えきってずっと震えている。
村の兵士と思われる者も、ほとんどオークによって殺されてしまっていた。
山田がオークに勝てたのは本当に奇跡だったのだ。
「あの、こちらがデーモン様ですか?」
筋肉質の鉄の鎧をまとった一人の成人男性がルシファーに話しかける。
「あ、はい!そうです、この方が今回の魔物の群れのボスのオークを討伐してくださったデーモン様です」
「ああ、そうでしたか!」
ルシファーから確認をとると男は山田に跪いた。
「デーモン様!!オークを倒していただき、村人たちを救っていただき本当にありがとうございました!!!このご恩は一生忘れません!!」
「えっ!?」
山田はうろたえた。
ここまで感謝されたことがない山田は、どう反応していいかわからなかった。
それに、オークがそこまで強い生き物だということも知らなかったため、兵士がたくさんオークに殺されたということも驚愕だった。
なんせまぐれとはいえたった2人でオークを倒しているのだから。
「いやっ!そんなそんな!僕はえっと・・・その、当然のことをしたまでですよ!!」
おそらくルシファーが村に残って戦うといわなければ町に逃げていたであろう山田だったが、そのことは棚にあげていた。
「でも、あのオークを倒してしまうだなんて、デーモン様は相当腕が立つのでしょう!!わたくしも一度お手合わせいただきたいものです!」
「いや!?いやいや!?そんなことないです!!全然!!!弱いです!ザコです!!!オークだって倒せたのはまぐれですよ!!!???」
山田はこんなムキムキマッチョと戦うなんて勘弁してくれと思っていた。
こんないかついおっさんに勝てるわけえねえだろと言いたかったがやめておいた。
男は山田が謙遜しているのだと思い、ますます感心した。
自分より年が小さく、体格も自分のほうが優っているのだが、それでも倒すことのできなかったオークをこの山田が倒したのだ。
男はこれまで、村の中で一番の腕を持つ剣士だった。ゆえに天狗になり威張り散らしていた。だが山田はどうだろう。オークほどの魔物を倒しておきながら威張るどころか謙遜しているのだ。男は自分が恥ずかしくなった。
「いやぁしかしデーモン様は素晴らしいですな。まさか鋼の剣でオークを倒してしまうだなんて・・・恐れ入ります・・・!!」
「え?いやいや、これロトの剣でしょ?え!?」
「はっはっは!デーモン様は面白いことをいうお方だ!それはロトの剣のレプリカですぞ?形だけを似せたただの鋼の剣ですぞ!まったく、デーモン様は冗談がお上手で」
山田は即座にルシファーの方へ目を向けた。
ルシファーは、まさかそれがレプリカだなんて思ってなかったんです!といった顔をしていた。
山田は軽くため息をついた。
「そ、そうですよね!あっはっは!!!いやぁわかってましたよ!?それが鋼の剣だってことくらい!持った時の重さとか本物と比べて全然ちがいますもんねぇ!!!」
「むっ!?ということはまさか!デーモン様は本物のロトの剣をお使いになったことがおありで!?」
すげえ!!すげえよデーモン様!と期待に胸を膨らませ男は山田に問いかける。
あ、やべえまたやっちまったと山田は思った。
「え、ええっと・・・まあ、ちょっとだけですけど!?ちょっとだけなら使ったことありますよ!!」
ゲームの中だけ出だけどなと心の中で山田はつぶやいた。
「おお!!やはり!ではロトの剣が扱えるということはきっとデーモン様はロトの継承者なのでしょう!!!」
「ええっと・・・!?いや!まあ!はい!?」
「いやぁ素晴らしい!まさかロトの継承者様とお会いすることができるだなんて!ということはやはり、魔王を倒しに行かれるのですか!?」
「ええっとおおお!?」
さらにいろいろとややこしくなっていく話に山田はどうしようもなかった。
勝手に話だけが先に進んでいく。
山田はいつの間にかロトの継承者になってしまっていたのだ。
「あれ?でもデーモン様、確か記憶を失っていたのでは・・・?」
ルシファーが山田に聞いた。
そうだった。そういえばそんな設定作ってた。しまった。
山田はなんとか打開策を考えたが、思いつくことなく、しばらく唸った後、何を思ったか
「えっと・・・す、すみませええええんんんんんん!!!!!!!」
走り出した。
隠し部屋の先にある隣町を目指し。
山田は走り出したのだ。
要するに逃げたのだ。
これ以上話をややこしくしたら本当に魔王に戦いに行かせられるかもしれないと思い、山田は逃げた。
その逃げ足はまるでウサインボルトを思わせるほどの早さだった。
「ど、どうしたのでしょうか・・・デーモン様・・・」
「さあ・・・?おそらく、魔王討伐のために向かわれたのでしょう・・・」
「なるほど・・・」
村人たちは勝手に山田が逃亡した理由について語り始めた。
だが、マイナスイメージに捉えることはなく、むしろいい印象を残していた。
「私たちを巻き込まぬため、きっと一人で行ってしまわれたのでしょう・・・!」
「そうだ!そうにきまってる・・・デーモン様に神の御加護がありますように・・・」
だが一人、山田が去って行ったことに不満を持つ者がいた。
ルシファーだ。
まだルシファーは山田にまともにお礼ができていない。
なんとかして山田にお礼を言いたかったのだ。
それに、ルシファーは少なからず山田に好意を抱いていた。
ましてや自分の命を救ってくれた人間だ。
恋心を抱くのも無理はなかった。
人生初、山田がモテた瞬間だったが、当の山田は気づく前に逃げ出してしまった。
「私・・・まだデーモン様にまともにお礼を言えてません・・・」
「気持はわかるがルシファー・・・くれぐれもデーモン様を追いかけるようなことはしてはいけない」
「なんでですか!だって!私、デーモン様をサポートしました!私だってデーモン様の役に立つことくらい!」
ルシファーは山田についていこうと心の中で決心していた。
だが山田はもういない。
ルシファーは山田をおいかけようと思っていたのだ。
「だめだ。お前のような下級魔法しか使えないような僧侶がデーモン様について行ったところで何も始まらない・・・あれほどのお方だ。きっと優秀な魔法使いと戦士と僧侶が仲間にいるはずなんだ。お前が割って入れるような間じゃない・・・」
「でもっ・・・」
「わがままを言うのはやめろ・・・仕方がないことなんだ・・・」
兵士はルシファーの頭をそっとなでた。
「ぐすっ・・・うぐっ・・・うわああああああん!!!!」
ルシファーは兵士の腕の中で子供のように泣いた。
ルシファーは気づいた。
自分が、山田のことを好きになっていたことに。
本当はお礼なんかどうでもよかった。
ただ、山田に付き添っていたかった。
それだけだった。
「ふう・・・ここまでくれば、もう大丈夫だろう・・・」
山田は隠し通路をぬけ、隣町まで来ていた。
町は人であふれかえり、とても賑やかだった。
道端には店が並んでいる。
「あ、そういば俺靴はいてねえじゃん・・・ずっと靴なしでいたのか・・・気付かないのも逆にすげえよ」
山田はとりあえず靴屋を探した。
オークとスライムを倒したことにより14枚のコインをもっていた。
ゲームであればこれで買い物ができるはずだ。
山田は道を歩いた。
「あ、あったあった。靴屋発見。すみませーん。コイン14枚で買える靴ってありますかー?」
「はいはい!いらっしゃいませ!コインですか?ええっと・・・コインと言われてもわかりませんねぇ・・・金貨、銀貨、銅貨で言ってもらえるとありがたいのですが・・・」
「ああ、すみません、今確認します」
そういえば色が付いてるじゃんこれ。
山田は今更そんなことを思った。
確認してみると、金貨1枚銀貨1枚銅貨12枚だった。
「えっと、こんな感じですね」
「なるほどなるほど!金貨をお持ちなんですね!」
「え?ああ、はい、まあ。オーク倒したときにそういえば出てたっけ・・・」
商人に聞くと、
金貨1枚=銀貨10枚
銀貨1枚=銅貨100枚
ということらしい。
ちなみに銅貨10枚でうどんが食べれる。
「じゃあ俺ってまあまあお金持ってんだな今・・・」
「ではこの靴なんてどうですか?銀貨5枚と銅貨12枚で買うことができますよ?」
「ええ、意外と高い・・・」
「それでも、性能もまあまああるんですよ?少量の魔法が掛かっておりまして、足の速さが+3%され、筋力もすこし上がるのです」
「へえ、なにそれ面白い」
「ふふふ、そうでしょそうでしょう!どうです?買います?」
「んーじゃあ、それでいいや。お願いします」
山田は金貨1枚と銅貨12枚を差し出し、5枚の銀貨と靴を受け取った。
「まいどありー!」
「ふぅ、さて、これでやっと靴が履ける。まったく、石とか踏んだら大変なところだったぜ・・・ところで」
これからどうしよう。
山田は元の世界に変えるという目的以外に目的がなかったのだ。
どうやって帰ればいいのか。これからどこへ向かうのか。
まったくわからなかった。
「はぁ・・・こんなことなら逃げ出さなきゃよかったなぁ・・・武器とかも全部置いてきちゃったし・・・」
山田はとりあえず街をぶらついた。
ふとズボンのポケットに手を入れてみると何か固いものに手が当たった。
何だこれ。とポケットの中から硬い物を取り出すと、中から銃のようなものが出てきた。
というより銃だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
山田は静かに、そっとポケットにしまった。
そしてもういちど取り出した。
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????????????
心の中で山田は大きく叫んだ。
見たことのない紋章が刻まれた、古い銃を握って。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。