1回、満塁本塁打を放つ阪神・新井良=甲子園(撮影・白鳥恵)【拡大】
俳優・高倉健の名セリフ「自分、不器用ですから…」を地で行く男だ。ネット社会が進む現在、パソコンは持たず「1度もキーボードを叩いたことがない」と笑う。最近、機種変更したスマートフォンも電話とメール機能しか使わない。1人暮らしの自宅で手料理をすることもない。「俺は古い人間じゃけぇ…」。そんな良太が復活を目指して、最も取り組んだのはシンプルな素振り。昨季限りで引退した金本知憲氏(野球評論家)に習った鏡を見たスイングだ。
指揮官、水谷チーフ打撃コーチから指摘された「バットをあおるな」という修正ポイントを何度も確認。試合前に試合後、一心不乱に自分を見ながら、汗を散らした。バットのヘッドが下がる悪癖を矯正し、待望の放物線を描いた。交流戦では2007年6月2日の日本ハム戦(札幌D)で金本氏が放って以来、6年ぶりの満塁弾。武骨な男の反復練習が生んだ一振り。前日17日に5番を外れた背番号「32」の意地だった。
チームは2試合連続の2けた安打で連敗を3でストップした。昨シーズンは交流戦5連敗スタート。悪夢がよみがえりそうだったが、新井良の一発で払拭だ。殊勲の元気者は腕をぶした。
「連敗して(遠征に)行くんじゃなくて、この勢いでいきたい」
さあ、再加速だ。元気印が打てば、タテジマ軍団は上昇気流に乗っていく。 (小松 真也)
(紙面から)