EVE burst error / C's ware
■あらすじ(OHPより)
天城小次郎はかつて桂木探偵事務所でいくつのも難事件を解決してきた名探偵。だがある事件で所長の桂木源三郎を逮捕に追いやることになり、事務所を辞めざるをえなくなってしまった。現在は埠頭にある倉庫で事務所を営んでいるものの、ライセンス停止中の身でもあり仕事は全くと言っていいほど来ない。自分の事務所でくすぶっていたところにフリーカメラマン柴田茜が事務所にやってきた。本来なら相手にしたくない人物だが、茜は小次郎に久しぶりの依頼を持ってきたので渋々話を聞くことにした。その依頼とはある中国人実業家が奇妙な文様をした絵画を探してほしいというもので、小次郎はその依頼に奇妙な違和感を覚えるが、高額の報酬に目をつぶり仕事を引き受けることにした。依頼主のもとを訪れるとそこにはかつての同僚、そして恋人であった桂木弥生と出会う。彼女たちもまた絵画捜索の依頼を受けていたのだ。古巣との対決となってしまったことに小次郎は複雑な思いを抱きつつも捜査を開始することにする。これが大きな事件につながっていくのはまだ知るよしもない……。
■概要
「DESIRE」「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」で知られる鬼才・菅野ひろゆき(剣乃ゆきひろ)が総合プロデュースするブランド「C's ware」の代表作にして、同上2タイトルと並び菅野3部作と称される作品のひとつ。以後「THE LOST ONE Last chapter of EVE」「ADAM THE DOUBLE FACTOR」「EVE ZERO」「EVE new generation」とシリーズ化されるが、菅野氏は一作目となる本作以降は製作に関わっていない。ここで紹介するのは正式にはPC98版「EVE burst error」のPCリメイク版にあたる「EVE」(2003)。内容は本格推理ADV。
■シナリオ
現代を舞台としたハードボイルドストーリー。主人公・天城小次郎は私立探偵という設定で、もうひとりの主人公・宝条まりなの視点とザッピングしながら物語を進めていくことになる。初めはそれぞれ異なる場所から走り出すも、徐々に一点に集束するこのシナリオは「マルチサイトシステム」という名前を付けられ、本作の売りになっている。相手はひとつの多国籍国家というかなり大掛かりなスケールであるにも関わらずギリギリのリアリティを保っており、ゲームでありながら本格推理小説を読む感覚で楽しめる。元々18禁であることからもそれなりにダーティな描写が多く、それが一層ハードボイルドモノとしての魅力を引き出している。
■グラフィック
ゲームを趣味とするひとならばおそらく誰もが一度はチラ見程度でも目にしたことがあるであろう、この絵(というにはサンプルがわるいですね、すみません)。客観的にみておそらくもっとも有名なセガサターン移植版などは、一昔前どのゲームショップでもポップ付きで掲示されていたりした。
当時特有のデフォルメしないカッチリとしたキャラクタデザインが懐かしい。どうして現在(2009年)のPSPリメイク版はこんなことに……。
■キャラクタ
これもまた懐かしの前髪で隠れて目が見えない主人公。これはプレイヤがそのゲームの主人公に感情移入しやすいようにとの配慮で、いまでこそ普通にこっちみてる主人公が多いなかこの当時を象徴する定型のひとつであり、それと同時にどうにもいたたまれない気分にさせられる配慮である。■システム
上記した「マルチサイトシステム」が最大の特徴で、ほかには「ポートピア連続殺人事件」「ファミコン探偵倶楽部」等でおなじみ「コマンド総当り」式の選択肢が若干かったるい印象。今回ぼくがプレイしたのがリメイク版であることも起因してか、ユーザビリティは概ね良好。
■総評
「YU-NO」でその名が知られる菅野ひろゆき(剣乃ゆきひろ)が総合プロデュースした作品だけあって細部までとてもよく作りこまれており、リリースから10年以上経ったいまプレイしてもまったく古臭さを感じさせない。この「EVE」シリーズは以降も次々と続編が製作される人気シリーズとなるが、そのなかにおいてもいまだこの「EVE burst error」が不動の人気を博している。逆にいうと菅野ひろゆきが開発から離れた本作以後のタイトルがどんどん凡作になっている傾向にあるのだが、とはいえやはりこのburst errorの完成度は異常。豪華客船「トリスタン号」を舞台にドンパチする物語のスケール感も洋画顔負けであり、そこに確固たる知識に裏付けられた本格ミステリさながらのシナリオが乗っているのだからおもしろくないはずがない。
近年の作品「ファントム -PHANTOM OF INFERNO-」(NitroPlus)あたりがお好きならハマること請け合いである。
(C) C's ware 2003