イタリア:ピザの「付け」販売復活 「食べたい時に」

毎日新聞 2013年05月13日 11時26分(最終更新 05月13日 12時10分)

イタリア南部ナポリで、経済危機対策としてピザの付け販売を始めたジノ・ソルビロさん。右は付け販売の告知ポスター
イタリア南部ナポリで、経済危機対策としてピザの付け販売を始めたジノ・ソルビロさん。右は付け販売の告知ポスター

 財政再建下のイタリアで、長引く不景気によって冷え込む庶民の懐に配慮し、南部の主要都市ナポリのピザ店が「付け」での販売を始めた。手持ちのカネがなくても「食べたい時に食べてもらう」のが狙い。困窮した男が家族に食べさせるために4枚のピザを盗んだ最近の拳銃強盗事件がきっかけ。新聞で事件を知ったピザ店主が「何かできることはないか」と、第二次世界大戦前後にあった「ピザの8日後払い」と呼ばれる付けの慣習を復活させた。【ナポリで福島良典】

 仕掛け人は、ナポリ下町のトリビュナリ通りで老舗ピザ店「ソルビロ」を営む3代目店主のジノ・ソルビロさん(38)。「男が宝石でなく、食べ物を盗んだのは赤貧の証しだ。うちは昔から『庶民のためのピザ店』。地元住民に対して『ここに来れば食べられるから、ばかなまねはするな』というメッセージを送りたかった」と話す。

 行列の絶えない店頭や、満席の店内に「付け」告知のポスターが張られている。付けで販売しているのは、トマトソースにモッツァレラチーズとバジルがのったマルゲリータ(1枚3・3ユーロ=約440円)と、トマトソースとニンニクのマリナーラ(同3ユーロ=約400円)の2種の「持ち帰り」。付けがきくのは顔見知りの地元住民に限られ、1人あたり1度に1枚だけだ。

 付け販売を始めた4月初めから5月初めまでの1カ月間で1日あたり1〜6人、延べ59人が利用した。帳簿には客の名前とピザの種類が記され、支払いを済ませた客の名前は赤線で消されている。「もっと利用者は多いかと思ったが、付けにするのが恥ずかしい人もいるのかもしれない」とジノさん。

 ナポリでは1930〜60年代、貧困者向けに「揚げピザ」を付けで売る「8日後払い」の慣習があった。2代目店主のサルバトーレさん(64)は「厳しい時代だったから」と振り返る。ビットリオ・デ・シーカ監督の映画「ナポリの黄金」(54年)でも女優ソフィア・ローレン演じるピザの売り子が「8日後払いだよ」と客寄せの口上を述べる場面がある。

 イタリアは戦後復興・高度成長を経て先進国の仲間入りをしたが、経済構造は依然として工業地帯を抱える北部が農業中心の南部をけん引する「北高南低」型だ。モンティ前政権下で進められた財政緊縮策に伴う景気後退や失業増の影響も南部で色濃い。ジノさんは「若者にやる気を出し、起業家精神を育んでもらいたい」とピザ教室を開いている。

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