EVE burst error(C's ware) 
栄光のシーズウェア

 

あらすじ?展開?
かつて敏腕を誇った名探偵「天城小次郎」。
将来を約束されながらもかつての探偵事務所を辞職し、私立探偵として茨の道を歩む日々。しかし仕事が一向に入らず港の倉庫に違法に住み着いて貧乏に甘んじる有様は、ルンペン探偵と罵られるまでに落ちぶれた。そんな苦渋の日々を過ごすうち、あるとき絵画捜索の依頼が舞い込んだのである。今いちいぶかしいその依頼だったが、高額な報酬につられて彼はその辣腕振りを発揮して依頼を解決させる。釈然としないものを残して・・・。
そして同じ頃・・・。
国家機関のエージェント「法条まりな」。成功率99%を誇る彼女に与えられた任務は一人の少女の護衛であった。なんの変哲も無いように見えるその少女「御堂真弥子」をプライドに賭けて、そして人として守り抜くまりな。心をあまり開かない真弥子だが、次第に二人は心を通わせて行った。

小次郎とまりな。一見何の関係もない二人。しかしプリンという少女が小次郎の元に突如現れたときから。かつての絵画捜索の依頼解決から少しして猟奇殺人が起こり、それが迷宮入りとなって収集のつかないものとなった時。そしてまりなと真弥子がそこに関係してきた時、事件は国家的陰謀を含んだ悲劇となる。
エルディアという小国の存在。真弥子とプリン。そして小次郎とまりな・・・。
迷走の末、彼女達がたどり着いた真相は、仕組まれた陰謀と、救えない悲劇の結末であった。

運命に弄ばれた二人の少女の悲しみと、彼女達を幸せに導くことの出来なかった小次郎とまりなの悲痛な心の叫びが空しく漂うのみ・・・。
 
感想?批評? 

EVEシリーズにおいて名作中の名作。
シーズウェアの全盛期を物語る作品が色あせることなく歴史に堂々と光り輝く。
その栄えある名作「EVE burst error」は、私にとってはリーフで言うところの
「痕」レベルである、と思う。
マルチサイトシステムの存在を不動のものとさせたこの作品は、あらゆる面において逸脱している。脱帽とはまさにこの作品のためにあると言ってもまあ過言ではないだろう。それほどまでに印象に残った作品ということである。

CD複数枚に渡る長ったらしい物語は、駄作ならば一瞬にして積みゲー置き場へ直行であるが、EVEはやはりそれらと一線を画す。
長くても決してプレイヤーを飽きさせることは無い。
蛇足シナリオというものが存在しないからである。
というのもEVEのシナリオが基本的に分岐なしの一本道であり、エンディングも一つだけだから、それだけ一つの物語に心血を注いだという裏返しなのかもしれない。だからたとえ長くてもクリアできるはずだ。
そしてマルチサイトシステムの巧妙なる所も大いにその理由である。
小次郎ルートで緊張感と次への展開を期待しながらも事件は煮詰まり悶々としている。そこで視点を変えてまりなルートへ突入。プレイヤーの熱中度を損なうことなく別サイトへチェンジして更にゲームへ熱中させる。この
興奮を保ちながらの切り替えはマルチサイトシステムの最大の功績であり、EVEはそのタイミングにおいて他ゲームのマルチサイトが足元に及ばない程に絶妙だからこそその存在を世に知らしめることとなったのであろう。
プレイヤーの集中力を切らすことなく中だるみも無く、最後までプレイヤーを導くこと。この困難な仕事を完璧に遂行したEVE burst errorだからこそ、「他のゲームとは一味違うぜ」と自信を持って公言できるのであった。

もちろんそんな名作の魅力は完成度の高いマルチサイトシステムに止まらない。
小次郎とまりな。この二人の
個性溢れる立ち回りぶりも極度のEVE信者を増殖させる一因となっているはずである。
猟奇殺人を核としたストーリーは
「サイコホラー」と呼ばれているようだが、その悲惨な物語を見届ける二人の主人公の言動全てがプレイヤーの好感を誘うのである。
とりあえず、彼らが時折見せる
ギャグセンスに卓越したものを感じてしまうだろう。それは私だけではないはず。シリアスの中に潜む漫才は、きっと我々の笑いのツボを刺激してくれるはずである、何故か・・・。たまに「くくく・・・」と腹を抱えるが良い。
そしてそんな笑いありの場面を各所に散らばせながらも次第に高まっていく緊張感と興奮。そこでふざけた態度を一変して、本来有する辣腕ぶりを発揮する小次郎とまりながまたにくいほど様になっているのであった。仕事の出来る人間とは基本的に人々の羨望を集めるに足る要素なので、それを遺憾なく発揮させる二人がまた格好良く思えて仕方が無いという仕組みになるに違いない。
そのように面白く、楽しく、しかしやるときはやる小次郎、まりな。真弥子やプリシアを守ろうとする彼らは
仕事に忠実に熱心で。それは自分のプライドに賭けて。しかし根底には人としての優しさ、即ち愛を以って臨む。これがキャラクターの魅力だ。
そしてこんな人間味に溢れた行動を取る彼らに魅了されたからこそ、最後の悲しい結末を迎えたとき小次郎と共に悔しさがこみ上げ、まりなと共に涙が流れてしまう。そしてそこで気づくのだ。EVE burst errorのストーリーを見届けたのは、小次郎とまりなと、そして彼らの心とシンクロした、他でもない我々プレイヤー自身であったということに・・・。
登場人物の目となり耳となってプレイできるゲームを作ることがいかに困難で貴重であるか、EVEを良い見本とするのがいいだろう。
そして熱く、心優しく、時に楽しい二人の主人公は素敵な登場人物列伝に刻まれるのであった・・・。
この流れが即ちゲームにおける
CASTの重要性。忘れるなかれ。

まあ、このようにEVE burst errorとは、能力の高い二人が何気に受けた依頼から始まって、次第にその能力にふさわしいシチュエーションが与えられて行って、少しずつ壮大に展開していく。その中で
輝きを見せる二人の手腕、推理、行動に魅せられるということだ。
そこに緊迫するサウンドを絡ませサイコホラーの名に恥じない残虐性と陰謀を交えながら、解けない謎は少しずつその実体を見せる。マルチサイトシステムという画期的な手法を巧みに行使して。
そして事件が解決した時最後に涙して全力で感謝するが良い。
EVE burst errorが与えてくれた衝撃と感動に何度でも・・・。

C's wareの贈る名作は、こうして永久不滅のものとなった。
そして後に続くは「EVE」の続編を語る駄作たち・・・。

偉大なるかな、EVE burst error。
その時C's wareは全盛期。
だからこそ後に続く駄作たち。
EVEの名を語る駄作たちに、
気分は怒りでburst error。



長いエロゲーの歴史の中で、かつて名声を欲しいままにしたゲームが存在した・・・。
続編がたとえクソゲだとしても、そのときの感動はきっと忘れまい・・・・。






さわたり