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国際
【主張】飯島氏の訪朝 「拉致」の解決につなげよ
訪朝していた飯島勲内閣官房参与が帰国した。北朝鮮との詳しい会談内容は明らかになっていないが、拉致問題を中心に話し合われたとみられる。安倍晋三政権はこれを機に、膠着(こうちゃく)状態の拉致問題を打開し、成果につなげてほしい。
飯島氏は帰国後、菅義偉官房長官と会い、北の要人に、安倍首相の「自分の手で拉致問題を解決したい」との思いを伝えたことを報告した。全ての拉致被害者の帰国、真相究明、実行犯の引き渡しを要求し、「懸案の解決がない限り日本政府は動かない」とも伝えたとされる。
日朝の政府間接触は昨年11月の協議以来、半年ぶりだが、自民党政権にとっては、北が拉致被害者の再調査を約束した平成20年8月の協議以来、5年ぶりだ。
飯島氏は16年5月の小泉純一郎元首相の訪朝に首相秘書官として同行した。飯島氏の訪朝で、日本が拉致問題などで窓口を開けておくというメッセージは伝わったはずだ。北はまず、5年前の再調査の約束を履行すべきだ。
飯島氏の訪朝が米国に事前に連絡されなかったことから、米国のデービース北朝鮮担当特別代表が外務省の杉山晋輔アジア大洋州局長に不快感を示したとされる。
北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題に対処するには、日米韓の3カ国の強い連携が不可欠だ。5月初めに日本政府が米国で初めて開いた拉致問題シンポジウムでも、古屋圭司拉致問題担当相は、拉致問題解決には「米国の理解と支持が最も重要だ」と訴えた。
ただ拉致問題は、日本が主体的に動かない限り置き去りにされてしまう懸念もある。日本はこうした事情も含め、米側に丁寧に説明し、理解を求めるべきだ。
韓国は飯島氏の訪朝に対し、国際社会が緊密に協力すべき対北政策の「助けにならない」と反発している。日本と同じ拉致問題を抱える韓国との協力も大切だ。
今回、北朝鮮は飯島氏にナンバー2の金永南最高人民会議常任委員長を会わせ、その映像を公開した。現在、北の銀行は中国の銀行にも取引を停止され、四面楚歌(そか)に近い状況にある。日本との接近を国際社会にことさら印象づけようとする狙いも垣間見える。
北朝鮮の意図を慎重に見極め、国際社会の包囲網を崩さず、拉致、核、ミサイルを一体として解決する外交姿勢を貫くべきだ。
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