◆国会決議を守ることが「国益」
今会合は12日に内閣官房が発表した「日米協議の合意の概要」と、会合当日の午前に参議院農林水産委員会で決議された「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加に関する決議」をもとに、現在の交渉状況などについて議論された。
この参院農林水産委員会決議は、日本の農林水産物の重要品目については段階的な関税撤廃も認めない、ISD条項には合意しない、聖域の確保ができないと判断した場合は脱退も辞さない、など8項目からなっている。
森山裕会長は冒頭、「(20日からの)APEC貿易担当者会合の前に、立法府としてTPPに対する考え方を決議できたのは大変意義深い。この決議を守って、交渉に向かってほしい」と決議を評価した。
他の議員からも決議を尊重するよう、改めて要望された。
◆米国からの要求丸飲み 日本からの条件提示は?
一方、日米協議の合意については、不安や憤りの意見が多数出された。
その多くは、日本のメリット、国益を疑問視する意見だった。
複数の議員から、「最も攻めるべきものだったはずの自動車を、入り口手前でもう譲ってしまった。これで有利な交渉を進められるのか」、「切り札を早々に切ってしまった。さらなるカードを持っているのか」などと、今後の交渉の進め方をどうするか、事前協議で日本のメリットをどう確保したのか、といった質問が相次いだ。
これに対し、外務省や内閣官房の担当者は、「(自動車は)米国内の情勢を理解してほしいという、米国の懸念を踏まえて協議した結果、このようになった。しかし、将来的に関税撤廃するという話になっており、収穫はある」と説明。これに対し「将来的にというが、それは10年以上先の話。メリットとは言えない。納得できない」などと追及されると、「(譲歩の内容や交渉の進め方について)バランス上いかがなものか、というご意見はごもっともだと思う」などと回答した。
また、「米国の要求をただ認めただけ。日本側から何か条件を提示したのか」との質問に対しては、「協議中のことなので、回答は差し控えたい」などと答えた。
司会を務めた同会事務局長の山田俊男参議院議員は、こうした担当者の答弁に対して、「米国は事前協議で非関税措置の(問題にしたい)内容をかなり詳しく出してきているのではないか。そうでなければ、会議に出席していない甘利担当相が(断定的な)答弁をできるはずがない。交渉事は機密と言うが、ある程度情報公開しなければ議論ができない」と注文をつけた。
このほかの意見では「農産物の聖域確保については、センシティビティという言葉で簡単に済まされてしまった。そもそも、センシティビティなどという説明を要するような言葉では一般国民に説明したことにならない」、「米国は国民皆保険には注文をつけてない、というが混合診療を認めれば結果的に制度の崩壊につながる。交渉担当者には、こうした危機意識が足りないのではないか」などが出された。
(写真)
あいさつする山田俊男議員
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