JR東海が十五日、今月末から不通区間の復旧工事に着手すると発表したJR名松線(松阪−伊勢奥津、四三・五キロ)。全線再開の時期は二〇一五度中と示され、JRとの協定に基づいて関連工事を先行させている県や津市のほか、沿線住民からは歓迎の声が挙がった。
名松線は〇九年秋の台風18号による土砂災害で、山間部にある家城−伊勢奥津間の一七・七キロが不通となった。JR東海は一時廃線の構えを見せたが、存続を求める地元要望により、県や津市が周辺整備と災害対策を担うことを条件に復旧を決めた。
線路周辺での土砂災害の再発を防ぐため、県と津市は一一年度から五年がかりで治山事業や排水路整備を実施。こうした事業が順調に進んだため、JR東海は三十日から復旧工事を開始し、線路上の土砂を撤去した上で、線路や電気設備を再建する。工事費用は総額四億六千万円を見込んでいる。
津市の前葉泰幸市長は、復旧工事の着手に「再開に向けて、大きく一歩を踏み出すことができた。今後は市と県、JRの三者がそれぞれの責任を果たし、一日も早い復旧を目指し全力を挙げる」とコメントした。
存続を求める署名活動を展開した「JR名松線の全線復旧を求める会」で、初代会長を務めた結城実さん(80)=津市美杉上多気=は「不通の影響は生活だけでなく、観光にも及んでおり、運行再開の見通しが立ったのはうれしい」と話した。
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