衆院憲法審査会は16日、天皇、国務大臣、国会議員と公務員に憲法尊重擁護義務を課した99条について議論した。自民党は尊重義務の対象を「国民」すべてに広げるよう主張した。ほかの6党は現行条文を維持すべきだとの考えを示した。
自民党は憲法改正草案で「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」と明記した。国会議員や国務大臣、公務員は「擁護義務を負う」とした。審査会で同党の保岡興治氏は「憲法制定権者である国民も憲法を尊重するのは当然だ」と主張。船田元氏は「国民の行為規範を一定限度、明記することも憲法の一つの役割だ」と語った。
だが、みんなの党の小池政就氏は「国民の尊重擁護義務は倫理的責務にとどまる。法的義務として規定することはない」と現行条文の維持を主張した。生活の党の鈴木克昌氏も「国家権力をしばり、国民の権利を保障する立憲主義の観点から、国民が対象とされないのは当然」と指摘した。
改憲に慎重な議員からは、安倍晋三首相が憲法改正を訴えること自体が99条の憲法尊重擁護義務に反するとの声が上がった。
共産党の笠井亮氏は「憲法尊重擁護義務を負う首相が『改憲するんだ』と宣言して、(6年前の)参院選で厳しい審判を受けたことを肝に銘じる必要がある」と牽制(けんせい)した。民主党の辻元清美氏も「憲法を最も守らなければいけない首相が特定の条項について改正を推進することを平気で言う。為政者が(憲法尊重擁護義務を)理解していない結果、憲法改正を提案していくことは立憲主義の危機」と批判した。
これに対し、自民党の土屋正忠氏は「職務権限を行使する際に憲法違反をしてはならないという規定であって、政治家として意見を開陳するのは当然」と反論した。
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朝日新聞官邸クラブ