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2010-02-10

なぜ『とある科学の超電磁砲』は不気味なのか/ノーテンキな明るさの背後に潜む「どす黒い未来予想図」

| 12:15 | なぜ『とある科学の超電磁砲』は不気味なのか/ノーテンキな明るさの背後に潜む「どす黒い未来予想図」を含むブックマーク なぜ『とある科学の超電磁砲』は不気味なのか/ノーテンキな明るさの背後に潜む「どす黒い未来予想図」のブックマークコメント








現在、絶賛放送中の深夜アニメ『とある科学の超電磁砲』

東京の西部に作られた学生と教師だけの街「学園都市」を舞台に、超能力を持った中学生たちが右往左往するお話だ。登場する超能力者たちは、放電、瞬間移動、重力操作などやりたい放題で、「科学考証? こまけえこたぁいいんだよ」という大らかなノリのSF作品である。

登場人物たちのデザインが可愛らしいこともあり、たいへんな人気を集めている。



で、その学園都市の治安が悪すぎるという疑問がある。

http://www.syu-ta.com/blog/2010/01/17/061659.shtml



学生ばかりの街だから、当然のように落ちこぼれがいる。

そして落ちこぼれたちが不良となる。そこまではいい。

しかし、落ちこぼれたちの凶悪っぷりがヤバいのだ。

第一話から銀行強盗をするし、女の子が夜道を歩けば確実に襲われる。傷害なんて当たり前、果ては拳銃さえ手に入れている始末。警察がいない街なので、治安の維持に奔走するのは教師や学生の有志だ。

凶漢と化した落ちこぼれどもを、主人公たちがバッタバッタとなぎ払う――そのカタルシスを楽しむストーリーだ。


ここに疑問がある。

学園都市には、選ばれた人間しか住むことができない。超能力の才覚があると認められた者しか、学園都市内の学校に通うことはできない。超能力者の体質を持つ子供たちが、日本全国から集められている。

いわば「エリート集団」だ。

にも関わらず「能力がない」という判定を下されただけで、あそこまでグレるものなのだろうか。一足飛びに凶悪化しすぎではないのか。

で、少し妄想してみた。



 ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆



あの作品に描かれているのは、ちょっと先の未来だ。

はてな界隈の通説に従えば、少子高齢化が進み、格差社会はもはや是正しようの無い状態まで進んでいるはずだ。地方都市は疲弊しきっており、もはや仕事も希望もない。有能な人材・有力な企業は次々に国外へと流出していく。日本はゆっくりと滅びようとしている。

もっとも強い者が生き残るのではない、もっとも適応力のあるものが生き残る。

しかし時代の流れにこの国は対応できなかった。それでもはてな界隈の言説に従えば、この国を動かしている老人たちは「技術立国」の栄光を忘れることが出来ないだろう。科学の力でふたたび美しい日本を取り戻すために、技術開発・科学研究の拠点を都心のすぐそばに作り上げた。それが、学園都市だ。つくばの立場が無い。



「学園都市」が超能力開発に力を入れているのは当然だ。かつてIT革命の際に、日本は欧米の後塵を喫した。シリコンバレーに打ち勝つことが出来なかった。だが間違いなく、超能力の存在は科学技術の新たなブレイクスルーをもたらす。電子産業での敗北と同じ轍を踏まぬため、日本は超能力開発を急いだ。

つまり学園都市そのものが、急ごしらえの街なのだ。

そのため、しくみの部分に様々な不備がある。国家予算は科学技術の研究へと注がれており、その他の行政サービスにはあまり金が回ってこない。警察がいないのも、これで説明がつく。犯罪に巻き込まれるのは自己責任なので、それが嫌なら自分たちで身を守るべき――、これが政府の見解なのだ。これにより学生・教師の有志による自衛集団が生まれた。

超能力者の体質を持っているからといって、全員が超能力を発揮できるわけではない。落ちこぼれが生じることは「学園都市」の構想段階で明らかだったはずだ。

しかし日本政府は、その落ちこぼれが凶漢化することまでは考えていなかった。なにしろ学園都市に集まるのは選りすぐりのエリートだ。優等生ばかりの進学校では、暴力事件が起こりづらい。それと同様に、学園都市でも極端に凶悪な不良は生じえないだろう――。政府の上層部は高学歴・名門家系のおぼっちゃんだ。殴り合いの喧嘩なんてしたことのない彼らは、考えが甘かった。



学園都市には、全国から子供たちが集められている。

つまり、疲弊した地方都市からだ。

子供たちには帰る場所がない。出身地に戻っても仕事はなく、将来に望みはない。『とある科学の超電磁砲』の時代背景は、現在よりもさらに貧富の差が激しくなった世界だ。所得の固定化が進み、貧乏人の子供は貧乏人になるしかない。貧困から脱出するには、「体質がある」と認められ、学園都市へ行くしかない。

学園都市へ行くこと――、それはあの時代の子供たちに残された、唯一の希望だ。

そして希望が大きいぶん、「能力がない」と明らかになったときの絶望は深い。まして、思春期の子供たちだ。超能力なんて無関係に、自分とは何者なのか、何のために生きているのかと思い悩む。その繊細な時期には、あまりにも重たい絶望なのではなかろうか。「お前に明るい未来はない」「田舎のシャッター街で暮らすのだ」「アマゾンやグーグルの経営する農地で、農奴として働く一生なのだ」そういう暗い未来像を押し付けられ、子供たちはグレる。手がつけられないほど凶悪化する。

学生寮を抜け出し、徒党を組むようになる。


ここで思い出してほしいのは、しくみの部分に様々な不備があることだ。

警察が無いことをはじめ、学園都市の行政サービスには行き届かない点が多々ある。そもそも「学生」という身分は、親の庇護のもとにあって当たり前だ。少なくとも政府の上層部はそう考えるだろう。当然、セーフティネット的な仕組みはない。普通の学生生活からドロップアウトした時点で、子供たちは生活の手段を失う。奨学金的な制度は受けられなくなるし、寝泊まりする場所にも困るだろう。親からの仕送りなんて、そもそも期待できない。仕送りができるような「中流」の家庭など、あの時代の日本では絶滅危惧種なのだから。



で、行き着く先は、銀行強盗や違法な銃器の取引。

治安の悪さは、まったく疑問を抱くに値しない。あの街の構造的欠陥によるものだ。考えの足りない大人たちのもたらした当然の帰結だ。はてな界隈っぽく考えれば。



構造的な欠陥がある以上、それを埋めなければ解決できない。

いくら犯罪者を捕まえても、新たな犯罪者が生まれるだけだ。


つまり学園都市に必要なのは、相互扶助の仕組みだ。

夜回り先生」のように、ドロップアウトした子供たちの悩みを受け止め、心の面からケアをする人物が必要だろう。また匿名で利用できるシェルターのような場所が必要だ。落ちこぼれとなった学生を一時的に受け入れ、精神的に立ち直るまでケアする施設だ。「ドロップアウト→不良化→違法行為」という流れを断ち切る必要がある……



……この施設をネタに、同人小説でも書いてみようかな。

※書いてみた↓↓

http://d.hatena.ne.jp/Rootport/20100217/1266420246



 ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


参考)

「学園都市は養鶏場、御坂御琴は極上ブロイラー」-シロクマの屑籠

http://d.hatena.ne.jp/p_shirokuma/20100209/p1


とある科学の超電磁砲 第9話感想・考察個人的まとめ -WebLab.ota

http://d.hatena.ne.jp/n_euler666/20091201/1259684567


『バカテス』の遊び、『超電磁砲』の躓き -EPISODE ZERO

http://d.hatena.ne.jp/episode_zero/20100207/p1


『バカテス』の世界における「負の要素」の排除と「遊び」の要素 –流し斬りが完全に入ったのに

http://d.hatena.ne.jp/str017/20100209





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aa 2010/02/10 20:33 WEBプログラムなんかやって一握りの企業の人柱になってたら一人勝ちは続き格差はずっと広がるよ

GM_028GM_028 2010/02/11 14:55 むしろ、『逆』なんじゃないでしょうか?
超能力者を一纏めに隔離して監視し、外部に出さないために『学園都市』があると。

超能力者といのは、客観的にみれば突然変異体(=ミュータント)です。
一般社会にそうした存在を野放しにしてしまっては、必ず何らかの問題が発生するでしょう。
自身の超能力を悪用して犯罪に走る者や、超能力者に対する差別も考えられます。
しかも、超能力を行使しているのは何故か精神未発達な未成年ばかり(?のように思える)。
これではまるでマグニートのいないブラザーフッドか、メガトロンのいないデストロン軍団です。
統率する人物がいないため、自身の能力をひたすら好き勝手に行使してしまいます。

こんなことを一般社会でされてしまっては、たまったものではない。
そこで日本政府のミュータント省(?)はそうした超能力者たちを隔離し、
一箇所で監視できるシステムを作った。それが、『学園都市』だったというわけです。
しかし、その学園都市を運用する資金はどこから調達すればいいのか?
そんなのは決まっています。
学園都市に集めてきた超能力者を利用した独自の技術を
一般社会に売り込んで、還元すればよいのです。


・・・・・・・これが『学園都市』の隠された全貌でした、何て言ったら、穴が多すぎるかなぁ?

 2010/02/22 00:17 長い

asdasd 2010/02/24 22:33 GM_028さんの意見もわかりますけれど、そもそも学園都市の生徒は
「超能力を使える可能性がある人間」であって、学園都市がなければ
超能力を使うことは出来ません。学園都市で「開発」をうけて、
はじめて超能力を使えるのです。だから、
「自身の超能力を悪用して犯罪に走る者や、超能力者に対する差別」
というのは普通ありえません。
ぼくは管理人さんの意見で正しいと思いますよ。


※「開発」を受けずに能力を使えるひとも世界で五十人ぐらいいるらしいです。
  詳しくは「とある魔術の禁書目録」のほうで。
  こっちには学園都市を実質的に作った(国の考えはおいといて)
  の陰謀的なものも書かれているので考察にあきたらどうぞ。

camelcamel 2010/09/03 21:37 あの世界で一番の巨悪をなすのは決まってオトナです
子供の人権を無視し兵器転用したりクローン作って殺したりやりたい放題です
主人公たちの日常はなぜかそんなろくでもない体制側に立って
カツアゲするような小悪党の不良を懲らしめる毎日です

原作がヒットしたのはこれを買っている
現代の子供たちの目線に忠実だったからなんでしょうね
カツアゲする不良は嫌い、社会の巨悪はいつだって大人たち
でもそんな社会を転覆させる気はサラサラ無い

こういう子供の狭い世界観、社会性の無さに媚びる創作は感心しません
作者は意図したわけではないでしょうけど

tappyontappyon 2010/10/16 03:16 >でもそんな社会を転覆させる気はサラサラ無い

>こういう子供の狭い世界観、社会性の無さに媚びる創作は感心しません
社会を転覆する力は彼らにはありません
それは子供も大人も同じです
転覆させるという考え方に社会性を感じることは出来ません