ゲームで感動したことはありますか? y。(どっかで聞いた事が……)
「DESIRE」に超感動した私は、この作品の存在を知り、友人から借りたのでした(その後、自分で買った)。ちなみに、このレビューはSS版のレビューです。しかし、WIN版と、ほとんど変わらないそうなので、WIN版の人にも参考になると思います。内容は、コマンド総当たり形式のアドベンチャーで、フルボイスです。
「めちゃくちゃ、おもしれえじゃねえかぁぁぁぁぁぁ」、こんなにも、ゲームにのめり込んだのは久しぶりでした。なぜなら、決して短くはないこのゲームを、3日で終わらせたのだから……。中毒性があるんですね、このゲーム。テンポもよいし。ってゆうか買ってください。ホントに填まります。私などは4回もクリアしましたよ。飽きっぽいこの私がですよ……。これ以上のアドベンチャーを私は知らないです。他の同様の作品が屁に見えるほどです。
キャラクター。
濃い。非常に濃いです。物語の長さからいうと、登場人物が少ないのですが、一人一人の人物描写が良い、良すぎます。キャラ一人一人のエピソードが、膨大なテキストによりあらわされています。そう、キャラ全員に膨大な台詞があるのです。ホントにすごいですよ、このキャラの描き方は……。
主人公。二人います。どっちとも非常に濃い。説明したいので説明します。
まずは男。めちゃめちゃ、頭の切れる奴。だけども、ある事件により、ルンペン同様に……。この辺は特に珍しい設定というわけではありません。しかーし、こいつのとる行動がひじょーに面白い。ときには、ゲームの枠を壊すような行動をしたり、一般人なのに、一般人ばなれした行動をしたりと、ホントにバラエティ豊かなんですよ。個性が強い。
そして、もう一人の方です。こいつの個性も強いです。もう一人の主人公とかなり似ているのですが、それとの差別化はきちんとされています。こっちの方が残酷というか、非情なんですね、良い意味でも悪い意味でも。
その他の、キャラも非情に濃い。なんかこればっかりなんですが、全員濃いのですよ。なぜ、こうもいいきれるのかと言うと、このゲームの場合、一人一人の台詞量が普通のゲームの倍以上あるのですよ。こんなにも台詞量が多いとですね、キャラとキャラとの相互関係などはもちろんのこと、キャラの癖やら、ちょっとした過去の話まで、描くことができるのですよ。これが、すごい。ドラマ性が高いのですね。それと、メインキャラに頭のいい奴が多いんですよ。作品のテーマの中に政治なんていうのもあるのですが、それを説明するときに説得力がかなりあるんです。それ以外にも見ていて、飽きないんですね。この作品を創った剣乃ひろゆき(現・管野ひろゆき)氏は「ゲーム制作はユーザーとの知恵比べですから」、って後に言っているのですが、その意味がとてもよくわかります。なんか、ストーリーの説明っぽくなってきたので、次に行きましょう(笑)。
ってなわけで、ストーリーです。
現代の日本が舞台になっているアドベンチャーです。
とにかく、よく出来ています。文章量が無茶苦茶多い。まず、驚いたのは、一番初めのイベント。本題に入るまで何分かかったか、とにかく、よく会話するんですね。こう、何でもない事なんかを、べらべらといつまでも会話するんです。それが、非常に面白い。ストーリーの本筋とは、ほとんど関係のないことなのですが、キャラを描くという意味や、感情移入を高めたりと、とにかくよく出来ています。
アドベンチャーゲームでは、ある程度先が読めてしまうというか、パターン化されているっていう傾向が強いのですが、この作品は展開が読めない、読めない。先が読めずに、あっ、と驚く展開の連続です。アドベンチャーゲームでは、いわゆる、「山場」となる個所が大体、最後の方に一個所ある程度なのですが、この作品では、「山場」と言える個所が数箇所もあります。とにかく、いい意味で、プレイヤーを裏切ってくれます。
それと、この作品をプレイしていて思うのは、「頭のいい人間が、創っている」、っていうことです。もちろん、頭のいい人間とは剣乃(現・管野)氏のことです。使われているネタがすごく、高度なんですよ。私のような、凡人にはわからないようなネタが、どんどんでてくるのですね。政治だとか、経済だとか、それ以外にも、やたらと難しい言葉がでてきたり……。キャラの思考も非常に論理的で、やたらと弁の立つ奴が多かったり……。しかしですね、私はそれを苦とは思わなかったです。難しい事が、どんどん出てくるのですが、見ていて楽しくなってくるんです。
古い体質を持つ国があり、それを変えようとする人物や反対しようとする人物。それらが起こすエピソードが一体どのようなものなのか? また、それによって何が起こるのか? こういうのを作品にだすためには、高度な知識が要求されるじゃないですか? しかも、プレイしていて楽しくなければならない。それを非常にうまくだしているんですね、この作品は。
しかし、これは、この作品のテーマの一つでしかありません。この作品の本質はいかにキャラを濃く描くか、です。今まで書いたのは、それを表現する手段でしかありません。実はこの作品「ある一人のキャラを描く」、という作品です。そのキャラの気持ち、考え方などを表現し、ENDINGへと導いているのです。それに、導くために用いられた手段が、政治などの高度なネタです。そのシナリオの本筋の部分に、おもしろ可笑しく、時には悲しくなるように、肉付けを施しているわけです。それらが、他のキャラについてであったり、過去のエピソードであったりするわけです。これが、すごい。
キャラクターをこんなにも、濃く描いている作品はありません。ストーリーによって、明らかになっていくキャラの素性や、事件の真実。もちろん、ストーリーも濃い。ストーリーも、キャラも濃い作品なんてそうはないですよ。
あと、要所要所で笑かしてくれるのも、忘れてはいけない所です。作品のシナリオ自体はどちらかと言えば、暗い、重い感じの漂うところですが、キャラの性格性(面白い奴が多い)からや、イベントででてくるちょっとしたネタでゲラゲラ笑わせてくれます。その辺もこの作品の良いところです。他の重たい作品に足りないのは、こういうところだと思います。EVAがヒットしたのも、要所に盛り込まれたギャグがあったからだ(もちろん、それ以外の要素もありますよ)と、私自身思ってますし。
グラフィックについて。
絵柄的には結構好きな絵柄でした。
奇麗です。アニメーションします。アニメーションといっても、3〜5秒程度の短いものです。全てのアニメーションの時間を足しても、たいした時間はありませんが、動画の奇麗さはなかなかのもです。結構、良くできていますよ。まあ、サターンのソフトのアニメーションってどの作品も、出来がいいのですけどね。要所、要所のちょっとしたシーンで使われるっていう感じです。
また、この手の喋るゲームでは、キャラが口パクするのが、大体なのですが、この作品では口パクしません。グラフィックの枚数も少な目です。しかし、この作品はストーリーとキャラでもっているので、この辺のマイナスはこの際考えないようにしましょう。
曲数の多い音楽。
曲数がホントに多いのですよ、この作品。40曲以上あります。これは、アドベンチャーというジャンルからすれば、かなり多い方でしょう。曲的には、いい曲が数曲、あとは普通っていう感じでした。大体の曲が、雰囲気を壊さない程度の(まあ、音声を壊さないっていうのも)曲に仕上がっています。とはいっても、決して悪い曲というわけではありません。場の雰囲気を盛り上げる効果などは、十分持っています。クラシック調の飽きない曲が多いのです。
私的には、端末ハッキングのシーンの曲が1番のお気に入りです。あの曲は、場の盛り上げ方、迫りくる緊張感、ドキドキ感、どれを取っても1級品です。電脳的なイメージもしますし。
音声ぃぃぃぃぃぃ。
ストーリー、キャラクターの次にすごいのが音声です。膨大なテキストがありますが、9割近くに音声があります。ってゆうか、2人の主人公以外のメインキャラはフルボイスです。よくこんだけの声が入ったなあ、と感心してしまいました。
演技力も素晴らしい。それに、聞いた事のある声の多いこと、多いこと。つまりは声優が、超一流の方々で埋め尽くされているのですよ。感情移入度がアップしますね、これは。「まてー、ルパーン」の銭形声(納谷吾朗さん)や「目標は完全に沈黙しました」のシゲル声(子安武人さん)やら、すごいっすよ、これ。
とかく、驚いたのは上記のように、「これだけのテキスト量を(ほぼ)全部しゃべらすか?」、ってことです。よく3枚組みで入りましたよ。
おまけディスク付き。
そうそう。SS版のには(WIN版のは良く知らない)4枚目の「EVE burst error making DISK」っていうのが、あるんですよ。
こいつもなかなか、楽しめる出来になってます。声優さんのインタビューなんか動画ですからね(荒いけど)。そのムービーの量もかなりあります。60分以上はあるのではないでしょうか? (100分くらいかも)
それ以外にも、ミュージックモードやら、開発秘話(4000字くらい?)や幻の「没テレビCM」が見れたりなど、充実した作りになっていました。
Hシーン。
まあ、セガサターンの18歳推奨のゲームです。ウインドウズの18禁などと、比べてはいけません。ってゆうか無くても、ぜんぜんオッケーです。いや、マジで。
でも、元々は18禁のパソコンゲーからの異色です。Hシーンが無くなるからには、それなりのシナリオ修正をしなければなりません。この作品の場合、それがうまくいっておらず、前後関係のおかしな個所が1個所ありました。うーん、おしいです。
このシステムを真似ているゲームって、滅茶苦茶多いですよね。
この作品で用いられている、マルチサイトシステムっていうのが、このゲーム最大の特色です。このシステムもかなり面白い。
直接的には、つながりの無い2人の視点から、ストーリーを見るっていうシステムなのですが、これかなり良く練られていますよ。2人の視点からストーリーを見るっていうのは、1人の視点のときよりの、説得力が高くなるのですよ。喩えば、ドラマとかで殺人事件の犯人はなんで探偵に、あんなにぺらぺらと自白するのだろう? って思いますよね? 無理に台詞を言わせているっていう……。2人の視点からだと、そういったのも受け止めやすいんです。台詞に違和感ほとんどないんですね。
主人公によって、相手のキャラの口調が変わるっていうのも面白いですし……。片方の主人公が行動すると、もう一方の主人公のシナリオが先に進めるようになるっていうのも面白いです。
このゲームの後に、同じようなシステムのゲームが結構出たので、そういうのも、このシステムが素晴らしいということを物語っていると思います。
あとシナリオ回想のシステムがついているのはGOOD。今では、普通になりましたが、この当時この機能がついているゲームは少なかったですから。
ごく普通のコマンド総当たり形式のゲームですが、ただのAVGではないっていう感じです。
総合判断。
これ以上のアドベンチャーゲームを見た事はありません。分岐がない、難易度が低いなどのマイナス面もありますが、セガサターンの最高傑作です。
ただ、このゲームの98版を作った剣乃(管野)氏の名前が、スタッフロールに無いのはなぜなのでしょう? たしかに、今はこの会社にはいませんし、SS版の移植にも携わっていないと思うのですが、全く名前が載らないというのもどうかなって思いました。
セガサターンを持っていて、このゲームをしていない方は今すぐプレイしましょう、ってな具合です。