行政書士と弁護士等
◆ 行政書士と弁護士
行政書士と弁護士は法律家として相反する立場の業務を主として担当する場合があります。
・ 刑事事件においては、行政書士は告訴状の作成を通じて被害者の味方をします。弁護士は、加害者すなわち被告人の弁護、味方をします。
弁護士も犯罪被害者の支援のための業務を行っているとの反論もあるようですが、それはあくまでも法律家の社会貢献としての業務で、弁護士の本来的主たる業務ではありません。刑事事件における弁護士の責務は被告人(加害者)の人権擁護が中心です。
別の観点から、刑事事件における弁護士の報酬は被害者の支援から多くを得ているのでしょうか。否、殆どは加害者の弁護をして得ていると考えます。また、そうすることがこの世に弁護士が存在する意義でもあると考えます。国家権力から加害者の人権を守る事こそ弁護士の刑事における一番の使命だからです。
・平成10年に、桶川事件がありました。ストーカーの被害者が警察に告訴をしたのですが受理されず、その後、被害者はストーカーに殺害されました。もし、告訴状が受理されていたら被害者は殺害されなかったのではと考えるのです。告訴状の作成は明治時代から現在まで敷居の低い行政書士が取り扱ってきております。そのことがもっと広く社会に知れ渡っていたらと思うのです。職域争いではなく、桶川事件を二度と起こさない為にも、これからも警察署に対する告訴状の作成を行政書士としての責任として普及し受託したいと考えます。
・ 民事事件においては、行政書士は原則として紛争に関わることなく予防法務を専門とします。弁護士は、予防法務も行いますが主として裁判等において紛争処理を中心とします。また、争訟性のある法律事務は原則として弁護士でなければ取り扱うことが禁止されています。
それに対して行政書士は、紛争を起こさないように契約書、合意書等を予め作成します。紛争を起こしてから処理をするのではなく紛争を予防することが行政書士の大きな使命なのです。
・最近は、弁護士が会社設立や許認可等を取り扱っている場合があります。勿論合法ですが、弁護士は許認可業務に携わることなく人権擁護に徹して欲しいと願うものです。憲法の条文に名称が記載されている士業は弁護士のみですから使命を果たして欲しいと願います。勿論、行政書士は争訟性のある法律事務に関与することなく官公署に対する手続きや予防法務に徹するべきです。
何でもできることは何も専門がないことを意味します。それぞれの士族は、専門の棲み分けをして業務を担当すべきと考えます。
◆ 行政書士と税理士
・ 行政書士は、事実証明に関する書類の作成として財務書類の作成を業とすることができます。貸借対照表は、「企業の財政状態と言う事実を証する書面」で、損益計算書は、「企業の経営成績と言う事実を証明する書面」です。財務諸表を業として作成できる行政書士は、財務諸表を作成する過程の会計処理を業として行い得ると行政書士法を解することができます。
税理士は、税務書類の作成、税務申告代理、税務相談を業とします。その税理士業に付随して税理士は会計業務を取り扱います。
税理士業務とは、税務書類作成、税務申告代理、税務相談を言います。行政書士も一部税目について税務書類の作成を業として行い得ますが、でき得れば税務については専門の税理士に最終的に任せることが依頼者の為であろうと考えます。
◆ 行政書士と司法書士
司法書士は、司法機関に対する手続きを代理する専門家と言えますが、法務局いわゆる登記所は行政機関ですが、戦前まで登記事務は、裁判所の非訟事件として扱われてきました。戦後にGHQの指示で登記業務が法務局に移管されましたが登記業務は従来からの司法書士が担当することになり、法体系的には乱れた形になって今まで推移してきています。
登記は、主に不動産登記と法人登記が有ります。不動産登記は、権利の保護が目的です。法人登記、商業登記は事実の公示が目的です。司法書士法の目的は、「・・権利の保護に寄与する・・」と定められています。
日本行政書士会連合会は、行政書士が商業登記等の申請代理が業として行い得るように行政書士法の改正運動をしています。確かに、行政書士は会社設立等の手続きを行い、登記のみを司法書士とすると国民に不便を強いることになり不自然で有ると言えます。行政書士は、会社設立の重要書類である定款、議事録の作成を行政書士は主たる業務として取り扱い得るのですから、その付随業務として登記の代理を行うことが国民の便益に資することでしょう。また、商業登記等は権利の保護が直接の目的ではないので商業登記等は司法書士の目的からも外れていると言えるでしょう。
※ 行政書士、弁護士、税理士も司法書士も国民の為にどうすることが国民の便益に繋がるかを考え結論を出すべきでしょう。利権や業界エゴで制度改革を阻止することだけは法律家として恥ずかしいことではないでしょうか。
なお、行政書士法、弁護士法等の士業法は、資格者の為の法ではありません。
全ての法律は、私たち日本国民のための法律であることを付け加えておきます。
◆ 行政書士は、専門外の業務については、専門の士業者を紹介します。
※ ご意見を頂戴して一部書き換えました。短く要点のみを記載したかったのですが長くなってしまいましたことご容赦下さい。25.5.16
※ しかし、どんなに時代が変わろうと、社会が変わろうと言論の自由だけは尊重するのが法律家であると信じたいものです。そして、本物の法律家は、意見の異なる者の言論の自由を尊重する人たちだと思うのです。