2013年参議院選挙からネット選挙が解禁されるのをうけ、各政党の公認候補者(予定を含む)のネット利用状況を調査しました。
2013年4月19日にネット選挙運動の解禁を含めた公職選挙法の改正法案が参議院本会議を通過し、7月の参議院選挙よりネット選挙が解禁されることになりました。この改正により、選挙期間中も候補者はインターネットを利用して有権者に情報を発信でき、有権者と対話もできるようになります。
ネット選挙によって広報活動を中心に選挙活動が変わり有権者は自分の選挙区の候補者とダイレクトにつながり、候補者の政策、考え、主義主張などをより理解できるようになると期待されています。また、特にネット利用が活発な若年層の政治意識を変え、投票率の向上などの効果も期待されています。
一方で、これまで大事な選挙期間に利用できないということで政党、候補者のインターネット、ソーシャル・メディアに対する関心はそれほど高くなかったことも事実で、インターネットサイト、ブログは開設しているものの、Twitter、Facebook、YouTubeなどのソーシャル・メディアの活用は、未だ手探り状態で、有権者も政治家(候補者)のネットを積極的につながり、情報を入手しようという意識は高くなかった印象があります。
そこで、2013年参議院選挙各政党の公認候補者がどれくらいソーシャル・メディア(Twitter、Facebook、YouTube)を活用しており、どのくらいの人(ファン)が候補者とつながっているかを調査し、データを元に日本のネット選挙の初期段階の実態を把握することにしました。
調査サマリー
- 247名の候補者のうちソーシャルメディアを利用しているのは128名と過半数(51.8%)を超えており、ネット活用に対して意識が高いことが伺えた
- 最も利用が多かったのはFacebookで98名が利用。ただ利用方法について理解が十分でなく、個人アカウントページを政党サイトに登録し「友達」としてつながろうとしている候補者が少なくなかった
- Twitterも83名が利用。最もフォロワーが多いのは山本 一太氏で13万人を超えていた。一方で半数以上の候補者が1,000人未満のフォロワーしか獲得しておらず、テレビなどを通じた知名度がフォロワー獲得にも影響していると考えられる
- 多くの候補者がソーシャルメディアのアカウントは開設したものの、利用については手探り状態でどのようなコンテンツをどのタイミングで誰に公開していくかなどのコミュニケーション・プランニングは構築できていない状況のように感じられた
調査概要
目的:2013年参議院選挙 各党候補者のネット利用状況を把握すること
調査日:2013年4月21日
調査対象:各政党公認候補者(予定を含む)247名(*)のTwitter、Facebook、YouTube
*各党ウェブサイトで公表されている公認候補(予定を含む)。調査日時点で、政党ウェブサイトで候補者リストを明確に掲示していない場合は調査の対象となっていない
注:本調査中で、TwitterフォロワーおよびYouTubeチャンネル登録者はそれぞれファンとして記載されている箇所がある
ソーシャル・メディア利用率は51.8%、最も利用されているのはFacebook
2013年参議院選挙 各党候補者247名のうちTwitter、Facebook、YouTubeのいずれかのSNSを利用している候補者は128名(51.8%)と過半数を超えていました。
最も利用者が多かったのはFacebookで98名(利用率39.7%)、続いてTwitter(83名、33.6%)、YouTube(39名、15.8%)でした。
政党別利用率1位は公明党(100%)、2位はみんなの党(71.4%)、3位は維新の会(60.6%)
政党別に利用率を見ると公明党候補者の利用率が高く、11名の全ての候補者がいずれかのソーシャル・メディアを利用していました。また、政党ウェブサイトの候補者リストでもソーシャル・メディアを分かりやすく掲載しており、党としてネット選挙を意識していることが伝わります。
みんなの党は、党ウェブサイトは候補者リストは簡素で候補者のウェブサイトだけしか掲載していないのですが、比較的若い候補者が多いためかソーシャル・メディアの利用率は71.4%と高い水準にありました。
自民党は利用者数で言えば33名と最多だったのですが、候補者数も72名と最多だったために利用率という意味では45.8%に留まりました。ただ、自民党も政党ウェブサイトで候補者のソーシャル・メディアを分かりやすく掲載していました。
政党名 | 候補者数 | YouTube | Twitter利用率 | Facebook利用率 | YouTube利用率 | SNS利用者 | SNS利用率 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
公明党 | 11 | 10 | 11 | 5 | 90.9% | 100.0% | 45.5% | 11 | 100.0% |
みんなの党 | 21 | 12 | 11 | 6 | 57.1% | 52.4% | 28.6% | 15 | 71.4% |
日本維新の会 | 33 | 14 | 19 | 2 | 42.4% | 57.6% | 6.1% | 20 | 60.6% |
みどりの風 | 5 | 2 | 2 | 0 | 40.0% | 40.0% | 0.0% | 3 | 60.0% |
社民党 | 4 | 2 | 0 | 0 | 50.0% | 0.0% | 0.0% | 2 | 50.0% |
民主党 | 49 | 10 | 20 | 10 | 20.4% | 40.8% | 20.4% | 24 | 49.0% |
自民党 | 72 | 16 | 24 | 11 | 22.2% | 33.3% | 15.3% | 33 | 45.8% |
日本共産党 | 52 | 17 | 11 | 5 | 32.7% | 21.2% | 9.6% | 20 | 38.5% |
合計 | 247 | 83 | 98 | 39 | 33.6% | 39.7% | 15.8% | 128 | 51.8% |
ファン数1位は自民党、2位みんなの党、3位共産党
ファン数で見ると1位は自民党で41万人(平均8,128人)、2位はみんなの党で6.2万人(平均2,144人)、3位は共産党で4.4万人(平均1,362人)でした。
ファン数1位はTwiiterで平均6,472人、次いでFacebook、YouTube
利用率では1位をFacebookに譲ったTwitterですが、平均ファン数では6,472人と2位のFacebook(414人)を大きく上回りました。
この数字から改めてTwitterのつながりやすさ、拡散力が伺える一方で、Facebook利用に関する問題点も見えてきました。
Facebookのファン数が伸びていない理由は、多くの議員がFacebookページではなく個人プロフィールページを利用しており38名がフォロー機能も有効にしておらず友だちとしてつながっていることが挙げられます。
YouTubeのファン(登録者)が少ないのは、Twitter、Facebookと比べ、そもそもアカウントとつながる(登録)ことが一般的でないことが要因として考えられます。
*平均はソーシャル・メディアを利用している候補者を母数としており、候補者全体ではない
政党名 | Twitter 合計ファン数 |
Facebook 合計ファン数 |
YouTube 合計ファン数 |
Twitter 平均ファン数 |
Facebook 平均ファン数 |
YouTube 平均ファン数 |
合計ファン数 | 平均ファン数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
自民党 | 382,073 | 22,809 | 9,629 | 23,880 | 950 | 875 | 414,511 | 8,128 |
みんなの党 | 60,231 | 1,898 | 52 | 5,019 | 173 | 9 | 62,181 | 2,144 |
日本共産党 | 44,057 | 828 | 46 | 2,592 | 75 | 9 | 44,931 | 1,362 |
公明党 | 13,623 | 11,957 | 433 | 1,362 | 1,087 | 87 | 26,013 | 1,001 |
みどりの風 | 15,980 | 419 | 0 | 7,990 | 210 | 0 | 16,399 | 4,100 |
民主党 | 10,171 | 2,239 | 47 | 1,017 | 112 | 5 | 12,457 | 311 |
日本維新の会 | 10,805 | 434 | 3 | 772 | 23 | 2 | 11,242 | 321 |
社民党 | 260 | 0 | 0 | 130 | 0 | 0 | 260 | 130 |
合計 | 537,200 | 40,584 | 10,210 | 6,472 | 414 | 262 | 587,994 | 2,673 |
ツイッターフォロワー数1位は自民党の山本一太氏、2位は佐藤正久氏
ツイッターのフォロワー数1位は自民党の山本一太氏で134,889人、同じく自民党の佐藤正久氏(84,107人)、世耕弘成氏(77,473人)、丸山和也氏(32,797人)が続き、5位にみんなの党川田龍平氏(30,874人)が続きました。
順位 | 政党 | 選挙区 | 氏名 | フォロワー数 | フォロー数 | ツイート数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 自民党 | 群馬 | 山本 一太 | 134,889 | 392 | 10,932 |
2 | 自民党 | 比例 | 佐藤 正久 | 84,107 | 624 | 9,181 |
3 | 自民党 | 和歌山 | 世耕 弘成 | 77,473 | 1,131 | 6,146 |
4 | 自民党 | 比例 | 丸山 和也 | 32,797 | 160 | 1,300 |
5 | みんなの党 | 比例 | 川田龍平 | 30,874 | 2,162 | 2,886 |
ツイート(つぶやき)数の平均は1,736回で、最もツイートしていた候補は日本維新の会の富山よしのぶ氏で19,522回、続いて共産党の吉俣洋氏(14,718回)、自民党の山本一太氏(10,932回)でした。
Facebookファン数1位は自民党の佐藤正久氏、2位は公明党の佐々木さやか氏
Facebookファン数1位は自民党の佐藤正久氏(12,369人)、続いて公明党の佐々木さやか氏(4,452人)、自民党の西田昌司氏(3,984人)でした。2013年4月21日時点で最も話題にしている人が多いのは公明党の佐々木さやか氏(2,689人)、続いて公明党の矢倉かつお氏(1,605人)、自民党の鴻池祥肇氏(1,208人)でした。
順位 | 政党 | 選挙区 | 氏名 | ファン数 | 話題にしている人 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 自民党 | 比例 | 佐藤 正久 | 12,369 | 0 |
2 | 公明党 | 神奈川 | 佐々木 さやか | 4,452 | 2,689 |
3 | 自民党 | 京都 | 西田 昌司 | 3,984 | 682 |
4 | 自民党 | 比例 | 衛藤 晟一 | 2,191 | 0 |
5 | 公明党 | 埼玉 | 矢倉 かつお | 1,891 | 1,605 |
2013年参議院選挙候補者 Facebookファン数ランキング
2013年参議院選挙候補者 話題にしている人数ランキング
*Facebook個人アカウントページの場合はフォロー数、フォロー機能を利用していない個人アカウントページの場合はゼロ。
Facebook個人アカウントページの候補者が67名
調査をして気になったのが個人アカウントページを利用している候補者が67人と、Facebookページ(31人)を上回ったことです。
FacebookにはFacebookページと個人アカウントのプロフィール・ページがあるのですが、Facebookページは無制限にファンを獲得でき、インサイトと呼ばれる分析機能に加え日時指定で投稿ができる機能があり、ネット選挙で先行するアメリカでもオバマ大統領をはじめ政治家はFacebookページを利用しています。
しかし、なぜか日本では個人アカウントページを利用している候補者のほうが多いという不思議な現象となっています。
Facebook個人アカウントページでは友だちになれる人数に制限(5,000人)があります。フォロー機能があるにせよ、分析機能(*)、投稿機能に差があり、政治家(候補者)にとってはFacebookページを利用するほうが利点が多いように思われます。
これからFacebookを利用する候補者にはFacebookページの利用をお薦めします。
*Facebookページであれば、投稿がどれだけの人に実際に届いたか、どれだけ話題になっているかなどのデータ分析が可能
YouTube登録者1位は自民党の西田昌司氏、2位はみんなの党の和田政宗氏
YouTube登録者数1位は自民党の西田昌司氏が突出しており9,427名の登録者を獲得、2位は公明党の矢倉かつお氏(163人)、3位も公明党の山本かなえ氏(130人)でした。
動画再生回数1位も自民党の西田昌司氏(2,389,674回)、2位はみんなの党の川田龍平氏(124,216回)、3位は自民党の衛藤 晟一氏(32,160回)でした。
順位 | 政党 | 選挙区 | 氏名 | 登録者数 | 総動画再生回数 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 自民党 | 京都 | 西田 昌司 | 9,427 | 2,389,674 |
2 | 公明党 | 埼玉 | 矢倉 かつお | 163 | 5,943 |
3 | 公明党 | 比例 | 山本 かなえ | 130 | 27,741 |
4 | 自民党 | 比例 | 衛藤 晟一 | 73 | 32,160 |
5 | 自民党 | 山口 | 林 芳正 | 64 | 13,534 |
2013年参議院選挙候補者 YouTube登録者数ランキング
2013年参議院選挙候補者 YouTube動画再生数ランキング
調査を終えて
ソーシャルメディアの利用率51.8%という数字をみなさんはどう感じましたか?
私は、想像してたより”高いな”と思いました。と同時に、日本の候補者のネット活用に対する意識の高さにうれしくなりました。
しかし、個別のウェブサイト、ブログ、ソーシャルメディアを見ていくにつれ、その活用方法には多くの改善の余地があるように思えてきました。
世界最高峰のオバマ大統領のソーシャルキャンペーンと比べるのは、もちろん正しくはありませんが、オバマ大統領に代表される米国のネット選挙活動に比べると、多くのアカウントがアマチュアの域をでていないのが現状です。
日本のネット選挙ははじまったばかりです。
これから7月に向け候補者も増え、ネット活用もますます活発になると思います。各候補者は試行錯誤を繰り返しながらソーシャルメディアの活用を習熟していくことでしょう。
候補者が積極的に情報発信をするモチベーションを高めるには、有権者も積極的に候補者とつながることだと思います。
本サイトでは政党別、地域別で候補者のソーシャルメディアを紹介しておりますので、是非、ご自分の選挙区の候補者とつながってみてください。
今回の調査の目的は、初期の日本のネット選挙をデータ化しておいて、近い将来に「日本のネット選挙もあんなときがあったんだ」と振り返れるようにしたいとの思いもありました。少なくとも7月の選挙前にもう一度、調査を行いたいと考えております。
そのときに、どのくらいネット活用が盛り上がっているか楽しみにしておきましょう。