第11話 11式可変式機動戦闘機『キルケー』
夢幻諸島 第05エリア 航空機開発研究所
神埼青葉
「今回は予告通り、航空機を紹介します。尚、佐藤は“ある理由”で居ませんので、新しい人を呼んでいます。では、入って来て下さい」
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「失礼しますぞ、御大将殿」
入室してきた人物は、いかにもスポーツをしていた雰囲気を醸し出す黒髪のショートヘアーで、空軍用の軍服の上に白衣を纏った女性である。
神埼青葉
「皆さんに自己紹介をして下さい」
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「おう。私はこの航空機開発研究所の開発責任者、石嶺碧空軍少将だ」
神埼青葉
「彼女の喋り方は独特なのですが、これでも全種類の航空機のパイロットライセンスは持っている航空機に関するエキスパートです。では早速、紹介の方をお願いします」
石嶺
「あいよ、任せておいて下さい。では、こちらです」
石嶺の案内の元、連れてこられたのは、エリア内に存在する航空機用格納庫のさらに向こうにある比較的大きい格納庫である。
石嶺
「今回、紹介する航空機が、こちらになります」
神埼青葉
「こ、これは05式制空機動戦闘機『迅雷』では無いか? いや、少し形が違うぞ」
格納庫の中央に鎮座する機体は、まさかの『迅雷』であるが、形が違う事に気付く。
石嶺
「普通に見た感じは『迅雷』ですが、この機体こそが航空機史上初にして、新たなる革命を生み出す機体――11式可変式機動戦闘機『キルケー』なのです!!!!」
■11式可変式機動戦闘機『キルケー』――性能諸元――
形式番号
・VMF-11
全長
・19.6メートル(戦闘機形態)
・19.6メートル(人型変形時)
全幅
・18.3メートル(戦闘機形態)
・10.2メートル(人型変形時)
全高
・5.02メートル(戦闘機形態)
・19.6メートル(人型変形時)
主翼面積
・52.9㎡
機体自重量
・35200kg
最大自重量
・59750kg
装甲材質
・セラミック複合素材
動力
・FBF社製F-111-FE-001二次元ノズル付き熱核タービンエンジン『モーント』×2基
出力
・4900kw(2450kw×2)
推力
・15000kg×2(メインスラスター)
・12500kg×4(サブスラスター)
・ 7500kg×4(脚部左右2基ずつ)
・ 8500kg×4(腰部左右2基ずつ)
・20000kg×2(脚底部)
・184000kg(総推力)
巡航速度
・マッハ1.72
最高速度
・マッハ3.89
行動距離
・事実上無限。
上昇高度
・3万2500メートル
乗員
・1名(単座型)
・2名(複座型)
武装
固定兵装
・11式頭部40mm多砲身自動対空バルカン砲塔システム『トーデス・クヴァール』2門
・11式胸部40mm多砲身自動対空バルカン砲塔システム『トーデス・クヴァール』2門
選択兵装
・11式手持ち兼ガンポッド式283mm多機能バズーカ砲『ラヴィーネ』1基
・11式手持ち兼ガンポッド式203mm六砲身ガトリング機関砲『バリスタ』1基
・11式手持ち兼ガンポッド式203mmグレネードランチャー付属155mmビームライフル『ツィーレン』1基
爆装
・最大搭載量
・15000kg
・パイロン数
・18個(機体下部12基、ガンポッド用2基、左右2基、上部2基)
・空対空兵装
・05式305mm長距離空対空ミサイル×48発(四連装ミサイルポッド12基)
・05式203mm中距離空対空ミサイル×48発(四連装ミサイルポッド12基)
・05式127mm短距離空対空ミサイル×48発(四連装ミサイルポッド12基)
・空対艦兵装
・05式381mm長距離空対艦ミサイル×8発(連装ミサイルポッド4基)
・05式203mm中距離空対艦ミサイル×8発(連装ミサイルポッド4基)
・空対地兵装
・05式356mm長距離空対地ミサイル×40発(四連装ミサイルポッド10基)
・05式283mm空対地誘導爆弾×48発(四連装投下フック12個)
・07式720mm地中貫通爆弾×24発(連装投下フック12個)
・07式70mm二十四連装ロケット弾ポッド×12発
・特殊兵装
・強化増強パーツ
・上部254mm連装ビームブラスター『ドンナー・シュラーク』2基
・上部220mm十六連装マイクロミサイルポッド『ドラッヘン』2基
・左右220mm十六連装マイクロミサイルポッド『ドラッヘン』2基
※上部パーツは片方別々に装備可能。ミサイルポッドはロケットブースターと一体化している。
説明
特別架空連合艦隊の最新鋭戦闘機にして、初の機動兵器でもある。見た目は、05式制空機動戦闘機『迅雷』をベースに、様々な新機能・新要素を含んでいる。この機体の特徴は何と言っても、戦闘機形態と可変する事によって人型形態になる事が可能であり、普通の航空機では着陸できない地形でも人型形態なら着陸できるVTOL機能を備えている。
動力には、宇宙航空関係の仕事を一手に受けているFBF社製が特殊技術を用いて開発した熱核タービンエンジン『モーント』(ドイツ語で『月』)を搭載した事で、普通の戦闘機の4倍に当たる推力を得たため、1機で普通の戦闘機の数機分に当たる搭載量を確保出来たのだ。
他に注目すべき点は、宇宙空間で発見された新物質――ファントムコロイド粒子と呼ばれる可視光線や赤外線等を遮断する特殊なコロイド粒子を、物体に定着する事で物体形成出来る特徴を生かしたビーム兵器――グレネードランチャー付属ビームライフル『ツィーレン』(ドイツ語で『狙う』)であろう。その他にも、この技術を応用してビーム粒子を形成する兵器を開発中である。
他にも、人型形態にのみ発射出来る固定武装――40mm多砲身自動対空バルカン砲塔システム『トーデス・クヴァール』(ドイツ語で『死の苦しみ』)はミサイル迎撃や牽制の時に使用され、戦闘機形態の時はハードポイントに、人型形態時に両手に装備するガンポッドは、203mm口径のガトリング機関砲『バリスタ』(攻城兵器の一つ)や、対艦用の283mm口径多機能バズーカ砲『ラヴィーネ』(ドイツ語で『雪崩』)が存在しており、他にも開発中のガンポッドが存在する。
ビーム兵器やガンポッドの他、着脱式の武装強化パーツが存在しており、ロケットブースターと兼用した十六連装マイクロミサイルポッド『ドラッヘン』(ドイツ語で『竜』)、対艦用の連装ビームブラスター『ドンナー・シュラーク』(ドイツ語で『雷鳴』)を機体上部に、左右にも『ドラッヘン』が装備されると、総重量80トンを超えるが、ブースター装備を行うと総推力30万kgとなるため、飛行には問題無く、しかも装着時はボルト止め、着脱時にはコックピットからの操作による圧縮空気によって排除される。無論、排除時に生まれる隙は、排除と同時に、閃光弾を発光させて敵の目を一瞬奪う事で対処している。
従来の技術では機体の可変には困難が付き纏うが、可変する各部にマグネットコーティングが施されているため、可変に必要な時間は0.5秒から1秒とかなり速い。
ちなみに、開発元はFAD社、武装の供給源はNBA社であり、名前の通り、ドイツ系の技術者・科学者・研究者が大半を占める軍事企業であり、“アーセナリー”とは“兵器庫”“工廠”を意味し、つまり直訳すると“ニューバイエルン兵器工廠”となる。
何故、バイエルンなのかと言うと、創設者及び人員の大半がバイエルン州出身である事に由来する。
形式番号の“VMF-11”とは、Variable Mobility Fighter――“可変機動戦闘機”を意味しており、機体の名前にある“キルケー”とは、ギリシア神話に登場する、本来なら“月の女神”若しくは“愛の女神”であったとされている魔女であり、古典ギリシア語で“鷹”を意味する。
神埼青葉
「そうか…ようやく完成したのか…機動兵器」
石嶺
「はい。宇宙研究に精を出していたFBF社によるファントムコロイド粒子の発見と、特殊技術によって製造された熱核タービンエンジンによる戦果です」
神埼青葉
「他にも、製造元のFAD社、武器開発元のNBA社、エンジンのFBF社が、ほぼ共同開発体制で開発したからね」
石嶺
「……御大将殿。キルケーの飛行許可を下さい」
石嶺が真剣な眼差しで、そう聞いてくる。
神埼青葉
「えっ…まぁ、構わないが…」
石嶺
「私には分かるのです。このキルケーが私に訴えかけてくるの――“私を大空に飛翔させて”――と」
――10分後――
格納庫に隣接する滑走路に、『キルケー』の熱核タービンエンジン『モーント』が駆動する轟音が鳴り響く。
今回飛行する『キルケー』のガンポッドには『ツィーレン』が装備されているが、これは射撃テストも兼ねるため、島内にある第13エリア“射撃演習所”には、200mmの装甲板と無線操縦で動く数輌の対空戦車が配備されている。
神埼青葉
「こちら管制塔。石嶺少将、発進準備の方は大丈夫か?」
石嶺
「各部異常無し。大丈夫です」
管制塔に移動した神埼は無線でそう聞くと、『キルケー』の操縦席で発進準備を行っていた石嶺が答える。
神埼青葉
「分かった。では、発進して下さい」
石嶺
「了解。発進します」
無線機で返信した直後、滑走路の端側に移動していた『キルケー』の熱核タービンエンジンの轟音が一層大きく鳴り響かせながら、滑走路を翔け走り、そして優雅に離陸していった。
石嶺
「…フフフッ。すごい…『迅雷』とは速度も上昇力がダンチ(段違い)だよ!!」
今回、初めて搭乗したのだが、今まで搭乗してきたF-15、F-16、F-35、流星そして迅雷――そのいずれも比べ物にならない性能を直に感じているのだ。
そこから、インメルマン・ターン、スピリット・S、バレルロール等、高度な空戦機動を、エンジン噴射口に装備されている推力偏向ノズルを使用しながら次々と繰り広げていく。
神埼青葉
「さすがは、空軍将官にして、現役のエースパイロットだ」
管制塔の窓越しに繰り広げられる空戦機動を見ていた神埼は、感嘆の声を漏らす。
石嶺
「よし。それでは、見せてもらおうか。可変機構を採用した機動兵器の真の力を――」
そう言うと、コントロールスティックを手前に倒す。すると、エンジン自体が下に降り脚部として展開し、機体内部に収納されている両腕が展開し、右手に『ツィーレン』が握られる。
次に、機体そのものが胸部に当たる部分と、背部に当たる部分とに分かれ、機首が胸部に当たる部分に折り畳まれ、その上に胸部パーツが覆われる。
さらに、前後に分かれた部分を視点にして機体が折り畳まれ、人型の胴体となる。背部に隠されたメインスラスター及びサブスラスターが展開し、さらに機体に収納されていた頭部が姿を現す。
この間、僅か2秒で戦闘機形態から人型形態に変形しており、各部の調整等を計算に含めても3秒と驚異的な速さである。
石嶺
「へぇ~。こうなっているんだ」
人型形態用に移動して調整されたコックピットに驚きや感嘆の声を漏らす石嶺。キャノピーに当たる部分が頭部のセンサーを介して正面の映像を映し出しており、航空機では絶対に不可能な空中静止を行っている『キルケー』に、石嶺は心の底から湧き上がる“何か”が生まれた。
石嶺
「さてっと…取り敢えずは射撃演習所に行ってみましょうか」
そう呟くと、フットペダルを踏み込んでスラスターを吹かせる。高出力のためか、あっと言う間に射撃演習所の真上に到達して、ホバー体制で待機する。
神埼青葉
「どうやら到着したようだな。管制塔のモニターで確認している」
石嶺
「はい。私の方はいつでも射撃テストは出来ますよ」
神埼青葉
「ならば、そこにある装甲板をツィーレンで撃ち抜いてくれ」
石嶺
「了解しました――さてっと、目標照準…」
照準の十字線が装甲板の中央を捉え、グリーンからロックした証拠となるレッドに変わり、“ロックオン”と言う文字が現れる。
石嶺
「照準よし――発射!!」
発射ボタンを押すと、電子コードを通じて伝達された腕部の中指が『ツィーレン』の発射トリガーを引き、銃身からファントムコロイド粒子によって形成された朱色のビームが一直線に照準した装甲板へと放たれ、そしてビーム粒子が装甲板を溶解させて貫いた。
石嶺
「こ、これほどの威力とは……」
神埼青葉
「あぁ……」
その様子に、石嶺は勿論、モニターを通じて今のを見ていた神崎も唖然とした。ある程度予測されていたとは言え、実際に見てみると、その威力は想像を超えていたからだ。
神埼青葉
「つ、次。対空戦車を用いたテストだ」
言われた直後、遠隔操作によって自動照準・自動射撃を行う対空戦車。無論、弾丸はペイント弾であり、命中しても何の問題も無い。
この対空射撃をホバーによって回避しつつ、石嶺はバルカンの発射ボタンを押すと、頭部と胸部に2門ずつ計4門の『トーデス・クヴァール』が毎分4200発と言う高速で放たれる40mm口径バルカン弾が、次々と対空戦車の脆い車体や砲塔を撃ち抜き、機能を破壊させる。その間、僅か10秒で10輌近くいた対空戦車を破壊したのだ。
神埼青葉
「上等だな。これで、キルケーが革命を引き起こす性能を秘めている事が証明されたよ。これで、試運転と兼ねたテストは終了だ。お疲れ様」
石嶺
「は、はい。しっかし、すばらしいですよ。キルケーが量産された暁には、絶対に航空機の歴史に名前を残しますよ。搭乗した私が語っているのですからね」
神埼青葉
「あぁ、そうだ。その時になれば、今まで開発に携わってくれた人達に恩を返す事が出来るからね――きりがいいな。では次回予告。次回は車輛を紹介する」
次回に続く。
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