発信箱:えんぎりま=布施広(専門編集委員)

毎日新聞 2013年05月16日 00時17分(最終更新 05月16日 00時22分)

 連休の一日。残雪の妙高山を見上げて「えんぎりま」という言葉を思い出した。語源を知る方はご教示願いたい。「雪の切れ目」の新潟方言かと思うが、急斜面の残雪は地面との間に隙間(すきま)ができる。ここに人が落ち込むと、雪の壁とぬるぬるした地面に挟まれ、もがくほどに滑り落ちる。命も落としかねない。

 まるで今の日本のようだと言えば、言い過ぎだろうか。安倍晋三首相の靖国神社への供物奉納や歴史認識に対し、韓国や中国はもとより最近は米紙もこぞって安倍政権批判を続けている。中韓と米国の間で日本が滑り落ちていく感覚がある。

 例えばワシントン・ポスト紙は4月27日の社説で安倍首相の「戦前の帝国への郷愁」に言及した。4日後(5月1日)の紙面では、日本の立場を説明する佐々江賢一郎駐米大使の寄稿を掲載し、すぐ後に「日本で60年代に教育を受けた」という人物の意見を載せて寄稿の趣旨と対比している。

 この人は言う。日本の教育は、日本が戦争の加害者だったことより、原爆の被害者であることを教え、日本のメディアも加害者としての側面を考えたがらないと。「えーっ、ホント?」と私は叫んでしまった。それなら日本には自虐史観をめぐる論議も存在しまい。奇妙な紙面づくりだ。

 つまり米国の論調が公正とは限らないのだが、日本側のやり方も筋が悪い。歴史認識をめぐる国際世論に挑戦するなら、特に米議会を味方につけないと話になるまい。米議会は07年、慰安婦問題で日本の謝罪を求める決議を採択した。この壁を崩すには、言葉は悪いが権謀術数、深慮遠謀の対米工作が必要だ。根回しのない幼稚な問題発言のたびに、日本は滑り落ちていく。

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