損害保険事業を中心に世界130以上の国と地域で展開する米保険大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が、日本市場に攻勢をかける。昨年末までに米国政府による公的支援から脱却したことを機に従来の守りの姿勢を転換する。AIGが焦点を当てる日本の損保市場は再編が一巡し、「3メガ損保」と呼ばれる大手3グループの寡占が鮮明になっており、規模を追うよりも差別化路線を歩むことで「第4極」としての存在感を高める。
「AIGの損保事業では、世界全体の収入保険料の約4分の1を日本が占め、本拠の米国に次いで大きい。日本がとても重要なマーケットであるのは確かだ」。AIGの日本事業を統括しているAIGジャパン・ホールディングスのロバート・ノディン社長兼CEO(最高経営責任者)は言葉に力を込める。
日本での存在感を高めるための布石の一つが、来春にかけて実施する大がかりな組織再編。日本事業を統括するAIGジャパン・ホールディングスが今年4月に保険持ち株会社に移行したことを受け、その傘下にAIGグループの保険会社である富士火災海上保険やAIU損害保険などを移管。来年4月には、現在は米国本社の支社扱いとなっているアメリカンホーム保険会社を日本法人に格上げし、持ち株会社の傘下に収める方針を固めている。
持ち株会社の下にAIGグループの保険会社を集約し、一体的に運営することで「日本のマーケットに合った意思決定をよりスピード感をもって行えるようになる」(ノディン社長)というのが最大の狙いだ。グループ会社の一つ、アメリカンホーム保険の橋谷有造社長兼CEOは「1社では対応できなかった大きなビジネスに、AIGグループとして取り組むことが可能になる」と語り、グループ内での連携強化の効果に期待を示す。
AIGが積極的な戦略に転じた背景には、2008年の金融危機による経営悪化で米政府から受けた公的資金の返済を終えたことで、従来の「守り」から「攻め」に転じる環境が整ったことがある。公的資金は一時1823億ドル(約18兆5600億円)に達したが、AIGは昨年末までに227億ドルの利益を上乗せして完済。公的管理のくさびから解き放たれた。