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インドの怒れる若者:壮大な無駄

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 必要な改革のリストは、お馴染みのものだ。意思決定の合理化と汚職防止に関する施策、中央銀行にインフレ抑制の自由を与える財政規律、現在、金融システムが失っている貯蓄を取り戻すための銀行改革などだ。政府は投資を促すために、土地取得に対する取り組みを見直す必要がある(土地取得については現在、欠陥のある法案が審理中だ)。

 また、政府はエネルギー産業の障害を取り除く必要もある。インドの新しい発電所も、燃料となる石炭とガスが国内に十分ないと、あまり価値がない。

 こうした改革は、すべてのインド国民とインド経済の全分野に恩恵をもたらすだろう。しかし、特に重視すべき産業転換がある。世界銀行の元チーフエコノミストで、現在は北京大学に籍を置くジャスティン・リン氏によれば、中国で労働人口が減少し、賃金が上昇するにつれ、最大8500万人分の製造業の雇用が他国へ流れる可能性があるという。

 ここに、職にありつけないインドの若者のチャンスがあるに違いない。そうした仕事がインドに来てはならない理由などあるだろうか?

 その答えは、急速に台頭する他のアジア諸国と比べると、インドには適切な企業や労働者があまりに少なく、不適切な規則があまりにも多いということだ。確かにインドには、特に自動車生産にかけては素晴らしいメーカーが何社かある。だが、バーラト・フォージやマヒンドラ・マヒンドラのようなメーカーは、あり余っている労働者よりも高性能な機械を採用することを好む。

「ミッシングミドル」という問題

 こうしたメーカーの対極には、一握りの従業員が昔ながらの手法で作業している粗末な町工場が数えきれないほど存在する。インドに欠けているのは、多くの労働力を必要とする中規模の「ミッテルシュタント」だ。

 インドは好況期でさえ、製造業よりも建設業でずっと多くの雇用を生み出していた。煉瓦を頭に載せて運んでいる時に、インドの若者が目標を高く持つのは難しい。

 中規模の企業が存在しないこの「ミッシングミドル」を埋めるために、政府は現在インドの起業家の頭を押さえつけている官僚組織という煉瓦を取り除くべきだ。そうした煉瓦の1つは、名目上は工場が政府の許可なしで人員を解雇することを防ぐ悪評高い労働法だ。

 インドの雇用主が第三者機関に所属する労働者を雇うことによって、同法の効力を鈍らせているのは事実だ。だが、その際、企業は労働者を訓練するインセンティブも弱めてしまい、それがさらなる乱用を招いている。

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