The Economist

インドの怒れる若者:壮大な無駄

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(英エコノミスト誌 2013年5月11日号)

インドはいかにして世界最大の経済的なチャンスを無駄にしようとしているのか。

過去35年間というもの、何億人もの中国人が成長を続ける都市部で、重労働が多いとはいえ生産的な仕事を見つけてきた。この目を見張るような労働力の動員は過去半世紀で最大の経済的事象だった。世界はこれほどの規模の出来事を見たことがなかった。

人口抑制の妙案は深夜のテレビ?インド閣僚

インドは人口が多いだけではなく、若い〔AFPBB News

 では、世界が再び、このような一大現象を目にすることはあるだろうか? その答えは、ヒマラヤ山脈を越えたインドにある。

 インドは古代文明の1つだが、若い国でもある。中国では昨年、生産年齢人口が300万人減少したが、インドでは年間で約1200万人ずつ増えている。インドは向こう10年以内に世界最大の潜在労働力を抱える国になる。

 楽観的な向きは、被扶養者に対する労働者の割合が高まり、所得に対する貯蓄額が増えることにより、大きな「人口ボーナス」が得られることを期待している。この組み合わせは恐らく、東アジアの奇跡の3分の1程度を担った。著名な政治家のカマル・ナート氏は2008年刊行の著作『インドの世紀』で、「インドは文字通り、時間を味方につけている」と書いた。

悲観的になる理由

 しかし、インドの夢想家は若者を信じているが、インドの若者にしてみると、国に不信感を抱く理由が大きくなっている。インド経済は国民の願望を高めながら、その後、願望を満たせずに終わっている。2005年から2007年にかけて、インド経済は年間約9%ずつ成長した。2010年には、中国をも凌ぐ急成長を遂げた(両国経済が同じ方法で測定された場合)。

 だが、それ以降、成長率は半減した。もう一方の「人口ボーナス」であるインドの驚くべき貯蓄率も落ち込んでいる。気がかりなことに、次第に多くの家計貯蓄が金融システムを完全に迂回し、インフレの難を避けるために、金その他の現物資産に逃げ込んでいる。

 国民会議派が率いるインド政府が前回、真剣に経済を自由化させた1991年には、今のインド国民の4割以上がまだ生まれていなかった。彼らの抱える不安は、インドの老いた政治家にとっては無縁に思えるに違いない。閣僚の平均年齢は65歳だ。インドが独立してから生まれた首相は今までにいない。

 このトレンドを覆す可能性があるラフル・ガンジー氏は、父親、祖母、曽祖父がインドの首相を務めた人物だ。インドは高齢の指導者とその子孫、つまり白髪頭(grey hair)と跡取り(groomed heir)によって統治されているのだ。

 特に若い女性の扱われ方について警察が見るからに無関心なことは、新しいインドを守れない古いインドのあり方を浮き彫りにした。

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