<消火器投資>社員が演技、強引勧誘 1900人40億円
毎日新聞 5月9日(木)12時3分配信
「消火器をリサイクルして販売する」などと投資を持ちかけ、全国の高齢者ら約1900人から約40億円を違法に集めたとして、東京都中央区の投資仲介業「ライツマネジメント」(ライツ)が4月、関東財務局から金融商品取引業の取り消し処分を受けた。元社員は毎日新聞の取材に、複数の社員が異なる役割を演じ、言葉巧みに投資を引き出す手口を打ち明けた。
「根回し」「マッチポンプ」。ライツの元男性社員は勧誘の手法をそう呼ぶ。男性によると、社員が架空の証券会社を名乗って個人投資家に電話し、ライツが扱う商品を「高く買い取ります」と推薦する。別の社員が訪問して契約を結ぶと、証券会社を名乗る社員が再び「3倍で買い取るので、投資額を増やしてほしい」と増額を持ちかける。
商品は「信託受益権」と呼ばれ、事業収益から投資額に応じて配当する。投資家から実際に商品の買い取りを求められると、「交通事故に遭ったので行けなくなりました」とうそをつき、近くで救急車のサイレンのような音を鳴らしたケースもあったという。警察や財務局を名乗って「詐欺に注意してください」と言いながら、ライツの商品にお墨付きを与える手口もあり、男性は「主に高齢者がターゲットだった」と明かす。
高齢者への強引な契約でトラブルになったケースもある。「開拓中の分野で日本では珍しい商品です。投資信託とは比べものにならない利益が出ますよ」。滋賀県長浜市の男性(87)は京都市内で1人暮らししていた2011年、知人の紹介でライツの社員3人から勧誘された。「元本割れしない」などの説明を信じ、消火器のリサイクル事業に3500万円、石油採掘事業に700万円を投資する契約を交わした。
しかし、契約書に元本保証がないことに気付いた親族が弁護士に相談。契約は解除されたが返金が滞り、男性は昨年5月、京都地裁に提訴した。男性は当時から認知症の傾向があり、現在は寝たきり。親族は「弱みにつけ込まれた」と憤る。
関東財務局は、ライツに投資家への返金を指導しているが、事業の一部が架空の可能性があるという。【藤田剛】
最終更新:5月9日(木)12時3分