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数学の勉強法

数学というのは、コツコツと予習復習をし、
授業のノートを取って勉強を重ねるだけでは
本当にできるようにはならないものです。
確かに、はじめのうちはコツコツとやるだけでも
十分に点数を取れます。
しかし、いずれ伸びが止まってしまうでしょう。
おそらく、高校2年生あたりから。

なぜ、高2あたりで限界がくるか。
その答えの一つは「記憶量の限界」です。
覚えるだけの数学では、いずれ理解できなくなってしまうのです。

数学に一番近い授業は「体育」なんじゃないかと私は思っています。
スポーツというのは、技術が身につくほどんどん楽しくなるものです。
数学も、問題が解ければ解けるほど、本当に楽しくなっていくのです。
その「楽しさ」を深める必要があります。
例えば、サッカーだって、ただ練習するだけはうまくならないのです。
フォーメーションについて考えたり、意識を共有することで初めて
さらにレベルの高いサッカーができるようになるのです。

数学も同じです。
ただ問題を解いて覚えるだけでは全然楽しくありません。
しかし、「感動する数学」「楽しい数学」を知るためには
「解く数学」が必要であるのも確かです。
スポーツで基礎体力が必要なのと同様に。

だからといって、巷で人気の「パズルで数学を楽しもう」という
書籍達は、数学の楽しさとはちょっと別物です。
確かにそれ自体は楽しいですが、パズルのおかげで
数学の成績がグンッと伸びた!なんて人は
私の周囲には、残念ながら一人もいませんでした。

数学のできる人とできない人の差はなんだろうか。

例えば、2つの似たような問題があります。
この2つの問題を、
「同じ問題に見える」か「異なる2つの問題に見える」か。
この差が、数学のできる人とできない人の大きな差のひとつでしょう。

どうしても解けない問題があったとき、
答えを見たら「この公式を使えば良かったのかー」と
思ったとき、あなたはその解けなかった問題と
以前、その公式で解いた問題を「似た問題である」と、
みなすことができなかったからなのです。

この差。
この差が、覚える数の差なのです。
コツコツと解いて覚えていくのと、
同じ問題だと理解して覚える数が少なくて済むのとでは
いずれ、非常に大きな差になるのです。

では、どうしたら良いか。
どうやって、似たような問題を同じ問題と思えるようになるか。

1.問題の類似に、常に注意を向けること
2.似たような問題や、一つの問題が発展していく様子を
  ストーリーと共に覚えること
3.類似の問題を、自分で作ること

数学の本当の楽しさというのは
難しい問題を解いたときの爽快感より、
誰でも知っているような公式を、
存分に応用して解いたときに感じるものなのです。

何百という公式や定理を覚えるよりも
少しの公式をどうやって使うかを深く考えた方が
数学はできるようになるのです。
 
 
数学ができるようになるのは、いろんな能力が必要です。
記憶力、発想力、推理力、構想力など。
その中でも、最も重要だと思う2つを以下に並べます。

◎イメージ能力
 その名の通り、頭の中にイメージする能力。
 これを伸ばすためには、
 ・頭の中に思い浮かべる努力を意識的に繰り返すこと
 ・その作業を、熱中してかなりの長期にわたってすること
 がいいそうです。ゲームに熱中すると、その画面が目を
 瞑っても見えることありますよね。ぷよぷよとかw
 小さい頃、将棋やピアノをやる人は、
 この能力が高いと言われています。
 例えば、図形の問題を見て、すぐにそれを頭の中に
 描ける人、頭の中で計算ができる人はイメージ能力
 が高いと言えるでしょう。

◎位置づけ能力
 わかるとは、自分が抱いている世界の中に、
 きちんと未知事項を位置づける能力のことである。
 つまり、未知のことを覚えようとしているときに
 自分の経験の中に理解の手助けとなるものがあると
 ピンとくる、その感覚です。
 「なんだ、○○と同じことか!」ってやつです。
 例えば、先述した通り、難問を見て
 これは以前解いた問題と同じか!と思える人が
 この能力が高いと言えるでしょう。
 
 
子供に数学ができるようになって欲しいと考える
親へのアドバイス。
1.暗算を中心とする徹底的なイメージ能力の強化を
 5歳から9歳ぐらいまでにせよ。
2.数学の学習は必ず、紙に書かなくとも
 頭の中でできるようになるまで行い、
 それができるようになるまではわかったものとみなすな。
3.中学生以降にはともかく面白い問題だけは
 豊富に与えられるような環境を作り様子を見よ。
 決して目覚めを強制してはならない。
 そして、いざ目覚めの時期が来たと判断したら、
 気が狂ったように数学に熱中できるだけの環境を作れ。
4.副次的に与える発想力強化の本や推理力向上のための
 パズルは、小学校中学年程度から与えてもよい。
 
 
 
と、いろいろ書きましたが、8割くらいは
下記の本の要約になっちゃってます。
この一冊、私は心からオススメします。
あとがきにある、名言たちもなかなか深いですよ。





数学に感動する頭をつくる

栗田 哲也 (著)

出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン

価格:1,575円

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コメント

「位置づけ能力」は大切ですね。
言い換えれば、
「わかること/わからないことを区別し、
 なぜわかったか/わからないかを考える力」
すなわち理解への自己言及。メタ認知。

僕の数学の先生は、
「図と式と言葉」と「ネットワーク型の記憶」
というキーワードをよく使います。
認知心理学的な知識を授業で教えてくれるのは
とても嬉しい。そういう先生ってあまりいませんよね。

僕は、問題を解いたあとに、『チャート式』でいう
「チャート」や「指針」のようなものを
自分で書き出すようにしています。
「覚えるべきこと」の少なさがわかる。

「ストーリー」という単語にぴくんとキタ。ほえー。

なんにせよ、おもしろそうな本なのでぜひ読んでみたいです。

(どうでもいいんですけど、
 討論会の準備中、クラスの女の子がメモに「IF」とか
 「(i)(ii)より」とかいう言葉を使っているのに萌えた)

投稿: きをふし | 2005.02.11 10:35

メタ認知、いいですね。その通りだと思います。
そのメタ認知を位置づけし、それぞれ関連づけておく。
この作業が位置づけ能力だと思います。
パソコンで言うなら「デフラグ」ですね。
「ネットワーク型の記憶」というのもことばは違っても同じ意味でしょう。
出された問題を、ネットワーク上のどの位置に配置すれば
解けるかを考えるのが大学入試までの数学です。

ストーリー。
本当に問題を解くというのは、ストーリーに載せる作業でした。
問題見たら、答えまでの道筋が光ってますもん。
月下の棋士という将棋マンガで「駒が光ってる」という
表現がありましたが、本当にあんな感じ。

投稿: まなめ | 2005.02.14 22:42

自分の頭で考える能力がないからできないくせに
「記号が覚えらんなーい」とか言い訳するバカ多いよねw
英単語は数学記号よりたくさん覚えてるくせにね。

投稿:   | 2008.04.01 18:07

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