熱血!与良政談:もう一つの安倍首相論=与良正男

毎日新聞 2013年05月15日 14時33分

 議員活動用の資料として作られた米議会調査局の報告書で、安倍晋三首相は「ストロング・ナショナリスト(強硬な国家主義者)」と記されたという。海外で日本の首相がどう見られているかを知るのは大切だ。ただし天につばするのを覚悟して書けば、それをことさら大きなニュースにするのはどうも抵抗がある。

 閣僚の靖国参拝のたびに「中国、韓国の反発を招きそうだ」と定型のように付記される報道もしかり。自分たちがダイレクトに言えないことを海外に代弁してもらっているような印象を新聞の読者やテレビの視聴者に与える気がするからだ。

 以前、本欄でも書いたけれど、メディアが「安倍首相は参院選で勝つまでは持論を抑えて安全運転している」としたり顔で報じるのも安直だと思う。では、その持論とは何なのか。本当に安倍首相は「ストロング・ナショナリスト」なのか。私たちがまず検証し、ダイレクトに報じなくてはならないのはそれである。

 そこで私の見方を。91年5月、父の安倍晋太郎元外相が死去した頃から、多少なりとも安倍首相を見てきた私はそれほど「強硬な国家主義者」ではないと思っている。

 先の大戦を「侵略」と認めたくない気持ちがあって、「村山談話」はできるだけ見直したいと思っているのは確かだ。だが、一方で「侵略」を全面否定はできないと考えている程度には柔軟だという意味だ。このところ「村山談話」などに関する発言を軌道修正しているのもその表れだろう。

 先日、宮城県を訪問した首相は、水田で自ら田植え機を操縦して「私は右に寄りやすいと言われている」と軽口をたたいたそうだ。私にはこんな「ナンチャッテ」的発言の方が首相らしいと感じるほどだ。

 私の見立てが100%正しいと言い切るつもりはない。私は柔軟さを評価する一人だが、「柔軟」というのは悪く言えば「軽い」ということでもある。他人の意見に左右される「軽い国家主義者」の方がもっと危ないという見方も可能である。逆に強硬で筋金入りの保守派からすれば、安倍首相がすぐトーンダウンしてしまうことに不満が募っているかもしれない。

 ともかく単純な決めつけは本質を見失う結果となる。重層的な「安倍論」が必要である。(論説委員)

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