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地方
ガス業界 営業攻勢 電力不安、大震災が転機 福岡
■明暗 エネファームに勢い オール電化は大幅減
全原発停止で長期化する電力不安を背景に、西部ガスが家庭用燃料電池「エネファーム」の販売態勢を強化している。平成24年度の販売台数は目標を超えた。「オール電化住宅」の営業を自粛する九州電力を尻目に、後塵(こうじん)を拝してきたガス業界が巻き返しに出ている。(津田大資)
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エネファームは、都市ガスやLPガスから抽出した水素と、空気中の酸素を化学反応させて電気を起こすとともに、排熱を給湯に利用するシステム。標準的な家庭の電気・ガス代年間24万8千円を最大で5万6千円減らせるという。
西部ガスは平成21年6月に販売を始めたが、燃料電池の知名度が低いことや、1台300万円近い価格設定もあって、初年度の販売台数はわずか84台だった。
大きな転機は23年の東日本大震災だった。
福島第1原発事故の影響で、全国の原発が次々と停止した。日本全国を電力不足が襲う中、家庭で発電できるエネファームが注目を集めた。西部ガスによると、23年度の販売台数は448台だった。勢いは止まらず24年度は目標の850台に対し、926台が売れた。
さらに今春、200万円を下回る低価格のエネファーム(パナソニック製)を発売。平成26年4月の消費税率アップ前の駆け込み需要で住宅着工戸数が伸びていることもあり、西部ガスは25年度の販売目標を、1270台と強気に設定した。
4月には本社の営業担当社員20人による“エネファーム部隊”を結成。福岡、北九州、熊本、長崎にあるガス機器取扱店「西部ガスリビングメイト」の運営会社に出向し、営業攻勢をかけている。
広報担当者は「本社の営業ノウハウを現場に取り入れ、取扱店と一体で目標を達成したい」と語る。
現在、メーカーがマンション用の小型エネファームの開発を進めていることもあり、日本ガス協会は平成42(2030)年度までに全国のエネファーム累計販売台数を530万台と見込む。
一方、オール電化住宅は苦境にある。九電は23年度から、オール電化の営業活動を自粛した。原発停止に伴う節電要請や電気料金値上げを実施するからだ。
この結果、震災前の22年度に7万7千戸だった導入戸数は、23年度7万1千戸、24年度5万7千戸にまで落ち込んだ。
だが、20年の歴史をもつだけに、九州に多数ある施工業者にとってオール電化の落ち込みは死活問題となる。これらの施工業者は、太陽光パネルとセットにした売り込みを続けている。
福岡市内の建築会社の営業担当者は「震災後はオール電化なんてとんでもないという雰囲気があったが、最近は徐々に持ち直してきている」と語った。
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