vol.6 大塚さんのムーミンへのこだわり
大塚 またムーミンやるということはできるんですよ。でもライターとかね、演出家とかね、難しい。アニメーターも今のアニメーターでは無理ですね。コレ見るとわかると思うんですけど・・。
おおすみ ココだけ見ててもね、平面からはじまった絵が、くるっと向いて、立ち上がると、もう立体に見えるの、丸みが。このキャラクターの丸みが今の人には出せないでしょ。シャープだけど平面的で、切り抜きの絵のようになってしまう。
大塚 これで3枚使っているんですよ。丁寧な仕事をしているんです。芝さんも小林さんも一コマ。こういうちょっとした技術がね、たいした枚数使ってないですよ。仕上げの手間も考えてね。
おおすみ なるほど。
大塚 一コマ、一コマ丁寧に描いているでしょ。ね。
おおすみ かなり、枚数を使っているようにみえますね。
大塚 いや6000枚ぐらい。水なんかもきれいに描いてたからね。まだ、CGに頼っても、こういう雰囲気は出ないですよ。やわらかさとか。結構丁寧にやっている。
‐‐‐‐ムーミンで大塚さんが意識されたのは?
大塚 かわいく。それは動きのかわいさだったり、絵の丸みね。
おおすみ 手が後ろに回りそうな丸みと、やわらかそうな質感が良く出ていますね。
大塚 何と言うかな、デティールとか、丁寧に描いているんですよね。基礎があるから。簡単に描いてもできるんですよ。
おおすみ 今、はやりの同人誌マンガなんかね、丸いキャラクターなのに、少しでも直線を使いたがる。あれ何なんでしょね。
大塚 何なんだろうね。僕らは直線を嫌ったからね。直線を絶対使うな。
おおすみ もともと有機体のもつやわらかさをね、不自然でも直線を入れることで、イラスト的なカッコよさを狙おうってことかな。
大塚 僕なんかね、ルパンでも柔らかくしたんだけど。
おおすみ モンキー・パンチだって、コンセプトは尖がっていても、絵は柔らかい、基本的に丸いですよ。
大塚 でも、今のルパン見ていると、ここぞとばかりに直線を使っている。モンキー・パンチは直線の世界だと思い込んでいる。
大塚康生さん 略歴
1931年島根県生まれ
東映動画アニメーター第一期生。日本におけるアニメの創生期から第一線で活躍。
宮崎駿さん、高畑勲さんの先生であり、まさに日本の近代アニメーションにおける礎。アニメーターの父と云うべき人物。
元麻薬Gメンという異色の経歴を持ち、軍用車両に造詣が深く、ジープマニアとしても有名。
現在は一線を離れ、スタジオジブリや東映アニメーション研究所などで後進の指導にあたっている。
日本アニメーター・演出協会 (JAniCA) 会員。
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