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vol.3 声優のタレント性

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‐‐‐‐真綾さんは、はじめ吹き替えの仕事が多かったようですが、吹き替えのお仕事を楽しんでましたか?

坂本 吹き替えはすっごく好きですね。今でも好きです。やっぱり数として一番やってきたのは吹き替えのお仕事ですし、ホームグランドってかんじがします(笑)。他にいろんなことやってますけど、吹き替えのお仕事が一番落ち着くというか、自分のペースで考えられます。

‐‐‐‐舞台に立ちたいという思いは子どもの頃からありましたか?

Dsc00338_4坂本 舞台の仕事がどうしてもやりたいということも無くて、吹き替えという仕事もやってみるまで、知らなかったです。シュワルツネッガーは、テレビのあの声だと思ってましたから(笑)。こんな仕事があったのかという面白さと、すごく職人芸という感じがありました。現場では、沢山の人がマイクを入れ替わりで使ったり、耳で聞きながら、映像を見ながら、台本を見ながら台詞を言う。レコーディングなんでやり直しもできるんですが、基本的には、みんなその場で一発勝負って思ってやる緊張感ってのは凄く職人芸だな、職人が技を出し合う場だなと。昔は今より賢い機械じゃなかったんで、子供でもNGを出すと、他の人のセリフからやり直しとかあるのですごく緊張するし、普通に怒られましたね。そういう中で鍛えられていくのが好きだった。追い込まれるのが好き?みたいな(笑)。

‐‐‐‐みんなが出てきて、一斉に技を出し合うという点では、舞台とそんなにかわらないのかもしれませんね。

坂本 最近は色んなものをひっくるめて"声優"という職業がひとつのジャンルになってきていますよね。だけどもともとは、私はやっぱり裏方の存在だと思うんですよ。映画が主役であって、その映画で演じている俳優さんがメインであって、それを日本語に直す時に必要なんですよね。自分を主張する場でもないし、その映画に添うってのが大事だと思うんです。今、"声優"がタレントっぽい印象になってきているのですが、私の思う"声優"という仕事は、またちょっと違うんです。それが、裏方好きとして育った精神に合ってるのかも知れません(笑)。

おおすみ 声優がタレント扱いされるようになったのは、アニメーションのせいです。クリント・イーストウッドが出てくると山田康雄(注1)さんの声で当たり前だった。ところがルパン三世で、みんなが山田康雄を知るようになった。なぜそうなったかって言うと、アニメの場合はキャラクターが実在してないでしょ、でも、どうしても目の前にあるものと繋がりたいという観る側の思いがあって、それを体現してくれるのが声優さんだった。だから声優さんの人気っていうのは、アニメのキャラクターのイメージを代行しているんです。アニメでヒットする役をやった人が、表へ出てくるきっかけになる。でも随分見た目が違ってたりする場合も特に男の場合は多いんだけどね(笑)。・・・でも、山田康雄さんはルパンに似てたかな。

坂本 日本の誰もが知ってるキャラクターの声優さんとかに、ちょっとでも声をやってもらえるとうれしいですよね~。

おおすみ アフレコという仕事の捉え方なんか聞いてると、ずいぶん年配の人と話しているような気がするなぁ(笑)。さっき、声優を裏方と認識した子供の頃の記憶があるっていったでしょ?そういう認識を持っているのは、声優さんの中でもかなりのベテランだ。ま、キャリアからいうと年配者の仲間なんだね。

坂本 そうでしょねー。そうだと思います。

Dsc00371 おおすみ 今頃の人はみんなウソだと思うだろうけど、昔は声優さんにカメラ向けたら怒る人多かったんだよ。俺は顔出す役者じゃねぇって。取材やインタビューなんか応じなかった。

坂本 そうですねぇ。

おおすみ 共感してますね(笑)山田康雄さんなんかも最初の頃そうだった。アフレコをやると自分が本当にクリント・イーストウッドだと思われたい。その方が名誉だと思ってるわけです。そういう人たちが声優をやっていた。それが、いつのまにか表に引っ張り出されるようになった。この頃から声優になった今の人たちは、カメラ向けられたらニコッとできる。

坂本 (笑)

おおすみ でも、その両方の時代を知っているのは、相当のキャリアだね。

坂本 (笑)そうですねぇ。私も古い考え方の人間なんで、職業として、声優さんというものと、歌というものを一緒にしたくないんですよね。

‐‐‐‐それは、どういうことですか?

坂本 私の中での、歌のお仕事っていうのは、お仕事っていうよりも、表現の一個のツールであって、自分で歌詞を書いて、自分の名前で歌うものなんです。だから、基本的にキャラクターソングは歌わないです。

おおすみ 今は、声優も歌も写真もパッケージになっちゃったからね。特に主役級の配役ではそういうパッケージでしか仕事が成立しなくなってきてる。

坂本 そうですね。私の場合は表現方法として演じるという仕事以外の部分でも、詩を書いたり、エッセイを書いたりするんですけど、自分の中でバランスを取りながらやっています。特に役を演じていない、素の私が出る文章や歌詞の世界観からは、私の不完全な部分も含めて同世代の人たちに等身大の様子を見守ってくれればなぁと思います。そしてステキな30代を迎えたいと思います(笑)!

‐‐‐‐どんな30代になりたいとかありますか?

Dsc00331_2 坂本 やっぱり仕事は好きですね。私の周りにステキな30代の女性が多いんですよ。みんな好きなように仕事していたり、どんどん綺麗になっていったり、でも一人も結婚していない(笑)。私、結婚したいけど、仕事と両立できる人は身近にほとんどいないなぁ、みんな働きすぎ~!みたいな(笑)。私としては、働いて常に輝いていたいんですけど、ゆくゆくはやっぱり結婚して子供も欲しいなという、普通の乙女としての夢もありますし(笑)。どうなっていくのやら、わかりませんが。

‐‐‐‐舞台や、書いてる文章、もちろん歌もそうですが、やってらっしゃる幅広い仕事は、この先、ひとつに統合されていく感じですか?それとも、もっと広がっていくかんじですか?

坂本 どうなんでしょう。あまり広げようとは考えてませんね。どっちかっていうと深く深く掘っていきたい感じです。今やっているいろんな事っていうのは、ひとつやるとこっちにも生きてきて、相互作用で役に立って、筋トレみたいにあっち鍛えてこっち鍛えてというかんじですね。この仕事で得たものが、今度は何かに役に立つというのがすごく楽しくって、ひとつに絞ろうとかいうことは考えてないです。ただ、いっぱいやってるから、どれも中途半端になっちゃうのがイヤで、全部を掘るというのが私の貪欲な願いです(笑)。

おおすみ すべてを総合的に掘り下げるとすれば、やはりミュージカルしかないかな、お話を伺って飛行船のマスクプレーミュージカルが与えた影響と責任を感じますね。

坂本 そうですね(笑)

‐‐‐‐今日はわざわざ私どものサイトへお越しいただき有難うございました。

:1  山田康雄(wikipedia)

坂本真綾さん 略歴

東京都出身 1980年3月31日生まれ
血液型:A型

幼少より海外ドラマや映画の吹き替え、アニメの声優として活躍

15歳から本格的に音楽活動も開始し、各方面から高い評価を得ている

東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」エポニーヌ役は6年目に突入
女優、声優、歌手、ラジオパーソナリティ、執筆など多彩な才能を発揮し、活動を続けている

次回ゲストはアニメーターの大塚康生さん
公開は8月中旬の予定です。お楽しみに!

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